仕事帰りにちょいと一杯も、なかなかはばかられるコロナ禍の昨今。それなら、「せんべろ」の楽しさを自宅で再現しよう――。そんな家電を考案し、ヒットさせた会社が大阪にあります。ひと味違った発想とフットワークは、家電メーカーとしては意外な前歴にあるようです。

 「せんべろ」とは、千円で手軽に酔える酒場のこと。作家の故・中島らもさんによって広まった言葉といわれる。

 コロナ禍で外出を控えざるを得ない中、その楽しさを家飲みで再現してくれるのが、「せんべろメーカー」(税別参考価格7500円)だ。家電メーカー「ライソン」(本社・大阪府東大阪市)が2020年12月に商品化した。

 本体のヒーター上に、酒のさかなに合わせて焼き網や鍋をセット。卓上の1台で焼き鳥、おでん、つまみのあぶりから、日本酒の熱かんまで楽しむことができる。アイデア次第でチーズフォンデュもできる。

 発案したのは社長の山俊介さん(40)。コロナ禍当初の緊急事態宣言中は里帰り出産の妻と離れて独り暮らしだった。仕事帰りに買った総菜を温めて夕食にする日々に、「1台で焼き鳥もおでんも温めたいとひらめきました」。

 半年ほどで商品化すると、口コミやネットで注目された。デザイナーの稲田早希さん(26)の「長いの、どうです?」との提案も採用。複数のさかなを同時に温められるロングタイプ「にせんべろメーカー」も追加し、計2万台のヒットとなった。

 製造は中国の工場に委託し、大手家電メーカーのような積み上げた技術があるわけではない。目指すのは今までにない体験を生む商品づくり。使う人が笑顔になる姿をイメージし、顧客層と機能を絞り込んで一点突破を図る。

 だから、「お客さんとのファーストコンタクトを大切にしている」とアートディレクターの柏原清享(きよゆき)さん(37)。ひと目で楽しさが伝わるパッケージ、絶妙のネーミングを心がける。

 その原点は、ゲームセンターにある。同社の前身は、クレーンゲームの景品の販売会社。山さんは「遠くから眺めても、欲しいと思わせるのがアミューズメント。見せ方やわかりやすさは今に生きています」。

 従業員26人はワンフロアに席を並べる。アイデアがあれば、日常的に意見を交わす。「カップ焼きそばって、焼いてないよね」との話題からは、熱心なペヤングファンをターゲットに専用のホットプレートが生まれた。操作ボタンが三つだけのシンプルなコーヒー焙煎(ばいせん)機は、ポップコーンマシンをベースにした。

 大手家電メーカー出身で中国の製造工場との窓口になる国際部の芳谷謙二さん(59)は「互いに顔が見える。大手にないフットワークの軽さが強みです」と話す。

■ライソン メモ

 クレーンゲームの景品を販売する「ピーナッツ・クラブ」社の仕入れや営業の部門が前身。2018年に分社した。従業員26人の平均年齢は30代前半と若い。22年度から新卒も採用予定。=朝日新聞デジタル掲載2022.01.17