最重要輸出先、米国が最多 中国は低下も取引継続 JETRO調査
![最も重視する輸出先で首位は米国](http://p.potaufeu.asahi.com/1b51-p/picture/29211755/b6de13193e48e8ee970995fc7a2f97fc.png)
日本企業の輸出先として米国の重要性が増す一方、中国は低下していることが日本貿易振興機構(JETRO)の2024年度の海外ビジネス調査で明らかになりました。ただし、部材の海外調達で最大の調達先を「中国」と回答した企業は約半数に上っており、地政学リスクへの懸念が高まるなかでも、引き続き、調達先として取引が続いている様子がうかがえます。
日本企業の輸出先として米国の重要性が増す一方、中国は低下していることが日本貿易振興機構(JETRO)の2024年度の海外ビジネス調査で明らかになりました。ただし、部材の海外調達で最大の調達先を「中国」と回答した企業は約半数に上っており、地政学リスクへの懸念が高まるなかでも、引き続き、調達先として取引が続いている様子がうかがえます。
米中による経済的な対立や台湾有事リスク、ロシアのウクライナ侵攻、イスラエルとガザ地区を中心に緊張感が高まっている中東情勢など、世界各地での地政学リスクの高まりは、日本企業にとっても無縁ではありません。
2025年1月に米国でトランプ大統領が就任。2月から中国に向けた追加関税を始めただけでなく、ほかの国に対しても相互関税を表明しており、関税を使った外交手段で国際的な経済情勢は一層混乱するリスクをはらんでいます。
一方で、石破首相は2月7日にトランプ大統領と初めての日米首脳会談に臨み、対米投資を1兆ドル(約151兆円)規模に引き上げる意向を伝え、トランプ大統領から歓迎する言葉があったといいます。このように、表向きは良好な関係構築からスタートしました。
国際情勢が大きく変化するなか、JETROの記者発表資料によると、JETROは2024年11~12月、日本企業9441社を対象に、オンライン・郵送形式によるアンケートを実施し、3162社から有効回答を得ました(有効回答率33.5%)。このうち、中堅企業は349社、中小企業・小規模事業者は2701社含まれています。
JETROの調査で注目したい点は、「米国」を最重要輸出先と回答した企業が25.8%で首位となっていることです。この割合は、比較可能な2016年以降で最も高く、かつて首位だった中国との差がさらに拡大しています。
特に、前年度調査からの連続回答企業約1100社の回答に絞ると、米国が3.3ポイント増加したのに対し、中国は4.0ポイント減少しており、この傾向はより顕著になっています。
最重要輸出先を選んだ理由について、80%超の企業が「現地市場の需要拡大や引き合いの増加」と回答し、続く「販売先の多角化」(26.4%)は、前年から6.8ポイント増加しました。
最重要輸出先として米国を選んだ企業は次のようにコメントしています。
輸出先としての重要性だけでなく、海外で事業拡大を図る国・地域でも、米国(38.6%)の回答比率が最も高く、次点は中国(24.9%)でした。大企業の回答だけに絞ると、インドが首位となっていました。
主要な事業拡大先として、特に米国での新規拠点設立に意欲を示す企業が300社を超え、前年から100社以上増えました。
一方、最も重視する輸出先として「中国」を選ぶ企業の割合は3年連続減少しており、2024年は14.8%となりました。2021年までは1位でしたが、2024年は米国(25.8%)、ASEAN(21.4%)に次ぐ3位となっています。
中国で既存ビジネスの拡充や新規ビジネスを検討する企業の割合は33.2%。過去最低を記録した前年(33.9%)からほぼ横ばいとなっています。一方、縮小や撤退を検討する企業の割合は10%未満にとどまっています。
対中ビジネスの縮小・撤退の理由について尋ねると「地政学リスクの高まり」が59.5%に上り、コスト面での優位性の低下(38.5%)や需要減少の要因(33.2%)を上回りました。
また中国側の輸入規制(31.2%)、対中輸出管理の影響(21.5%)という回答もありました。
縮小・撤退する理由に関する主なコメントは以下の通りです。
とはいえ、中国抜きにビジネスを継続するのも難しい現状もあります。
主力製品・サービスにとって必要不可欠な主要原材料・部品の調達について、59.5%が海外調達を行っていると回答しています。海外調達している企業のうち、製造業、非製造業ともに、金額ベースで最大の調達先として中国を選んでいる企業が約半数に上り、他国を大きく引き離しています。
最大の海外調達先からの主要原材料・部品の調達について、地政学リスクの高まりで「すでに調達に影響が生じている」と答えた企業が20.5%、「現在調達に影響はないが、今後の影響への懸念あり」と答えた企業が49.9%に上っています。
地政学リスクは中国だけにとどまりません。EUからの調達ではスエズ運河の通航制限による納期遅れの長期化、米国からの調達ではトランプ新政権下における「米国第一」による供給混乱への懸念の声があったといいます。
地政学リスクによる調達への影響を避けるための対策(検討中含む)としては、「調達先の分散・多元化」を行う企業の割合が61.2%と最も高くなっています。
一方で、地政学リスクやサプライチェーンの混乱を背景に、海外ビジネスの一部を国内拠点に移管する動きも出てきています。海外ビジネス(一部含む)の国内拠点への移管を「実施済み/予定あり」とする企業は5.0%にとどまります。
その背景には、「進出先のビジネスコストの増加」だけでなく、「地政学リスクの回避」を理由とする回答比率も上昇しています。
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