日産の再建計画・マレリの破産法初期申し立て承認、中小企業への影響懸念
杉本崇
(最終更新:)
日産・マレリの取引先への影響(いずれも東京商工リサーチのデータをもとに加工)
東京商工リサーチ(TSR)が2025年6月2~9日に実施したアンケート調査によると、日産自動車の経営再建計画「Re:Nissan」は、日産と取引のある企業525社の約半数にマイナスの影響を与えていると回答していました。また、主要サプライヤーの1社であったマレリホールディングスについても6月12日に、アメリカで日本の民事再生法に相当するチャプター11の初期申請をアメリカの裁判所が承認しており、国内2942社に影響が及ぶおそれがあります。
日産の経営再建計画「Re:Nissan」とは
記事「日産自動車の経営再建計画 Re:Nissanの3つの柱を解説」によると、日産自動車は2025年5月13日、2025年3月期の純損益が6708億円の赤字(前期は4266億円の黒字)だったと発表しました。合わせて新たな経営再建計画「Re:Nissan」を発表しました。
2027年度までに世界の17工場を10工場に統廃合し、約2万人の従業員を削減する計画です。
マイナスへの対策「仕入・外注先との契約を見直す」
今回のアンケート調査は、有効回答数が6641社で、日産のグループを含めて直接売上のある企業は2.5%(167社)で、間接取引のある企業は5.5%(371社)、直接・間接ともに取引のある企業は0.6%(44社)という回答状況でした。
日産の再建計画が経営に与える影響について、「売上がある」と回答した企業に尋ねたところ、525社から回答があり、50.2%が「マイナス」の影響を挙げました。一方で「プラス」と回答した企業は1.9%、「特に影響はない」は47.8%でした。
産業別で「マイナス」の影響が最も高かったのは運輸業で60.8%、次いで製造業が55.8%、卸売業が52.9%、情報通信業が52.0%と、これら4産業が半数を超えました。
マイナスの影響への対応として「仕入・外注先との契約を見直す」が29.5%で最も多く、工場閉鎖や生産台数減少に伴う取引体制の見直しを検討している企業が多いことが分かります。
次いで、「賃上げ計画を見直す」が27.9%、「採用計画を見直す」が20.2%、「人員削減を検討する」が17.0%と、自社の人事面での変更を予定する企業が多いようです。
さらに深刻なケースとして、回答した中小企業の6.0%が廃業を検討しているといい、事態の深刻さが浮き彫りになっています。
マレリの破産法初期申し立て承認、国内企業に影響か
日産の主要サプライヤーの1社であったマレリホールディングスについて、現地時間の6月12日に、アメリカで日本の民事再生法に相当するチャプター11の初期申請をアメリカの裁判所が承認しました。
東京商工リサーチのデータベースによると、マレリグループの国内取引先は2942社に上るとされ、この影響は部品サプライチェーン全体に及ぶ可能性を示唆しています。
東京商工リサーチの企業データベースから、マレリグループの1次(直接)、2次(間接)の取引企業を抽出したところ、2942社のうち、製造業が1463社(構成比49.7%)、卸売業867社(29.4%)の2産業で79.1%を占め、自動車部品メーカーや鉄鋼製品の卸売などが目立っています。
資本金別の取引先計では、1億円以上の企業が約40%を占める一方、個人企業などを含めた5000万円未満が1328社(同45.1%)で、中小企業との取引も多い状況です。
取引先の都道府県別では、最多が東京都の877社、2位に日産自動車の本社がある神奈川県、3位に自動車部品メーカーが集積する愛知県、4位に大阪府、5位に本社のある埼玉県と続いています。
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この記事を書いた人
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杉本崇
ツギノジダイ編集長
1980年、大阪府東大阪市生まれ。2004年朝日新聞社に記者として入社。医療や災害、科学技術・AI、環境分野、エネルギーを中心に取材。町工場の工場長を父に持ち、ライフワークとして数々の中小企業も取材を続けてきた。
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