岸田文雄首相は8日、看護師、介護福祉士、保育士らの賃上げ措置を19日にもとりまとめる経済対策に盛り込み、年度内にも引き上げる考えを明らかにした。政府の「新しい資本主義実現会議」(議長=首相)からの緊急提言を受けた。年間2兆円を超える「政府調達」で、従業員の賃金を引き上げた企業から優先的に物品やサービスを買う案も新たに提言に加わった。

 同会議は首相の肝いりでつくられ、8日の会合では「成長と分配の好循環」に向けた最優先項目を提言した。首相は施策の具体化など肉付けを進め、来春に「グランドデザイン」などをまとめる考えを示した。

 看護師らの賃上げは、提言の原案では「来年度予算案で結論」だったが、この日の成案では「経済対策等において必要な措置を行い、前倒しで引き上げを実施する」とした。首相は「今回の経済対策において実行に移すことで、新しい資本主義を起動していきたい」と話した。

 政府調達の見直しは成案になって追記された。内閣官房によると、中央省庁や独立行政法人など140機関が2019年に行った1件1500万円以上の政府調達額(公共事業を除く)は2兆6213億円。賃上げ企業からの優先調達は幅広い業界に影響を与える可能性がある。山際大志郎経済再生相は8日、公共事業も対象になりうるとの見解を示し、「きちんと政策にまで落とし込んで実現したい」と話した。

 職業訓練や処遇改善への支援など、人への投資を柱とする3年間の「施策パッケージ」も成案になって追加された。デジタル関連の知識を持った人材などを育て、成熟した産業から成長産業に人を動かし、所得向上につなげるのが狙い。今回の経済対策を皮切りに始める。

 同会議は、成長戦略として10兆円規模の大学ファンドを年度内に運用し始めることや、サプライチェーン(供給網)の強化などを提言。分配戦略では、賃上げに積極的な企業の税負担の引き下げなどを柱に盛り込んでいる。(古賀大己)=朝日新聞デジタル掲載2021.11.08