目次

  1. 皇居、歌舞伎座のじゅうたんを製造
  2. 「よそ者」だからできたこと
  3. 「伝言ゲーム」を目指して
  4. ワークショップで強みを探す
    1. 圧倒的な職人の技術力
    2. 国内唯一の一貫管理体制
    3. 既存のプレミアム商品
  5. BtoCで通用しない売り方
  6. コンセプトは羅針盤、ロゴは旗印
  7. 柄よりも技術をつなぐ
  8. 利益率改善で危機を解消
  9. ものづくりの内側が説得材料に
  10. 土壌があったから自走できる
  11. 攻めの「デザイン経営力」

西澤明洋さん

エイトブランディングデザイン代表

1976年、滋賀県生まれ。「ブランディングデザインで日本を元気にする」というコンセプトのもと、企業のブランド、商品、店舗開発など幅広いデザインを手がけている。「フォーカスRPCD®」という独自手法でリサーチからプランニング、コンセプト開発まで一貫性のあるブランディングデザインを強みとする。主な仕事にクラフトビール「COEDO」、抹茶カフェ「nana’s green tea」、スキンケア「ユースキン」など。著書に『ブランディングデザインの教科書』(パイ インターナショナル)などがあり、2024年6月7日、特集書籍『西澤明洋の成功するブランディングデザイン』(誠文堂新光社)が発刊された。

 東京・歌舞伎座の大間のじゅうたんは、咋鳥紋様の絵柄が施され、職人の手づくりによる技術が生み出す美しい絵柄と上質な踏み心地で高い評価を得ています。この芸術作品のようなじゅうたんを製作したのが、オリエンタルカーペットです。1935年の創業以来、上質な羊毛からの糸づくりをはじめ、染色、織り、仕上げ、アフターケアまで一貫管理の下生産を続けています。皇居新宮殿やバチカン宮殿、迎賓館、帝国ホテルなどにじゅうたんを納めてきました。

歌舞伎座大間のじゅうたん
歌舞伎座大間のじゅうたん(画像提供:松竹(株)・(株)歌舞伎座)

 渡辺さんは元々、地元テレビ局に勤めていました。職場の同僚だったオリエンタルカーペット創業者の孫との結婚を機に、1991年、同社に入社します。当時の売り上げは約15億円で、従業員は100人強を誇りました。ところが、渡辺さんが義伯父から経営を継いだ2006年時点で、年商は約3億円台、社員数は38人、しかも高年齢化が進んでいるという状況でした。

 「主力はBtoB向けのオーダーメイドのじゅうたんでしたが、バブル崩壊などのあおりで建築物の着工数が減り、予算の大きなプロジェクトはさらに少なくなりました。高級じゅうたんは予算が合わず、見送られることも少なくありませんでした」

じゅうたんの華やかな絵柄に、技術の粋が詰まっています
じゅうたんの華やかな絵柄に、技術の粋が詰まっています(以降、注釈のない写真はエイトブランディングデザイン、オリエンタルカーペット提供)

 渡辺さんは社長就任と前後して個人向けの新商品開発に着手。その一つが、山形県出身の工業デザイナー・奥山清行さんがデザインしたじゅうたんです。フェラーリなどのデザインを手がけた奥山さんのシリーズは今も販売され、躍動する海を表現した「UMI」は看板商品です。

奥山清行さんがデザインした「UMI」
奥山清行さんがデザインした「UMI」

 それでも、リーマン・ショックや2011年の東日本大震災などで経営はさらに厳しさを増し、危機に陥りました。そんなとき、渡辺さんは共通の知人を介して西澤さんと出会いました。

 オリエンタルカーペットを訪ねた西澤さんは、当時をこう振り返ります。

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