効果的な商品陳列テクニック4選 陳列の重要性や見直しのコツも紹介
小売店の売上を増やし、コストがかからない改善策。それは商品陳列の見直しです。購買客を増やすために効果の大きい商品陳列テクニックの基本的な3つの方法「前進立体陳列」「縦割展開」「フェイシング」と、新商品の販促方法を、中小企業診断士・販売士1級の専門家が分かりやすく解説します。
小売店の売上を増やし、コストがかからない改善策。それは商品陳列の見直しです。購買客を増やすために効果の大きい商品陳列テクニックの基本的な3つの方法「前進立体陳列」「縦割展開」「フェイシング」と、新商品の販促方法を、中小企業診断士・販売士1級の専門家が分かりやすく解説します。
目次
商品陳列とは、「魅力ある商品と出会う場を提供する」という小売店の売場が持つ使命を果たすために、「見やすく、選びやすく、手に取りやすい」売場を作るための技術です。
小売店にとって重要なのは、日々の売上を向上させ、利益を増加させることにあります。そのため、「多くの品種、多くの品目を購入してもらう」「同じ機能の商品でも単価が高い商品を選んでもらう」「1品目当たりの買上数量を増やす」ことが必要です。
売上や利益を増やすには、品揃えの強化が考えられますが、仕入金額の上昇や売れ残りなどのリスクも伴います。また、自店舗より大きい売場を持つ店舗に勝つことも難しいでしょう。
在庫を増やしても、「商品の場所がわかりづらく、探しても見つからなかった」「棚に補充せず欠品になっていた、陳列が崩れて他の場所に移動していた」などによって、そもそも購入してもらえない場合もあります。
一方、仮にそこまで品揃えが豊富でなかったとしても、「見やすく、選びやすく、手に取りやすい」売場で買い物の楽しさを感じた購買客は、何度も来店してくれたり、好意的な良い口コミを発信したりと、店舗のファンとして活動してもらえます。
商品陳列は、限られた売場の中で、目の前の購買客の今日の購入金額を上昇させるだけでなく、生涯の購入金額を増やし、さらに新たな購買客を呼び寄せる効果を生み出す技術なのです。
では、どのような商品陳列が効果的なのでしょうか。筆者が小売店を支援する中でおすすめだと考えている4つのテクニックをご紹介します。
まずは、それぞれのテクニックの概要とメリット・デメリットをまとめた表をご覧ください。
手法 | 概要 | メリット | デメリット |
---|---|---|---|
前進立体陳列 | 商品のフェイス(顔)を手前(客側)にきちんと揃え、立体的に見せる陳列技術 | ・在庫数が少なくてもボリューム感が表現できる ・買い得感を感じさせやすい ・整然とした、清潔な売場のイメージを与える |
定期的に商品の前出し作業が必要 |
縦割展開 | 同じ種類の商品を、見やすい陳列幅で、垂直方向に陳列する陳列技術 | ・売りたい商品を買ってもらいやすくできる ・什器の前に立ち止まらせる効果が上がる ・商品を見つけてもらう可能性を上げられる |
・商品をグループ化する必要がある ・陳列数が少ない商品には向いていない |
フェイシング | 什器に商品を縦方向に何段、横方向に何列並べるのが最適かを決める陳列技術 | ・商品の訴求力を強化できる ・什器全体の販売効率の向上が図れる |
・過去の販売実績のPOSデータの把握が必要 ・未来の売上に向けた戦略的な割り当てが必要 |
育成商品中央配置型陳列・ダブルアタック陳列 | ゴンドラを9分割して、売れ筋商品と組み合わせながら新商品の販売を促進する陳列技術 | 定番商品の認知度で、新商品への注目を高める | ゴンドラエンドの確保が必要 |
それぞれについて、以下で詳しくご紹介します。
前進立体陳列とは、商品を什器の最前面に置いて、商品のフェイス(顔)を手前(客側)にきちんと揃え、立体的に見せる陳列技術です。商品の陳列面を盛り上がっている感じに見せることで、迫力感を演出して購買客の視覚に訴えることができます。
この陳列方法には、次のようなメリットがあります。
しかし、この陳列方法は、商品が売れると後ろの商品が什器の奥に引っ込んでしまっているように見えます。照明が当たらず、くすんで見えるので、売場のイメージが暗くなるだけでなく、商品の迫力がなくなって購買客も商品に触りにくい心理が働きます。
そのため、常に売場を商品の魅力が溢れるエキサイティングな場所にするためにも、定期的に商品の「前出し作業」を行うことが必要です。
また、商品を補充する際は、先に陳列していた商品を前方または上方へ移動させ、新しい商品を後ろや下へ積みます。長期間陳列した商品は鮮度の低下や、箱の破損、傷や汚れなどによって、商品価値が低下しやすくなるため、先に仕入れた商品を先に売る「先入先出法」の徹底が重要です。
縦割展開(垂直型展開)とは、同じ種類の商品を、見やすい陳列幅で、垂直方向に陳列することです。
陳列の前に立ったときの人間の視野の限度は、ゴンドラ什器1台(90〜120㎝)の範囲と言われています。また、立ち止まって物を探すときの人間の目は、横方向(左右)よりも縦方向(上下)に動く場合が多いと言われます。縦割展開は、この人間の心理に基づいた陳列方法です。
また、購買客が商品を最も手に取りやすい高さの範囲を「ゴールデンライン」と言います。商品を最も見やすい位置は目線の高さですが、最も触れやすい位置は腰から肩までの高さです。そのため、最も販売したい商品をこの範囲に配列することになります。
縦割展開には次のようなメリットがあります。
購買客の視点は什器に対して横方向に動いています。縦割展開を行い、複数の段に商品を展開することで、特定の商品を買ってもらいやすくなるだけでなく、購買客を立ち止まらせる効果や、購買客に「欲しい商品がこの棚にある」と気づいてもらえる可能性も高められます。
縦割展開を行うときは、事前に商品を用途や機能、ブランド別などにグループ化した上で、それぞれの分類ごとにサイズや色などを揃えるようにして並べましょう。
サイズが異なる商品は、棚の中で購買客から向かって左から小、中、大の順に陳列すると見やすくなります。
また、ゴールデンラインには「粗利益率が高く、数多く売りたい商品」や「購買頻度が高い定番商品」を配置するのが一般的ですが、もしどちらかしか陳列できない場合は、前者をゴールデンラインに、後者は什器下部に陳列するのが良いでしょう。定番商品は移動しても売上に大きな影響が出ないためです。
なお、縦割展開は、商品を大量陳列するスーパーマーケットなど、棚が多い中で、いかに多数の種類の商品を買ってもらうかがポイントになる売場に適しています。
「商品の種類が少ないので縦割に並べる商品がない」ような専門店の場合は、購買客がじっくり一つの棚を見て回る陳列を行っていれば、縦割展開に無理に変える必要はありません。
フェイシングとは、什器に商品を縦方向に何段、横方向に何列並べるのが最適かを決めることです。
陳列スペースを拡大して数量を増やすと、その商品の訴求力が強くなり、販売数量を大きく増やせるメリットがあります。また、什器に商品を適正に配置することで、什器全体の販売効率が向上します。
フェイシングは、原則としてそれぞれの商品の販売実績に基づいて決定します。購買客のニーズの強い売れ筋商品を数多く並べることは、来店客数を確保するために不可欠です。そのため、POSデータによって商品単位の販売数量を把握する必要があります。
しかし、売れ筋商品の粗利益率が高いとは限らないので、まず商品カテゴリーごとに平均粗利益率を算出して、粗利益の高いカテゴリーに手厚く陳列棚を配分するようにしましょう。その上で、粗利益率が高く、販売数量を増やしたい商品に、過去の実績以上のフェイシングを戦略的に割り当てることが重要です。
新商品の売れ行きもスペースの広さによって大きな差が出ます。過去の実績だけに囚われず、商品の魅力や期待度、ライフサイクルなどを考慮して、未来の売上に向けたフェイシングの戦略を立てましょう。
同じ商品カテゴリーには、売れ筋の定番商品も、販売を強化したい新商品もあるでしょう。エンドに確保したゴンドラに、認知度の高い商品と低い新商品を組み合わせて、新商品への注目を高める方法を紹介します。
ゴンドラを9分割して、上2段の中央のやや広めのスペースに新商品を陳列する方法です。最上段にはサンプルを置きます。
この方法では、下段に価格訴求力のある売れ筋商品を大量陳列して立寄率を高め、新商品の左右には、訴求したいテーマに関連する関連商品を陳列します。
新商品を売れ筋商品で挟み込んで、売れ筋商品と新商品の購買率を高める陳列方法で、挟み撃ち型とも言います。
同じくゴンドラを9分割にし、「PRゾーンである最上段は、中央の新商品を左右の売れ筋商品で」「推奨ゾーンである2段目は、最も売りたい左右の新商品で」「買う得ゾーンである3段目は、中央の新商品を売れ筋商品で」それぞれ挟みます。
この新商品は、購買客をゴンドラに引き寄せるマグネットの意味合いが強いため、上段と比べて低価格の必需品が最適です。
上記でご紹介したテクニックを用いて商品陳列を見直すときは、次のことも一緒に行っておくと良いでしょう。
商品陳列は、ぜひ他の店舗を参考にしてください。特に繁盛しているスーパーマーケットと、閑散としている店舗を見比べることをおすすめします。
また、競合店の店舗イメージの確認も重要です。これは、陳列が似ていると、店舗の特徴が伝わりづらいためです。専門店は「コーディネート陳列」(たとえば、クリスマスに関連のある商品を同じコーナーに陳列するなどいろんな商品を関連づけて展示すること)を取り入れることで、店舗のコンセプトの違いを明らかに伝えることができます。
店舗スタッフには、改善する目的を説明し、既に実施している工夫や、提案を聞き取ってから開始すると良いでしょう。一方的に指示することは、改善に取組む意欲を損ないがちで、逆効果になります。
商品陳列を実際に実行した際には、その効果の検証を行いましょう。
検証する際は、改善の前後のPOSデータや棚卸データを比較して、販売数の変化を確認します。外部環境の変化や天候など、他の変動要因を除外して、1週間程度の期間を合算して評価すると良いでしょう。
また、この情報はスタッフとも共有して、成果が出ている場合は協力に感謝する言葉を伝えます。
効果を検証したときに、不十分だとわかった場合は、スタッフと一緒に改善策を考えます。次のようなポイントを確認してみましょう。
①前出し作業の頻度と時間帯 | ・欠品や陳列が崩れた状態の時間が長すぎないか ・補充が購買客の購入や通行を妨げていないか |
②陳列の安定感 | 商品に触れると崩れそうな不安定な陳列はないか |
③売場の清潔感 | 整理、整頓、清掃はきちんと行き届いているか |
④什器の商品の組合せ | ・商品同士の関連性、商品の魅力、配色は適切か ・売場が単調になっていないか |
⑤フロアレイアウト | ・商品カテゴリー別の場所やスペースをきちんと確保できているか ・購買客の滞店時間が短くないか |
⑥陳列以外の商品の魅力を伝える手段 | 商品陳列以外に、商品の魅力を伝える方法を採用できないか(OP広告、ポスター、案内表示、店内放送など) |
⑦その他 | 窃盗(万引き)による商品ロスは起きていないか |
商品陳列は、毎日定期的に補充・前出し作業を行うことで、効果が維持されます。陳列の質が低下すると、購買客に失望を与え、流失する可能性があります。
1回の見直しで十分な効果が出るとは限りません。変更の成果を評価しながら、スタッフ全員で協力して試行錯誤を続けることが大切です。
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