タクシー会社が廃業し、住民の交通手段が限られていた千葉県いすみ市の旧夷隅町地区で、今月から白ナンバーの自家用車を使った有料運送サービス(自家用有償旅客運送)が始まった。運営するのは観光地域づくり法人(DMO)の「ツーリズムいすみ」(出口幸弘代表理事)。当面は土日祝日の午前9時から午後5時まで、観光客と地元住民が対象だ。

 事業はツーリズムいすみのワゴン車を利用。事務所のあるいすみ鉄道国吉駅を中心に、夷隅地域内からの依頼に応じてサービスする。料金は初乗り1・27キロ320円、以後272メートルごとに60円の加算となり、タクシーより値段が安いという。

 国吉駅前で営業していたタクシー会社は、2019年8月末に廃業。いすみ市が運営するデマンド交通(乗り合いタクシー)も、土日祝日は休みで、夷隅商店会会長の吉田優さんによると「高齢者の多い地元の人たちが困っていた」。また、国吉駅が最寄りの駅である観光拠点も多いが、駅からの主な交通手段が貸自転車しかないため、観光客を悩ませていた。

 道路運送法が改正され、自家用車を使った有料運送サービスに、バス・タクシー事業者の協力を得て運営する制度がスタートした。ツーリズムいすみでは、この制度の活用を目指して準備。いすみ市内の浪花タクシーが、運行管理や車両の整備に協力することになった。

 課題は少なくない。現状では、ドライバーはツーリズムいすみの職員ら4人しかいない。車も1台だけ。ドライバーは、今後広く募集していくという。

 出口代表理事は「DMOが運営するので、タクシー会社のようにもうける必要がないことが大きい。観光客を増やすことにもつながる事業なので、収支トントンの経営で長く続けていきたい。将来的には車両も増やしたい」と話していた。=朝日新聞デジタル掲載2021.04.04