目次

  1. 行政書士とは
  2. 改正行政書士法の5つのポイント
    1. 「行政書士の使命」の明確化
    2. 「職責」の新設とデジタル社会への対応
    3. 特定行政書士の業務範囲の拡大
    4. 業務の制限規定の趣旨の明確化
    5. 両罰規定の整備

 日本行政書士会連合会の公式サイトによると、行政書士は、行政書士法に基づく国家資格者で、他人の依頼を受け報酬を得て、官公署に提出する許認可等の申請書類の作成並びに提出手続代理、遺言書等の権利義務、事実証明及び契約書の作成、などを行います。

 2014年には特定行政書士制度が創設されました。特定行政書士は6000人ほどの登録があり、行政書士が作成した官公署に提出する書類に係る許認可等に関する審査請求、再調査の請求、再審査請求等行政庁に対する不服申立ての手続について代理し、及びその手続について官公署に提出する書類を作成することができるようになりました。

 こうしたなか、改正行政書士法が成立し、2026年1月1日から施行されることになりました。日本行政書士会連合会の会長声明によると、今回の改正は、主に以下の5つのポイントがあります。とくに依頼主となる中小企業経営者にとって注意すべきポイントは「業務の制限規定の趣旨の明確化」です。

行政書士は、その業務を通じて、行政に関する手続の円滑な実施に寄与するとともに国民の利便に資し、もって国民の権利利益の実現に資することを使命とするものとすること。

 今回の改正では、これまでの「目的」から「使命」へと表現が変更され、行政書士が果たすべき役割がより明確になりました。

 新設された法第1条の2では、行政書士の「職責」が詳細に定められました。その内容は以下の2点です。

1 行政書士は、常に品位を保持し、業務に関する法令及び実務に精通して、公正かつ誠実にその業務を行わなければならないものとすること。
2 行政書士は、その業務を行うに当たっては、デジタル社会の進展を踏まえ、情報通信技術の活用その他の取組を通じて、国民の利便の向上及び当該業務の改善進歩を図るよう努めなければならないものとすること。

 社会のデジタル化が急速に進む現代、士業法で初めて「デジタル社会への対応」の努力義務が規定されました。

特定行政書士が行政庁に対する不服申立ての手続について代理し、及びその手続について官公署に提出する書類を作成することができる範囲について、行政書士が「作成した」官公署に提出する書類に係る許認可等に関するものから、行政書士が「作成することができる」官公署に提出する書類に係る許認可等に関するものに拡大すること。

 今回の改正で、申請者本人が作成した(行政書士の前段階関与のない)官公署に提出した書類に係る許認可等に関する審査請求、再調査の請求、再審査請求等行政庁に対する不服申立ての手続について、特定行政書士が代理し、及びその手続について官公署に提出する書類を作成することができるようになりました。

 行政書士または行政書士法人でない者による業務の制限規定に、「他人の依頼を受けいかなる名目によるかを問わず報酬を得て」という文言が加えられ、その趣旨がより明確になりました。

 これは、書類作成という役務提供に対する対価が、「会費」などどのような名目であっても「報酬」に該当することが明確にされたことを意味し、無資格者が報酬を得て行政書士業務を行うことへの規制が強化されました。

行政書士または行政書士法人でない者による業務の制限違反及び名称の使用制限違反に対する罰則並びに行政書士法人による義務違反に対する罰則について、両罰規定を整備すること。

 この改正は、組織的な違反行為や法人としての義務違反に対する罰則を強化するものです。

 新たに行政書士または行政書士法人でない者による業務制限の違反、名称の使用制限の違反、行政書士法人の帳簿の備付及び保存義務の違反並びに依頼に応ずる義務の違反、都道府県知事による行政書士又は行政書士法人の事務所への立ち入り検査を拒み、妨げ、または忌避する違反の行為をしたときは、その行為者を罰するほか、その法人または個人に対して各罰金刑を科することになりました。