目次

  1. 業績好調でも危機感
  2. 「お祝い」を戦略の根幹に
  3. コンセプトは「人生を祝う」
  4. かぶり物の制作もプロに依頼
  5. 言葉は短くするほど強くなる
  6. 「見極める力」をつけてロゴを決定
  7. コロナ禍を機に始めた「温泉卓球」
  8. ブランディングの視点を社内にも
  9. 部活動でコミュニケーションを活性化
  10. 中小企業こそリブランディングを
  11. 信念こそがブランドをつくる

西澤明洋さん

エイトブランディングデザイン代表

1976年、滋賀県生まれ。「ブランディングデザインで日本を元気にする」というコンセプトのもと、企業のブランド、商品、店舗開発など幅広いデザインを手がけている。「フォーカスRPCD®」という独自手法でリサーチからプランニング、コンセプト開発まで一貫性のあるブランディングデザインを強みとする。主な仕事にクラフトビール「COEDO」、抹茶カフェ「nana’s green tea」、スキンケア「ユースキン」など。著書に『ブランディングデザインの教科書』(パイ インターナショナル)ほか。特集書籍に『西澤明洋の成功するブランディングデザイン』(誠文堂新光社)がある。グッドデザイン賞金賞、Red Dot Design Award Best of the Best賞をはじめ、国内外100以上の賞を受賞。大学、企業などでの講演やセミナーも多数行う。

 河口湖から富士山を臨む絶好の場所に、うぶやはあります。客室51部屋はすべて富士山に面し、年間4万2~3千人が宿泊。受け付け開始直後に予約が埋まるといいます。ロゴやのれんからマイクロバスに至るまで、富士山を思わせる色で統一し、高級旅館でありながら、卓球ラウンジや家族用のフォトブースなども備え、「遊び心」にあふれています。

 うぶやは1948年、外川さんの祖父が創業しました。キャンプ場や修学旅行向けの旅館を経て、2代目の父が高級旅館に転換し、「湖山亭うぶや」に改名します。リニューアルは当たり、河口湖を代表する旅館の一つになりました。

富士山を一望できる客室
富士山を一望できる客室

 外川さんは静岡・伊豆の旅館で修業後、2000年に家業に入り、財務改善や取引先の見直しなど、早くから経営改革を任されました。客層を団体客から河口湖の観光客に多いファミリーにシフトしたのも、外川さんの判断でした。

 西澤さんとのリブランディングを決断したのは、社長就任前の2017年です。業績は好調ながら、危機感がありました。「富士山の世界遺産登録やインバウンド需要の高まりで、大手の旅館やホテルが進出し始めました。我々が積み上げた資金を一瞬で集められる大手に、設備投資ではかないません」

富士山が臨める天ぷらカウンター
富士山が臨める天ぷらカウンター

 立地だけでは、大手と差別化できません。「『お客さまの満足度の高い、いい宿』という言葉は抽象的です。うぶやの強みや魅力を言語化して打ち出すタイミングでした。そんなときに西澤さんの著書に出会い、依頼しました」

 旅館のブランディングは初めてだった西澤さんは、当時をこう振り返ります。

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