2020年の「事業承継補助金」申請期限はいつ?公募要領をチェック

事業承継をきっかけに経営革新や事業転換をする中小企業を支援する「事業承継補助金」という制度があります。補助額は最大で1200万円ですが、条件が複雑で様々な資料を準備する必要があります。申請に必要なポイントを解説します。
事業承継をきっかけに経営革新や事業転換をする中小企業を支援する「事業承継補助金」という制度があります。補助額は最大で1200万円ですが、条件が複雑で様々な資料を準備する必要があります。申請に必要なポイントを解説します。
「事業承継補助金」は、最大で1200万円の補助金を受けられる、中小企業の後継者にとってメリットある制度です。事業承継やM&Aをきっかけに、新商品の開発や生産ラインの見直しなどを行う場合の費用などが対象になります。後継者不足で廃業する中小企業が増えていますが、経営革新に取り組む後継者を支援する目的です。
2017年度(平成29年度)に創設され、近年は毎年公募があります。2019年度(令和元年度)補正予算による事業承継補助金の申請受付は2020年5月29日までですが、これまで毎年公募がありましたので、検討されている方は、今後に向けて時間をかけて準備することをおすすめします。
公募要領は毎年変更されるため、2019年度補正予算における事業承継補助金に基づいて説明します。申請の類型が2パターンあるため、状況に合わせて制度利用が可能です。
一つ目は、「後継者承継支援型」または「Ⅰ型」(以下、「Ⅰ型」)と呼ばれる類型です。もう一つは、「事業再編・事業統合支援型」または「Ⅱ型」(以下、「Ⅱ型」)と呼ばれる類型です。なお、補助金の交付は事業完了後になるため、一時的に資金支払が必要です。
Ⅰ型は経営者交代に伴って新たな取り組みを行う場合に経費の一部が補助されます。補助金には上限額があり、原則として上限額225万円以内、補助率は1/2となります。事業所や既存事業を廃止した場合は最大225万円が上乗せされます。
ベンチャー型事業承継枠または生産性向上枠に該当する場合は条件が良くなります。該当した場合、上限額300万円、補助率は2/3となります。事業所廃止などによる上乗せ額も最大300万円に上がります。
Ⅰ型の対象要件は以下のとおりです。事業承継(事業再生を伴うものを含む)を行う個人及び中小企業等であり、以下の全ての要件を満たすこと(承継者が法人の場合、事業譲渡や株式譲渡等による承継は対象外)
ざっくりとまとめると、事業承継に伴う新たなチャレンジが対象になります。
ベンチャー型事業承継枠の要件は以下のとおりです。
生産性向上枠の要件は以下のとおりです。承継者が 2017 年(平成29年)4月 1 日以降から交付申請日までの間に、補助事業において申請を行う事業と同一の内容で「先端設備等導入計画」または「経営革新計画」いずれかの認定を受けていること
Ⅱ型は、M&Aを契機に経営革新等を行う場合に必要経費の一部が補助されます。合併、会社分割、事業譲渡などが対象です。補助金は原則として上限額450万円以内、補助率は1/2となります。事業所や既存事業を廃止した場合の上乗せ額は最大450万円です。
Ⅱ型の対象要件は以下のとおりです。事業再編・事業統合等を行う中小企業等であり、以下の全ての要件を満たすこと(後継者不在により、事業再編・事業統合等を行わなければ事業継続が困難になることが見込まれているものに限る)
ベンチャー型事業承継枠または生産性向上枠に該当する場合は、Ⅰ型と同様に条件が良くなります。該当した場合、上限額600万円、補助率は2/3となります。事業所廃止などによる上乗せ額も最大600万円に上がります。
つまり、Ⅱ型でベンチャー型事業承継枠または生産性向上枠に該当する場合は、補助金額の上限が1200万円になります。
補助対象者が以下の項目などを満たした中小企業等であり、2017年4月1日から、補助対象事業期間完了日または2020年(令和2年)12月31日のいずれか早い日までに、中小企業者等の間でM&Aを含む事業の引き継ぎを行うことなどが補助を受ける主な要件です。
細かい規定もあるため、申請を検討する前に、認定支援機関に相談するとよいでしょう。
なお、「中小企業」の定義は中小企業基本法第2条に準じて定められています。業種によって、資本金や従業員数の上限が異なります。認定支援機関に相談すると、対象かどうか確認できるでしょう。
補助対象となるのは、後継者不在等により、事業継続が困難になることが見込まれている中小企業者等において、経営者の交代または事業再編・事業統合を契機とした承継者が行なう経営革新等に係る取組です。具体的には以下の要件などが挙げられます。
補助対象となる経費は幅広く、人件費や店舗賃借料も含むことができます。ただし、交付決定日以前に発注したものは対象になりません。また、売上原価に該当する費用、M&Aに関する費用(仲介手数料、デューデリジェンス費用など)は補助対象外になります。
申請は、原則として事業の承継者が行います。2019年(令和元年)度補正の事業承継補助金公募においては、公認会計士や税理士などが登録している「認定経営革新等支援機関」(以下、「認定支援機関」とします)の確認書が申請に必須の書類となっています。申請は要件が多く、規定もわかりやすいとは言えないため、補助金申請を検討する際は、相談先の認定支援機関を探すことから始めましょう。
私も登録しています。認定支援機関は、中小企業庁の検索システムから地域別で探すことができます。
過去の補助金の採択事例は事業承継補助金のポータルサイトで公表されています。現在の状況に近いものを検索し、目を通しておいたほうがよいでしょう。
事業承継補助金は条件に合う後継者にとっては強い味方となります。創設以来、毎年公募があるため、時間をかけて計画を立てることをお勧めします。条件がやや複雑で準備資料も多いため、認定支援機関と二人三脚で準備を進めるとよいでしょう。
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