目次

  1. ゲオHDの歴史
  2. リユース事業への転換の背景と目的
  3. 事業の主軸、レンタルからリユースへ
  4. 海外リユース市場を狙う事業戦略

 ゲオホールディングスの歴史は、1986年に創業者である遠藤結城氏が愛知県豊田市にビデオレンタル店を開業したことに始まります。

 当時、ビデオレンタル1本1日1000円が業界の常識であったなか、ゲオは低価格を強みに、全国展開を進めてきました。しかし、時代の移り変わりとともに、ビジネスの中核をリユースへと大きく舵を切ることになります。

ゲオの店舗とロゴ(ゲオHDのプレスリリースから)

 ゲオホールディングスは、2026年10月1日に社名を「セカンドリテイリング」(英字表記:2nd RETAILING Co., Ltd.)に変更することを発表しました。なお、社名変更は、2026年6月26日に開催予定の株主総会における、定款の一部変更の承認を条件としています。

 この社名変更は、ゲオホールディングスが推進する事業の方向性と合致させることを目的としているといいます。

 ゲオホールディングスの事業構造は、この数年で大きく変化しています。かつての主力だったレンタル事業は、「Netflix」や「Amazon Prime Video」など、インターネット上の有料動画配信サービスが人気を集める国内の音楽・映像レンタル市場の縮小傾向に直面しています。

 こうしたなか、注力してきたのがリユース事業です。2002年から携帯電話販売店事業をスタートし、その後、リユース端末の買取や販売にも力を入れてきました。

 2008年にはフォー・ユーを連結子会社化し、2010年セカンドストリートへ社名変更し、傘下で総合リユースショップ「2nd STREET」を運営しています。高級時計・ブランドバック等のリユース卸売業、オークション市場運営等を手がける「おお蔵」も2019年に100%子会社化しています。

 そのことを示すように、ゲオHDの2025年3月期の連結決算によると、売上高4276億6900万円のうち、リユース事業が2739億1500万円と64%を占める一方、祖業のレンタル事業は286億4700万円と6.7%にまで縮小しています。

 レンタル事業の売上高が前期比で12.6%の減収となるなか、レンタル部門のスペース効率化施策に積極的に取り組んでおり、削減されたスペースはリユーススマホなど強化商品の販売に変わっています。これは、限られた店舗空間を、成長分野であるリユースに最適化する戦略の一環です。

 一方で、リユース事業はゲオHDの成長を牽引する中核となっています。リユース事業全体では、前期比で12.2%の大幅な増収を達成しています。

セカンドストリートの店舗とロゴ(ゲオHDのプレスリリースから)

 リユース事業の中でも、特に顕著な成長を見せているのが「2nd STREET」の衣料・服飾雑貨と、「GEO mobile」を中心とするスマホ・タブレット商材です。2nd STREETの衣料・服飾雑貨売上は1021億円(前期比16.6%増)、スマホ・タブレット売上は454億円(前期比27.4%増)と、いずれも高い成長率を記録しています。

 ゲオホールディングスは、リユースを最重要事業と位置付け、その占める割合をさらに増加させていく計画です。具体的な目標として、2035年度にグループ連結売上高1兆円、グループ全体で5000店舗を目指しています。

 その中で、海外でのセカンドストリートの展開は特に重視しており、2035年度までに1000店舗を出店することを目標に掲げています。リユース市場がまだ定着していない国へ積極的に出店しようという意図が読み取れます。

 2025年3月末時点で、国内に880店舗、海外に113店舗のセカンドストリートを展開しており、アメリカ、台湾、マレーシア、タイなど既存の出店エリアに加え、2026年3月期にはシンガポールと香港への新規出店も計画しています。また、GEO mobileについても、2026年3月までに800店舗の出店を目指しています。

 新規出店先として、シンガポールと香港を選んだ理由について「香港では近年、環境意識の高まりとともにリユース品の需要が増加していますが、新品志向が根強く、市場全体としてはまだ拡大の余地があります。

 一方、シンガポールでは政府がサステナビリティ政策を推進しているものの、ファッション分野におけるリユースは一般的ではなく、今後の成長が期待される市場です」と説明しています。

 こうした状況から、ゲオHDは、リユースの世界市場を2025年の2140億ドルから2035年には1兆ドルを超える規模に拡大すると見込んでいます。国内市場も2023年には3兆1227億円に達し、物価上昇による消費者の生活防衛意識や、訪日観光客によるインバウンド需要、そしてリユース品に抵抗のない「リユースネイティブ」世代の拡大により、長期的な成長を見込んでいます。