目次

  1. 職人だった祖父、ネジ中心の金属加工で創業
  2. 継ぐ気はなかったがホームページ作成などでサポート
  3. 開発部門を立ち上げ技術力を活かせる“場”を開拓
  4. デジタル化による品質管理と情報発信を重視
  5. 会社の状況や目指すべき姿を共有
  6. リーマンショックで既存顧客からの受注が75%減
  7. 売上は4倍、取引先は1桁から3桁に 従業員は倍増

 由紀精密は大坪さんの祖父、金属加工職人であった大坪三郎さんが、1961年に独立するかたちで創業します。当時は大坪螺子製作所という社名で、社名のとおりネジを中心とした金属部品の加工を、祖母と数人のパートさんで細々と作る、いわゆる下請けの町工場でした。

創業当時の工場内の様子(由紀精密提供)

 ところが、大坪さんが3歳のときに祖父が他界。26歳で現会長である父親の大坪由男さんが家業を継ぎます。祖父と同じように両親共働きで、事業を粛々と続けていきました。

 「自宅と工場が近かったこと、機械が好きだったこともあり、幼稚園の頃から工場には出入りしていました。工作機械は危ないので触らせてもらえませんでしたが、加工が済んだ製品のバリ取りなどを、手伝っていましたね」

 中学生になると学校やバンド活動に夢中になり、工場に足を運ぶ機会は減っていきます。

 「進路や将来について両親からあれこれ言われたことは一度もありません。逆に、自分にとってはそのようなコミュニケーションが心地よく、自由に、好きなことに没頭していました。ただ祖母からは、いい大学に入って大企業に就職しなさい、と言われていましたが(笑)」

 実際、大坪さんは東京大学で機械工学を専攻、大学院にも進み3次元積層造形技術の研究に没頭します。

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