お歌の時間も読み聞かせの時間も楽になるマスクを、兵庫県西宮市の下着メーカーが開発した。立体裁断のノウハウを生かし、口元に空間をつくることができたという。コロナ下でも社員の子どもを預かり保育してくれる保育士を支えられないか――。そんな思いから、生まれた。

 開発したのは社員15人の「アンドール」。下着メーカーやブランドからの依頼を受けブラジャーなどの製造をするほか、オリジナルブランドの下着を製造販売している。

■緊急事態宣言で保育園休園 支えを実感

 きっかけは昨春の緊急事態宣言。小さい子どもがいる社員から、保育園が休園になり、自宅に子どもがいると在宅勤務がままならないという相談が岸村裕子社長にあった。社員が、保育士に支えられていることに改めて気づいた。「保育士の方々へのお礼の意味も込めてマスクを作ろう」

 社員の子どもが通う保育園の保育士からは、子どもの世話や歌を歌ったりする際、マスクがずれてなおすのが大変だと聞いていた。そこで、ブラジャーづくりのノウハウを活用。社員や家族の耳の付け根から鼻までの長さ、耳の高さなどを計測し、試作を何十回と繰り返した。

 顔にぴったり沿うようにカーブをつけて裁断し、タックを寄せ、鼻にあたる部分だけでなく口元にもワイヤを入れることで口周りに空間を持たせた。マスクの内側の部分が唇にまとわりつくこともなく、メガネも曇りにくい。耳にかけるひもは下着に使う伸縮性の高いテープ。本体には天然の防臭成分を練り込んだ、スポーツウェアに使われるさらっとした生地を使った。

 昨年、西宮市と大阪府吹田市の保育所25園に計約300枚を寄付した。ある園の保育士は「本の読み聞かせにいいと思って使ったら、ずれなくてお歌も歌いやすかった」。小学校から大学まで教育現場からの注文が舞い込み、校歌を歌う卒業式用に大量のオーダーもあったという。

 商品名は「Meccha―Shabe(めちゃ―しゃべ)」。岸村社長は「口を動かして円滑にコミュニケーションをとることでストレスも軽減する。マスクをしていただいてせめて家族とでも楽しくしゃべってもらえたら」と話す。

 主に女性用のSサイズ(税込み1140円)、男性用のMサイズ(同1190円)。アンドールのホームページで販売している。問い合わせは同社(0798・23・6082)。(石田貴子)=朝日新聞デジタル掲載2021.04.03