長野県茅野市の治具工具メーカー「八剣技研」と信州大学農学部がタッグを組み、そばの風味をわずか数秒で客観的な数値で示す装置を開発した。全国でも有数のそば生産量を誇る長野県ならではのユニークな装置は、飲食店はもちろん、製粉業者や農協などでの活用が期待されている。

 めんにしたそばは、ゆで方の違いで味などが異なってくるため、風味の測定が難しい。そこで八剣技研と信大農学部の専門家は、そば粉の段階で風味を客観的な数値に落とし込むことをめざした。

 2グラム前後のそば粉に「紫外LED励起蛍光」と呼ばれる特定の光を当てる方法で、風味の指標になるリン脂質やたんぱく質などの量を、数秒で解析することに成功。香りやそばの特徴である緑色の度合いなどの4項目を、それぞれ1~100の数値で評価できる「世界で初めて」という装置に仕上がった。

 同社の清水尚哉社長は「おいしいかおいしくないかという感じ方は、消費者によって異なってくる」と断った上で、「製粉業者の『勘』に頼ってきた風味を数値化することで、そばそのものの品質を客観視したかった」と開発に込めた思いを話す。

 同社は従業員24人の町工場で、金属製品など精密で品質の高いもの作りに必要となる治具や、作業効率を向上させる省力化器具を受注生産している。7年前から信州大と協力し、オリジナル商品の開発をめざしてきた。

 当初はそばの実の、粒の出来具合を選別する装置をめざしたが、製品化するにはハードルが高くて断念。今回のような風味を測定する方式に変更し、今年6月には特許を取得した。今後は食味の官能試験を繰り返してデータを集め、解析した数値とおいしく感じられる味のバランスを明確化したいと考えている。

 装置開発を始めたきっかけには、米の転作作物として休耕田で栽培されることが多いそばの価格が、それほど高くないことがあげられるという。清水社長は「客観的な数値を出すことで、産地などによって異なるそばの価格の是正につながれば、安値で取引されてきた生産農家にとっても励みになり、そばの価値が向上するだろう」と期待している。(安田琢典)=朝日新聞デジタル掲載2022.11.09