30年かけて培った製造技術

 ヤマチクは2019年3月、「okaeri」という軽くてしなるシンプルな竹の箸を自社商品として発売。首都圏を中心に大人気となり、生活雑貨専門店「ロフト」やセレクトショップの「アーバンリサーチ」などにも置かれ、若い世代の人気を集めています。

 商品開発を仕掛けたのは、同社の3代目で専務取締役の山﨑彰悟さんです。IT企業を経て24歳で家業のヤマチクに入社後、自社のリブランディングをはじめとした改革に取り組みました。

ヤマチクの自社ブランド竹箸「okaeri」

 1963年に創業した同社の事業は、1989年から始まったOEMが主流です。生協や人気雑貨店の中川政七商店に納めたり、産地問屋からの発注を受けたりしています。山﨑さんは「数やコストを重視される場合もあればクオリティやデザイン性を求められるところもある。この30年で、どちらにもしっかり対応できる技術が溜まってきました」と話します。

3代目が抱いた課題意識

 「商売」としては、OEMだけで十分まかなえていました。グローバル展開している企業との取り引きも多く、2倍、3倍の生産量を要求されていたといいます。一方、山﨑さんには課題意識がありました。

 「我が社は現在、日本で唯一、純国産の天然竹から箸を作っているメーカーです。しかし、お客様から木の箸との違いを聞かれたり、輸入品と同じ価格で作るように求められたりして、竹の箸の魅力がきちんと伝わっていないということが気になっていました」と悩んでいました。

 「竹を切る切子さんたちの収入面や高齢化の問題もありました。OEMで増産するには切子さんの協力が必要ですが、今の条件だと切子さんにこれ以上多く支払えません。また、若い切子さんが入らないと今後、材料も確保できなくなる。利幅の良い商品を生産できる事業を模索する必要がありました」

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