目次

  1. 労働時間とは 使用者の指揮命令下に置かれた時間
    1. 研修・教育訓練に関する労働時間の取り扱い
    2. 仮眠・待機時間が労働時間に該当しない事例
    3. 労働時間の前後が労働時間に該当しない事例
    4. 直行直帰・出張に伴う移動時間が労働時間に該当しない事例
  2. 労働時間(残業代も)は1分単位が原則 労働基準法
  3. 労働時間の端数処理 厚労省が違法と指摘する事例
  4. 労働時間における端数処理の例外
  5. 労働時間の適正な把握に必要なこと
    1. 始業・終業時刻の確認・記録
    2. 賃金台帳の適正な調製

 厚生労働省の公式サイトによると、労働時間とは、使用者の指揮命令下に置かれている時間のことをいいます。

 使用者は、原則として、1日に8時間、1週間に40時間を超えて労働させてはならず、労働時間が6時間を超える場合は45分以上、8時間を超える場合は1時間以上の休憩を与える必要があります。

 労働時間に当てはまるかどうかは、使用者の明示または黙示の指示により労働者が業務に従事しているかどうかで判断します。具体的には、以下のような時間も労働時間に含まれる可能性があります。

  • 使用者の指示により、就業を命じられた業務に必要な準備行為(着用を義務付けられた所定の服装への着替え等)
  • 業務終了後の業務に関連した後始末(清掃等)を事業場内において行った時間
  • 使用者の指示があった場合には即時に業務に従事することを求められており、労働から離れることが保障されていない状態で待機している時間(手待時間)
  • 参加することが業務上義務づけられている研修・教育訓練の受講
  • 使用者の指示により業務に必要な学習等を行っていた時間

 厚労省のリーフレット「労働時間の考え方:研修・教育訓練等の取扱い」(PDF)をもとに、個別のケースで労働時間に該当するか否かをもう少し詳しく紹介します。

労働時間に該当する事例

  • 使用者が指定する社外研修について、休日に参加するよう指示され、後日レポートの提出も課されるなど、実質的な業務指示で参加する研修
  • 自らが担当する業務について、あらかじめ先輩社員がその業務に従事しているところを見学しなければ実際の業務に就くことができないとされている場合の業務見学

労働時間に該当しない事例

  • 終業後の夜間に行うため、弁当の提供はしているものの、参加の強制はせず、また、参加しないことについて不利益な取扱いもしない勉強会
  • 労働者が、会社の設備を無償で使用することの許可をとった上で、自ら申し出て、一人でまたは先輩社員に依頼し、使用者からの指揮命令を受けることなく勤務時間外に行う訓練
  • 会社が外国人講師を呼んで開催している任意参加の英会話講習。なお、英会話は業務とは関連性がない。

 仮眠室などにおける仮眠の時間について、電話等に対応する必要はなく、実際に業務を行うこともないような場合には、労働時間に該当しません。

 たとえば、週1回交代で、夜間の緊急対応当番を決めているが、当番の労働者は社用の携帯電話を持って帰宅した後は自由に過ごすことが認められている場合の当番日の待機時間も労働時間に該当しません。

 更衣時間について、制服や作業着の着用が任意であったり、自宅からの着用を認めていたりするような場合には、労働時間に該当しません。

 交通混雑の回避や会社の専用駐車場の駐車スペースの確保等の理由で労働者が自発的に始業時刻より前に会社に到着し、始業時刻までの間、業務に従事しておらず、業務の指示も受けていないような場合も、労働時間に該当しません。

 直行直帰・出張に伴う移動時間について、移動中に業務の指示を受けず、業務に従事することもなく、移動手段の指示も受けず、自由な利用が保障されているような場合には、労働時間に該当しません。

 残業代も含め、労働時間は1分単位で記録・計算するのが原則です。直接明示されているわけではありませんが、労働基準法24条の「賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない」が根拠となっています。

 そのため、1日ごとに、一定時間に満たない労働時間を一律に切り捨て、その分の賃金を支払わないことは、労働基準法違反となります。

 例えば、以下のような取り扱いは労働基準法に違反する可能性があります。

  • 勤怠管理システムの端数処理機能を設定し、1日の時間外労働時間のうち15分に満たない時間を一律に切り捨て(丸め処理)、その分の残業代を支払っていない
  • 残業申請は、30分単位で行うよう指示しており、30分に満たない時間外労働時間については、残業として申請することを認めておらず、切り捨てた分の残業代を支払っていない
  • 一定時間以上でしか残業申請を認めない

 事業所の都合で労働時間を短く計算し、本来支払われるべき賃金を支払わないことは認められません。

 ただし、労働時間における端数処理には、例外があります。1ヵ月における時間外労働、休日労働および深夜業の各々の時間数の合計に1時間未満の端数がある場合に、30分未満の端数を切り捨て、それ以上を1時間に切り上げることは、常に労働者の不利となるものではなく、事務簡便を目的としたものなので認められます。

 また、1日の労働時間について、一定時間に満たない時間を切り上げた上で、その分の賃金を支払うことは、問題ありません。

 労働基準法においては、労働時間、休日、深夜業等について規定を設けていることから、使用者には労働時間を適正に把握する責務があります。使用者は、労働時間の適正な把握のために、以下の措置を講じてください。

 使用者は、労働時間を適正に把握するため、労働者の労働日ごとの始業・終業時刻を確認し、記録してください。

  • 使用者が、自ら現認することにより確認し、適正に記録すること
  • タイムカード、ICカード、パソコンの使用時間の記録等の客観的な記録を基礎として確認し、適正に記録すること

 自己申告制により行わざるを得ない場合は、一定の措置を講ずる必要があります。

 使用者は、労働者ごとに、労働日数、労働時間数、休日労働時間数、時間外労働時間数、深夜労働時間数といった事項を適正に記入しなければならなりません。賃金台帳は、労働時間に基づいて正しく賃金が支払われていることを証明する重要な書類です。