博多の名物角打ち店に幕 1千円で楽しめた「止まり木」

JR博多駅前で55年にわたって店頭でお酒を飲める「角打ち」の老舗として知られた「三喜屋酒店」(福岡市博多区博多駅東1丁目)が、3月末で閉店した。仕事を終えたサラリーマンたちの「止まり木」だっただけに、多くの常連客から惜しまれている。
店主の吉村勝利さん(83)が28歳だった1965年、実家から独立して店を構えた。当時の博多駅周辺にはまだ田畑があって空き地も多く、2階建ての店は目立ったという。博多駅の筑紫口まで一直線に歩いて行けた。
当初の客は近隣住民が多かったが、68年に官公庁の合同庁舎が近くにできるなど開発が進み、サラリーマンが多くなった。焼酎などのボトルは原価でキープし、チャージ料はなし。お湯代が100円、おつまみ代が100~200円で、千円あれば十分に楽しめた。妻の悦子さんと数人の従業員で切り盛りし、立ち飲みカウンターは常連客でにぎわった。
■コロナで客が激減、病気に倒れて
昨年4月、新型コロナウイルスの影響で1カ月休業。再開後も営業時間短縮を余儀なくされ、客が減った。昨年11月に勝利さんが開店準備中に病気で倒れて約2カ月入院した。後継者もおらず、そのまま閉店を決めた。
常連客からは「まだ続けて」と惜しむ声が寄せられ、贈られた花飾りがカウンターに置かれていた。勝利さんは「皆さんにはお世話になりました。閉店前に飲んでいただけなくて、残念でした」と話している。(堀英治)=朝日新聞デジタル掲載2021.04.03
55年にわたる営業を終え、店内を整理する吉村勝利さん(右)と悦子さん。カウンターには常連客から贈られた花飾りが置かれていた=2021年3月31日、福岡市博多区博多駅東1丁目、堀英治撮影
55年にわたる営業を終え、店内を整理する三喜屋酒店の吉村勝利さん(右)と悦子さん=2021年3月31日、福岡市博多区博多駅東1丁目、堀英治撮影
3月末で閉店した三喜屋酒店=2021年3月31日、福岡市博多区博多駅東1丁目、堀英治撮影
3月で閉店した三喜屋酒店=2021年3月31日、福岡市博多区博多駅東1丁目、堀英治撮影
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