トランプ大統領「日本の相互関税は15%」 石破首相、自動車・米に言及
杉本崇
2025.07.23
(最終更新:2025.07.24 )
トランプ大統領のSNS投稿、石破首相が解説
アメリカのトランプ大統領は2025年7月22日、自身のSNSで「日本との大規模なディール(取引)を完了した」と投稿しました。投稿によると、日本への相互関税は以前に示されていた25%から15%に引き下げられた一方で、「私の指示で」日本はアメリカに対し、5500億ドル(約80兆円)をアメリカ合衆国に投資し、アメリカはその利益の90%を受け取ると説明しています。トランプ大統領の投稿を受けて、石破首相は記者会見で「世界に先駆け、数量制限のない自動車・自動車部品関税の引下げを実現をすることができました」と発言。米についても「ミニマム・アクセス制度の枠内において我が国のコメの需給状況なども勘案しながら、必要なコメの調達を確保していくということでございます」と説明しています。
トランプ大統領のSNS投稿
トランプ大統領は7月22日に以下の内容を投稿しました。
私たちは日本との大規模な取引を終えました。おそらくこれまでに行われた中で最大の取引です。日本は私の指示の下、5500億ドルをアメリカ合衆国に投資し、アメリカはその利益の90%を受け取ります。この取引は何十万人もの雇用を生み出すでしょう(これまでに類を見ないものです)。おそらく最も重要なことは、日本が自国の貿易を開放し、それには自動車やトラック、米やその他の農産物などを含むということです。日本はアメリカ合衆国に15%の相互関税を支払います。これはアメリカ合衆国にとって非常にエキサイティングな瞬間で、特に日本との素晴らしい関係をこれからも続けていくことができるという事実についてです。関心を持っていただき、ありがとうございます!
We just completed a massive Deal with Japan, perhaps the largest Deal ever made. Japan will invest, at my direction, $550 Billion Dollars into the United States, which will receive 90% of the Profits. This Deal will create Hundreds of Thousands of Jobs - There has never been anything like it. Perhaps most importantly, Japan will open their Country to Trade including Cars and Trucks, Rice and certain other Agricultural Products, and other things. Japan will pay Reciprocal Tariffs to the United States of 15%. This is a very exciting time for the United States of America, and especially for the fact that we will continue to always have a great relationship with the Country of Japan. Thank you for your attention to this matter!
石破首相がコメント「ギリギリの交渉をしてきた」
石破首相は23日9時過ぎ、首相官邸で記者団の取材に応じ、次のように発言しました。
「赤澤経済再生担当大臣から1報は受けております。(トランプ)大統領、(ベッセント)財務長官、(ラトニック)商務長官との会談の前にも連絡はありました、必要な指示を出していますし、私と赤澤大臣で方針に何ら齟齬はありません。自動車やほかの産品について国益をかけてお互いに全力でギリギリの交渉をしてきました。それがこういう形になっていると思います。政府として、国益を守るんだということ、お互いに日米が力を合わせて雇用を創出し、いい物をつくりということで、世界にいろいろな役割を果たしていくことに資するものになると考えております」
詳細は今後、報告を受けるとし、トランプ大統領とは必要に応じて電話または対面で会談をするとの考え方を示しました。
自動車・米の関税どうなる?石破首相が会見
石破首相は23日、改めて記者会見を開きました。まず、相互関税について25%まで引き上げるとされていた日本の関税率を15%で合意したことについて「これは、対米貿易黒字を抱える国の中でこれまでで最も低い数字となるものであります」と説明しました。
牛肉の26.4%など既存の関税率が15%を超える品目については課されません。また、関税率が15%未満の品目は原則、15%が上限となります(鉄鋼・アルミは対象に含まれない)。対米輸出の多い織物(7.5%)や光ファイバー(6.7%)は15%の上乗せではなく、関税率が15%になります。
そのうえで、自動車への関税や米をはじめとする農作物への対応、5500億ドルの根拠について説明しました。
VIDEO
出典:首相官邸ホームページ(https://www.kantei.go.jp/jp/103/statement/2025/0723bura2.html)
自動車・自動車部品への関税引き下げへ 15%は「追加」にならず
首相官邸の公式サイト によると、自動車・自動車部品の関税について次のように発言しました。
「我が国の基幹産業である自動車及び自動車部品について、4月以降に課された25%の追加関税率を半減し、既存の税率を含め15%とすることで合意をいたしました。世界に先駆け、数量制限のない自動車・自動車部品関税の引き下げを実現をすることができました」
なお、これまで課されていた関税2.5%分は、この15%のなかに含まれます。
半導体や医薬品「他国に劣後しない」
半導体や医薬品といった経済安全保障上、重要な物資については「仮に将来、関税が課される際も我が国が他国に劣後する扱いとはならないと、こういう確約を得ております」と発言。
一方、日本企業による米国への投資を通じて、半導体、医薬品、鉄鋼、造船、重要鉱物、航空、エネルギー、自動車、AI(人工知能)・量子等、経済安全保障上、重要な分野について、日米がともに利益を得られる強靱なサプライチェーンを構築していくため、日米で緊密に連携していくことで合意したといいます。(具体的には後段で説明します)
「農作物の関税引き下げ、含まれていない」
農作物の関税措置については「農産品を含め、日本側の関税を引き下げることは含まれておりません。これは関税より投資、2月のホワイトハウスにおける首脳会談で私がトランプ大統領に提案して以来、一貫して米国に対して主張し、働き掛けを強力に続けてきた結果であります」と成果を強調しました。
米について、政府は毎年、ミニマム・アクセス制度として77万tを輸入しています。今回の日米合意を踏まえ、米国からの輸入の割合を変える可能性について言及しています。
「ミニマム・アクセス制度の枠内において我が国のコメの需給状況なども勘案しながら、必要なコメの調達を確保していくということでございます。枠内でございますので、その中でアメリカからのミニマム・アクセス米の調達の割合を増やすというようなことだと思っていただいて結構ですが、今回の合意について、農業を犠牲にするというようなことは一切含まれておりません」と言い切りました。
5500億ドルの投資「政府系金融機関が提供可能に」
さらに、トランプ大統領が言及した5500億ドルの投資については、アメリカとの間で、日本企業による米国への投資を通じて医薬品や半導体などについて、強靱なサプライチェーンをアメリカに構築していく合意に関連することだと説明しました。
「日本企業が関与する医薬品、半導体等の重要分野での対米投資の促進のため、政府系金融機関が最大5500億ドル規模の出資、融資、融資保証を提供可能にするということで合意をしたというのが正確なところでございます。この投資は、JBIC(国際協力銀行)による出資、融資、日本貿易保険(NEXI)による保証を活用するということを考えておるわけでございます」と述べました。
具体的な金額については、実際の出融資・保証の進捗を踏まえて決定していくと説明していました。
日米合意に鉄鋼・アルミ含まれず
このほか、今回の日米合意の内容には、鉄鋼・アルミは含まれていません。これについては赤沢担当大臣が「鉄鋼・アルミを含む一連の関税については引き続きしっかりと議論を続けていきたいと思います」と発言しています。
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この記事を書いた人
杉本崇
ツギノジダイ編集長
1980年、大阪府東大阪市生まれ。2004年朝日新聞社に記者として入社。医療や災害、科学技術・AI、環境分野、エネルギーを中心に取材。町工場の工場長を父に持ち、ライフワークとして数々の中小企業も取材を続けてきた。
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