介護職員を確保するために、一つの特別養護老人ホーム(特養)が人材派遣や職業紹介の会社に払う総額は、最大で年間約1億円にのぼることもある――。東京都高齢者福祉施設協議会が行った調査で、こんな結果がわかった。介護現場で慢性的な人手不足が続くなか、協議会は「派遣や紹介による雇用が恒常的になり、高額な経費が経営を圧迫している」としている。

 調査は都内の会員510施設を対象に2022年6~9月に実施した。

 介護職の派遣や職業紹介の費用については166施設が答えた。一つの特養が1年間(2021年4月~2022年3月)に支払った総額は、最大で約1億400万円、次に多かった特養では約9390万円だった。166施設それぞれの金額のうち真ん中にあたる中央値は約900万円だった。最も少なかったところは2万円以下だった。

 調査方法が一部変わっているが、前年度の調査と比べると、市部にある特養の中央値は約730万円が約860万円に上昇した。区部の中央値は1千万円前後で高止まりしている。

 また、2021年度中に新卒を採用したのは、有効回答302のうち134施設で約44%。半数以上の施設が新卒を採用できていなかった。

 同協議会会長の田中雅英さん(70)は、「施設には、職員を直接募るための人手もノウハウも乏しく、派遣や紹介会社に頼らざるを得ない」と言う。「施設が介護職員を直接募集する力をつけるには、介護報酬を上げる必要がある。税金と保険料からなる介護給付費が派遣や紹介会社に流れる構造を変えることが不可欠だ」と話す。

 厚生労働省によると、介護職員の有効求人倍率は、ホームヘルパーで14・92倍、施設の介護職員で3・90倍で、高い水準が続いている(2020年度)。

 人手不足の中で、公益財団法人・介護労働安定センターの調査(2021年度)によると、介護事業所の11・5%が派遣労働者を「受け入れている」と回答。政令指定市や東京23区では、受け入れている比率がほかの市町村などよりも高かった。法人格別にみると、社会福祉協議会をのぞいた社会福祉法人で21・3%にのぼった。

 また、介護保険サービスに従事する無期雇用職員の採用にあたって利用した手段や媒体を複数回答で尋ねると、26・3%が「民間の職業紹介」を利用しており、「ハローワーク」(55・2%)、「知人等からの紹介」(45・2%)に次いで多かった。(森本美紀)=朝日新聞デジタル掲載2023.01.15