物心ついたときから後継ぎを意識

 若戎酒造は現在15名の従業員を抱えており、伊賀地区では最大級の約1500石(一升で約15万本)の年間生産量を誇ります。代表銘柄は創業者の名前を付けた「純米吟醸 義左衛門」です。

江戸時代から栄えた阿保宿・初瀬街道沿いで創業した若戎酒造。蔵の横には直営店も併設しています

 8代目社長の重藤邦子さん(47)は、蔵の長女として生まれ育ちました。祖父で5代目の久一さんからは「この子、跡取りやから」と言われ、重藤さんも物心ついた時からそのつもりでした。「自分が経営するというより、母が蔵人のまかないを作っている姿を見ていたので、私もそういう形で家業を支えるのかなぁ…と漠然と思っていました」

 栄養士の資格が取れる大学を選び、卒業後、新卒で若戎酒造に入社。その8年後には、1歳年下の妹、由里さん(現姓・久保)も入社しました。

変化と個性を追い求める

 重藤さんは入社後、事務作業や出荷手配、直営店での販売などをこなし、30代に入った頃から企画開発を手掛け、広報にも力を入れるようになります。経験を積んで、2016年秋、若戎酒造の8代目社長に就任しました。

 「国酒を造る仕事に子供の頃から誇りを持っており、継承して次の代へ繋ぎたい思いはありました。社長という肩書に不安もありましたが、長年一緒に頑張ってきたスタッフたちや、妹夫婦が支えると言ってくれたことも大きかったです」

「純米吟醸 義左衛門」は若戎酒造の代表的銘柄です

 就任当時、代表銘柄の「義左衛門」をはじめ安定した味わいのお酒が主力で、長年のファンも多くいました。それでも、重藤さんは「同じことをしていたら現状維持止まり。変化と個性を生み出すのが課題で、新しいターゲットに向けた商品開発が必要だと感じていた」と言います。

(続きは会員登録で読めます)

ツギノジダイに会員登録をすると、記事全文をお読みいただけます。
おすすめ記事をまとめたメールマガジンも受信できます。