トランプ関税一覧 日本に影響する自動車・鉄鋼・アルミ・相互関税も

アメリカのトランプ大統領は、2025年3月から進めている追加関税措置、いわゆる「トランプ関税」の一覧をまとめました。日本にも影響するのが、自動車、鉄鋼・アルミのほか、90日間停止中とはいえ相互関税の24%も重くのしかかってくる可能性があります。銅、木材、半導体、医薬品なども調査対象になっており、今後の動向に注視が必要です。
アメリカのトランプ大統領は、2025年3月から進めている追加関税措置、いわゆる「トランプ関税」の一覧をまとめました。日本にも影響するのが、自動車、鉄鋼・アルミのほか、90日間停止中とはいえ相互関税の24%も重くのしかかってくる可能性があります。銅、木材、半導体、医薬品なども調査対象になっており、今後の動向に注視が必要です。
目次
ホワイトハウスの公式サイトによると、トランプ大統領は2月1日、大統領覚書「米国第一の貿易政策」のなかで、貿易政策を国家安全保障の重要な要素として扱い、主要な安全保障ニーズを満たすために他国への依存を減らすと表明し、連邦政府の各部署に貿易赤字の影響とリスク調査を指示しました。
第二次トランプ政権が追加の関税措置の根拠としているのは主に2つの法律です。
• 国際緊急経済権限法(IEEPA)
• 1962年通商拡大法232条
これに対して、世界各国が様々な疑義や反対意見を表明しています。それでもトランプ大統領は、品目別や国別に様々な関税措置を次々と打ち出しています。世界各国にどのような影響を及ぼそうとしているのか、順番に整理します。
もっとも影響が大きいのが中国への追加関税措置です。トランプ政権は、中国の不公正な貿易慣行を理由に、国際緊急経済権限法にもとづいて追加関税を発動しました。
• 2025年2月4日:既存の関税率に10%を上乗せ
• 2025年3月3日:上乗せ関税率を20%に引き上げ
• 「相互関税」も中国に対して発動し、互いに対抗措置を取るなかで4月10日には125%に引き上げられました。
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中国原産品には20%のIEEPAに基づく追加関税と125%の相互関税が課せられ、関税率は合計145%に達しています。
これに加え、ホワイトハウスの公式サイトに掲載されたファクトシートによると、トランプ大統領は現地時間で5月2日から、中国からの輸入に対して非課税基準額(デミニミス)ルールの適用を停止し、関税支払いが免除されていた800ドル以下の少額貨物に対して、関税を課すと発表しました。
国際郵便ネットワークを通じて中国または香港から送られてくるすべての郵便物が対象で、関税率は、輸入申告価格の30%の従価税、または郵便物1件につき25ドルの重量税が適用されるといいます。
この措置は、ファッション通販のSHEIN(シーイン)や「Temu」などに影響が出ています。
トランプ大統領は、これまでにも自身のSNSで、中国で製造された薬物がカナダ・メキシコから流入し続けていると主張。不法移民やフェンタニルの流入対策を理由にIEEPAにもとづく追加関税を課すと公表しました。
• 2025年3月4日:全品目に対して10%から25%の追加関税(カナダ産エネルギー・資源品目は10%)
• ただし、米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)の原産地規則(ROO)を満たす産品は、このIEEPAに基づく追加関税の適用除外対象
• しかし、自動車は4月3日以降、自動車部品は5月3日以降、USMCAの原産地規則を満たす場合でも、232条の追加関税の対象となる。その場合、非米国産部品の価格に対してのみ25%の追加関税が課される
相互関税自体は、カナダおよびメキシコ原産品には適用されません。ただし、ホワイトハウスのファクトシートは、カナダとメキシコについては、既存のフェンタニル・移民に関する大統領令が引き続き有効で、(すべての輸入品に10%の関税を課す)大統領令の影響は受けないとしつつも「既存のフェンタニル・移民に関する大統領令が打ち切られた場合、USMCAに準拠した製品は引き続き優遇措置を受け、準拠していない製品は12%の相互関税の対象になる」と説明しています。
相互関税とは、アメリカの貿易相手となる国が高い関税を課している場合、アメリカの関税も相手国と同じ水準まで引き上げる対応のことを指します。相互関税の対象は、日本を含む57カ国・地域が対象です。
ホワイトハウスの公式サイトに掲載された大統領令によると、日本は24%。米や自動車などに非関税障壁があると主張していますが、経済安全保障などを専門とする和田大樹さんは記事「トランプ関税と日米経済・貿易関係の行方 トランプ大統領の対日認識から」のなかで、「これは事実の一面を誇張したもので、コメへの高関税は例外的な措置であり、工業製品では日本がほぼゼロ関税である点は無視されています」と解説しています。
米国東部時間4月5日0時1分から、すべての国・地域から輸入される品目に一律10%の追加関税を課しています。一方、9日0時1分から、57カ国・地域に対しては、この10%を国・地域別に設定した相互関税の税率まで引き上げる予定でしたが、10日以降、中国以外は90日間引き上げを停止しています。
対象外となるのは、以下の品目です。
この関税措置は、大統領が貿易赤字およびその根底にある非相互的待遇がもたらす脅威が解決、または緩和されたと判断するまで有効とされます。
相互関税の解消に向けて、トランプ政権との対話を始めている国もあります。日本の場合、赤沢亮正経済再生担当大臣は日本時間の2025年4月17日、アメリカの首都ワシントンでトランプ大統領と会談し、今後も協議を続けていくことを明らかにしました。
トランプ関税のうち、国内産業に直接影響する部分としては、以下の3つが挙げられます。
輸入申告額が800ドル以下の少額貨物の輸入に対して、関税支払いなどが免除される規定「デミニミスルール」は、日本については引き続き利用できます。
たとえば、日本製のおもちゃ、緑茶、衣料品は相互関税の適用対象になります。一方、 日本産の鉄鋼、アルミ製品、自動車・自動車部品は別の措置で追加関税25%の対象となっているため、相互関税の対象外の品目に指定されています。
日本酒はこれまで1リットル当たり3セントの従量税が適用されていました。これに加えて、4月5日以降は10%、4月9日以降は24%の従価税が適用される予定でしたが、 90日間の停止により10%のみ適用されています。
牛肉は冷蔵・冷凍、部位などによって異なりますが、低関税枠内の場合、4月9日以降は4.4セント/kg の従量税+24%の従価税が適用されています。枠外の場合、従来のMFN税率に加えて、4月5日以降は10%、4月9日以降は24%の従価税が適用される予定でしたが、90日間の停止により10%のみ適用されています。
1962年通商拡大法232条に基づき、国家安全保障を理由として、鉄鋼・アルミニウム製品に対して追加関税が課されています。
2025年2月10日、トランプ大統領は追加関税措置を拡大する大統領布告を発表し、2025年3月12日よりアルミニウム製品の追加関税率が10%から25%に引き上げられ、適用除外が撤廃され、対象品目が追加されました。
米国で溶解・鋳造・精錬された鉄鋼・アルミ材の価格には追加関税は課されません。
鉄鋼・アルミの派生品も追加関税の対象となり、鉄鋼派生品は25%、アルミ派生品は10%(後に25%に引き上げ)の追加関税が課されます。これらの派生品には、含有する鉄鋼・アルミ材の価格に対してのみ追加関税がかかるものもあります。
国・地域別の適用除外制度は2025年3月12日以降全廃されましたが、既に承認を受けていた分は数量上限に到達するまで有効期限まで有効です。
232条に基づき、自動車および自動車部品に対しても追加関税が課されています。
• 自動車に対しては、2025年4月3日以降に通関する乗用車(セダン、多目的スポーツ車SUV、クロスオーバーSUV、ミニバン、カーゴバン)、小型トラックに25%の追加関税が課されています。
• 自動車部品に対しては、2025年5月3日以降に通関するエンジン・エンジン部品、トランスミッション・パワートレイン部品、電子部品などに25%の追加関税が課されます。自動車と同様に、USMCAの自動車原産地規則(ROO)を満たす場合は、非米国産部品の価格に対してのみ追加関税が課されます。非米国産部品に対する追加関税は、商務長官が官報で公示するまで適用対象外とされます。
トランプ政権は、さらなる関税措置の導入に向けて、以下の品目について232条に基づく調査を行っています。
• 銅(3月~):銅鉱石、精製銅、銅合金、スクラップ、派生品などあらゆる形態の銅が対象。
• 木材(3月~):木材、製材、それらの派生品が対象。
• 半導体(4月~):サブストレート、ウエハー、レガシー・先端半導体、製造装置など広範な品目が対象。商務長官は1~2カ月以内の関税発動の可能性を示唆しています。
• 医薬品(4月~):ジェネリック・非ジェネリック医薬品、医療対策製品、有効医薬成分などが対象。
• 重要鉱物(4月15日~):レアアース、重要鉱物の加工品・派生品(半導体ウエハー、永久磁石、電気自動車など)が対象。
232条にもとづく調査は、商務長官が調査開始から270日以内に大統領に報告書を提出し、国家安全保障上の脅威が認定された場合、大統領が90日以内に輸入制限措置の採否を判断、同意すれば15日以内に措置が発動するというプロセスで進められます。
JETROは「米国関税措置等に伴う日本企業相談窓口」を設置し、北米地域等を専門とする専門家を配置し、広く日本企業からの個別相談対応にあたることを発表しました。
また、海外の各事務所や、全国49ヵ所(大阪本部含む)の国内事務所にも相談窓口を設置し、本部と連携して相談対応にあたるといいます。
オンラインでの申し込みは、JETROの公式サイトへ。
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