受発注DXで残業ゼロへ 売上3億円UPを達成した長野のパン店支援会社
(最終更新:)
株式会社丸冨士代表取締役社長 倉石匡啓さん(撮影・植原みさと)
1957年創業の「丸冨士(長野市)」は、地元を中心にパン店や菓子店の食材から加工機器の販売、配送、開業支援までワンストップで支援しています。父に代わり、倉石匡啓(まさひろ)さんが28歳で3代目として社長に就任しました。FAXや電話による受注で起こっていた注文違いや配送忘れなどの問題を解消しようと、受発注・請求・営業をDX推進するプラットフォーム「Bカート」を使ってWeb上での受注システムを構築。すると、月20時間ほどあった社員の残業をなくせただけでなく、注文が全国から舞い込むようになり、年間3億円ほど売上を伸ばせるようになりました。
創業は善光寺の甘味処向けの砂糖卸
丸冨士は1957年創業。創業者の倉石廣平(ひろへい)さんは善光寺の甘味処向けの砂糖や水飴の卸売業を手掛けていました。
そこから、現社長である匡啓さんの父・愼夫(みつお)さんが2代目となり、パン店や洋菓子店などにも取引先を広げました。「職人肌でパンも作れて、機械も修理できてしまう。長く付き合いのある取引先から可愛がっていただいていました」
創業前に祖父が勤めていたという会社から譲り受けた看板。いまも丸冨士に飾られている
そんな後ろ姿を見て育ったのが3代目社長の倉石匡啓さん。さまざまな業種で直販が増え、卸売業が苦戦するなかでも、地元の店舗へのきめ細やかなサービスと、Webを活用した情報発信により事業を拡大。ここ3年でマーケティング部、製造部、セールスドライバーをそれぞれ1人増やしました。
匡啓さんは「父の口から直接ビジネスを教わったことはありません」と言いますが、子どものころから、大切な取引先との商談や中国出張など父の仕事に付き添っていました。
「トラブルが起きたとき、お客様から厳しいことも言われます。それでも父は体を張って対応し、最後はうまく話をまとめていました」
匡啓さんは当時から「将来は継ぐんだろうな」と感じていたといいます。
FAXや紙のカタログが当たり前だった現場
大学卒業後の2011年に丸冨士へ入社すると、まずは営業を任された匡啓さん。製菓製パン原材料の卸問屋でしたが、店舗の独立開業支援から包装資材・専門器具の販売、厨房機械のメンテナンスまで、社員1人ひとりが幅広い困りごとに応えようとしている会社なのだと改めて認識しました。
丸冨士の倉庫。照明をLEDに切り替えたため明るくなったという
しかし、同時に課題も見つかってきました。
まず、自社内で構築していた専用システムへ注文を転記するとき、従業員によって入力ルールや登録する商品名はバラバラとなっていることを知ります。そのため、棚卸をすると「なんでこの商品を入荷しているの!?」「在庫が残っているはずの商品がない!」といった問題が起きていました。
これには、経理業務は紙で処理をしていたため、すぐに月々の在庫金額が分からず、正確な月次処理ができていなかったことも影響していたといいます。
当時、地元店からの注文の多くは電話かFAXでした。電話口で「いつもの小麦粉」と注文されるなど、ベテラン社員しかわからないやり取りもたくさんありました。
ここでの一番の課題は受発注ミスが起こりやすいことでした。取引先の菓子店・パン店から、注文が届かない、注文したものとは別の商品が届いた、という連絡もあったといいます。そんなとき、担当者は半日かけてお詫びに回っていました。
また、取引先に商品を説明するツールは、カタログでした。匡啓さんは「当時は、カタログでしか商品を認知して頂く方法がなかったのです」と振り返ります。しかし、頻繁に刷り直すことができません。価格改定や商品の入れ替えに追いつかないときは、上からシールを貼って対応していました。
匡啓さんは「このままでは信用も時間もお金も損失が大きい…」と頭を悩ませていました。
28歳で事業承継 卸売から「サービス業」へ
第一線で指揮を執り続けていた父が病気療養のため、2017年に代表取締役社長を退くと、匡啓さんが28歳で事業承継します。
あらためて会社の状況を確認すると、先代から続く取引先との丁寧な関係構築のおかげで、業績に大きな変動はないものの、売上高は20年前をピークに緩やかに下がっていることが分かりました。
外部環境に目を向けると、価格競争に巻き込まれやすくなっていたほか、菓子店・パン店に自社のサービスを伝えきれていないところに弱みがあると分析。そこで、食品卸だけでなく、機械卸・ 物流・ 開業支援といったこれまで手掛けてきた事業を掛け合わせて情報発信することで、価格競争に巻き込まれず 他社との差別化が図れると考え、自社の事業を「卸売業」ではなく「モノを介したサービス業」と位置づけました。
自社の強みについて話す倉石匡啓さん
匡啓さんは「あくまで卸売業は手段の一つでしかありません。地元で長く事業を続けていくためには、自分たちが儲ける以上に、地元のお客様が収益を出せる事業づくりのお手伝いをしていきたいのです」と話します。
「バケツの穴」をふさいだBカート
今後の事業の方向性が定まると、具体的な業務課題の改善に向けて動き始めました。
受発注ミスなどから生じる様々なコストを「水がこぼれて続けているバケツの穴」にたとえ、今後の目標を「バケツの穴をふさぎつつ、同時に売上も伸ばすこと」と掲げました。デジタル化を検討し、様々なサービスを試すなかで 出会ったのがBカートでした。
Bカートは、BtoB取引を前提として開発されたWeb受発注システムです。顧客ごとに違う複雑な取引を設定できる特徴があり、連携サービスも豊富です。
匡啓さんの決め手となったのは「卸売業の独特な商形態に合わせて価格設定を細かく調整でき、UI(ユーザーインターフェース)がシンプルだった」ところだといいます。
上のディスプレイに表示されているのが「マルストック(marustock)」
Bカートを活用して、パン・製菓材料を仕入れられるECサイト「マルストック」を立ち上げ、取引先からの注文をアナログからデジタルへ移行しようと動き出しました。
まずは、普段、データ入力しているのと同じ要領で、匡啓さんと妻の志保さんの2人で少しずつマルストックへ商品登録を進めていきました。現在、掲載している製パン・製菓材料は2000アイテム以上にまで増えました。
また、これまで依頼があった店舗にのみ領収書を作成していましたが、いまでは、RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)により、ワンクリックで領収書をメール送付できるようになりました。さらに、注文済みの商品がいつ頃届くかという納期連絡も自動で送付してくれるので連絡漏れもありません。
「従来は注文の食い違いや発注ミス、煩雑な連絡対応などの作業で、事務作業が1~2時間延びたり、営業が急遽対応し半日つぶれたりすることがありました。ですが、Bカートの導入により、業務プロセスが自動化・効率化された結果、受注量は1.5倍に増えたにも関わらず、残業はなくなりミスも減りました」
全国からのWeb注文で取引先は10倍超 EC事業の年商は3億円に
丸冨士は元々、地元で300社との取引がありましたが、マルストックの運営を続けるなかで 全国から注文が入るようになり、会員数は4000社まで増えました。
匡啓さんは「対外的な認知度が高まり、扱っている商品・ 価格・ リードタイムについて、お客様が自ら調べて問い合わせいただくようになりました」と話します。
これには、マルストックに登録した商品がWeb上でSEOの観点から評価が高く、検索サイトの上位に表示されるようになったことも大きかったといいます。過去に分析した丸冨士の弱みである、「自社のサービスを伝えきれていない」といった点も解消されたのです。
「マルストック(marustock)」の意匠権を取得
Bカートを導入して以降、新たに立ち上がったEC事業で3億円超の売上を達成できるようになり、今ではマルストックによる売上が会社全体の売上の3割を占めるまでに成長。 会社全体の年間売上は10億円となりました。
社員1人あたりの労働生産性は大手企業並みにまで高められた結果、年間休日120日を確保しつつ、賃上げを実現できました。業種平均と比べても高い給与を払えています。
「お客様との関係を深められるなら自発的に動いてよい」という社風もあり、定年退職や、やむをえない事情を除けば、離職はありません。
さらに、Bカート導入により ベテラン社員でなければできない作業が減り、属人化を解消できるようになっています。売上が増えて業務自体は増えているにも関わらず自動化を進めた結果、毎月20時間ほどあった残業をなくすことができました。
社内システムのDXを進めている丸冨士の社内
「夜に社員たちが忙しく働く光景もなくなりました」と匡啓さんは嬉しそうです。いまでは受発注システムにとどまらず、基幹システムの入れ替えや、会計システムの導入も積極的に進めています。匡啓さんは「ただし、始めるときはどれもスモールスタートです。徐々に浸透を図ることが大切です」と話しています。
「地域を豊かに」を全国へ
丸冨士本社前に立つ倉石匡啓さん
創業以来、長野や新潟県の地元店との関係を大切にしてきた丸冨士。Web事業という成長事業を得たことで地域の食文化を豊かにするという目標の達成にむけ自信を深めています。
匡啓さんは「食」には人々の心も満たす役割があると信じています。「これまでは地元を中心に食文化を豊かにする事業を応援してきましたが、マルストックを通じて全国どこの店舗でも応援することができるんだと考えるようになりました」
『Bカート』は受発注・請求・営業をDX推進するBtoB ECプラットフォームとして導入実績2000社超、延べ75万社超の法人及び事業者の取引にご利用いただいております。また本格的なBtoB EC・受発注DXを、月額9,800円~、即日でスモールスタートできるサービスです。
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