労働時間の端数処理、厚生労働省のルールを解説 1分単位の計算が原則

厚生労働省は、労働時間の端数処理について不適切な労働時間の管理や賃金の支払いに対して、適正な取り扱いを呼びかけています。厚生労働省がまとめたリーフレット「労働時間を適正に把握し 正しく賃金を支払いましょう」を参考に、労働時間の適切な把握方法や、誤った端数処理による賃金不払いについて詳しく解説します。
厚生労働省は、労働時間の端数処理について不適切な労働時間の管理や賃金の支払いに対して、適正な取り扱いを呼びかけています。厚生労働省がまとめたリーフレット「労働時間を適正に把握し 正しく賃金を支払いましょう」を参考に、労働時間の適切な把握方法や、誤った端数処理による賃金不払いについて詳しく解説します。
目次
厚生労働省の公式サイトによると、労働時間とは、使用者の指揮命令下に置かれている時間のことをいいます。
使用者は、原則として、1日に8時間、1週間に40時間を超えて労働させてはならず、労働時間が6時間を超える場合は45分以上、8時間を超える場合は1時間以上の休憩を与える必要があります。
労働時間に当てはまるかどうかは、使用者の明示または黙示の指示により労働者が業務に従事しているかどうかで判断します。具体的には、以下のような時間も労働時間に含まれる可能性があります。
厚労省のリーフレット「労働時間の考え方:研修・教育訓練等の取扱い」(PDF)をもとに、個別のケースで労働時間に該当するか否かをもう少し詳しく紹介します。
仮眠室などにおける仮眠の時間について、電話等に対応する必要はなく、実際に業務を行うこともないような場合には、労働時間に該当しません。
たとえば、週1回交代で、夜間の緊急対応当番を決めているが、当番の労働者は社用の携帯電話を持って帰宅した後は自由に過ごすことが認められている場合の当番日の待機時間も労働時間に該当しません。
更衣時間について、制服や作業着の着用が任意であったり、自宅からの着用を認めていたりするような場合には、労働時間に該当しません。
交通混雑の回避や会社の専用駐車場の駐車スペースの確保等の理由で労働者が自発的に始業時刻より前に会社に到着し、始業時刻までの間、業務に従事しておらず、業務の指示も受けていないような場合も、労働時間に該当しません。
直行直帰・出張に伴う移動時間について、移動中に業務の指示を受けず、業務に従事することもなく、移動手段の指示も受けず、自由な利用が保障されているような場合には、労働時間に該当しません。
残業代も含め、労働時間は1分単位で記録・計算するのが原則です。直接明示されているわけではありませんが、労働基準法24条の「賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない」が根拠となっています。
そのため、1日ごとに、一定時間に満たない労働時間を一律に切り捨て、その分の賃金を支払わないことは、労働基準法違反となります。
例えば、以下のような取り扱いは労働基準法に違反する可能性があります。
事業所の都合で労働時間を短く計算し、本来支払われるべき賃金を支払わないことは認められません。
ただし、労働時間における端数処理には、例外があります。1ヵ月における時間外労働、休日労働および深夜業の各々の時間数の合計に1時間未満の端数がある場合に、30分未満の端数を切り捨て、それ以上を1時間に切り上げることは、常に労働者の不利となるものではなく、事務簡便を目的としたものなので認められます。
また、1日の労働時間について、一定時間に満たない時間を切り上げた上で、その分の賃金を支払うことは、問題ありません。
労働基準法においては、労働時間、休日、深夜業等について規定を設けていることから、使用者には労働時間を適正に把握する責務があります。使用者は、労働時間の適正な把握のために、以下の措置を講じてください。
使用者は、労働時間を適正に把握するため、労働者の労働日ごとの始業・終業時刻を確認し、記録してください。
自己申告制により行わざるを得ない場合は、一定の措置を講ずる必要があります。
使用者は、労働者ごとに、労働日数、労働時間数、休日労働時間数、時間外労働時間数、深夜労働時間数といった事項を適正に記入しなければならなりません。賃金台帳は、労働時間に基づいて正しく賃金が支払われていることを証明する重要な書類です。
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