目次

  1. チームビルディングとは
  2. チームビルディングの目的
  3. チームビルディングのプロセス(タックマンモデルとは)
    1. 形成期
    2. 混乱期
    3. 統一期
    4. 機能期
    5. 散会期
  4. チームビルディングの成功と失敗のターニングポイント
    1. コミュニケーションのルールを決めるかどうか
    2. チームの目的を見失っていないか
    3. レクリエーションに依存するかしないか
  5. チームビルディングに必要なコミュニケーションの取り方
    1. 普段から気をつけておくコミュニケーションの留意点
    2. リモート環境ならではの留意点
  6. 方法論に頼りすぎず、まずはビジョンとメンバーの把握を

 チームビルディングとは、一人ひとりが集団になった際のメリットを最大化するための取り組みです。

 会社でいうならば、多くの管理職が自分のチームに属する社員が力を発揮できるように「どうしたらいいだろうか?」「こうやってみようか?」と考えている取り組みすべてがチームビルディングの要素です。

 チームビルディングの目的は、主に次の3つがあげられます。

  • メンバーひとりひとりの承認欲求を満たし、仕事への意欲を向上させるとともに、業務上のミスを減らす
  • メンバーのチーム方針への理解を促し、課題に直面したときに自律的な解決策・アイデアが生まれるようにする
  • メンバー同士の補完を促し、リーダー依存を解消させる

 これらを果たしてチームの目標を達成し、企業全体の業績向上につなげていくのがチームビルディングのありたい姿です。

 チームビルディングを実行する上では、まずそれがどのようなプロセスで行われるのか、把握する必要があります。そのときによく利用されるのが、タックマンモデルです。

 本来、タックマンモデルは、1960年代にタックマンという心理学者が提唱した組織の成長過程を4段階でモデル化したものを指します。後に散会段階を加えて5つの段階になり、チームビルディングを考えるモデルとして有名です。

チームが発揮するパフォーマンスの推移図
チームが発揮するパフォーマンスの推移図(タックマンモデルをベースに筆者作成)

 各期の特徴と対応のポイントをご紹介します。

 形成期は、チームが作られたばかり、メンバーが大幅に入れ替わったばかりといったような、いわば初期段階を示します。メンバー同士が詳しくなく、様子をうかがうような発言や行動が目立ちます。

 この時期は、チームとして目指すものの共有と、充分に時間を確保した対話が不可欠です。お互いをわかった気になった状態で進めていくと、その後すべてがリーダー依存のチームになってしまう可能性があります。

 たとえば、社外で終日できれば1泊2日の時間を確保します。チームリーダーと相談しながら、チームに合いそうな内容でスケジュールを組みます。

 お互いの考え方を知り始め、自己の主張をぶつけ合えるようになります。

 ただし、メンバー間で利害関係が生じた際に、「議論して合意する」よりも「自己の意見を通すこと」「自己の意見を引っ込めること」を優先しがちです。混乱期は、声の大きい人の意見が通りやすく、大人しい人の不満がたまりやすい時期ともいえます。

 この期では、とくに声の大きい人が、管理職にとって納得感の高い発言をした際に注意しましょう。そのまま受け取ってしまうと、他のチームメンバーの不満に気づけず効率の悪いチームになる場合があるからです。

 また、混乱期によくある発言の一つとして「いやぁ、それは私の仕事ではないですから。」というものがあります。私がサポートするチームでも、この問題には直面しますが、おおむね概ね個人事情、組織事情それぞれで次の背景を抱えていることが多いです。

個人事情 組織事情
・ただでさえ忙しいのに、自分の仕事量が増えるという不安感
・経験のない仕事に関わらないといけないという不安感
・関心が持てないからやりたくないという自己中心的思考
・横断的なプロジェクトのとき、自分の直属の上司が、新たな業務に取り組むことに対して否定的
・チーム内で取り組む業務が、業績評価の一部になっていない、もしくは、業務量の割に評価比率が小さい

 お互いの性格がわかってきて、「この人にはこういう伝え方をするとよい」「この人は大人しいから、あまり強く言うと発言しなくなってしまう」「この人は、“やっぱり…”というちゃぶ台返しが多いタイプだから、丁寧に意見を聞こう」など合意を探ろうとしていきます。

 一人の納得感ではなく全体の納得感を重視するようになり、全体的にコミュニケーション量が増えるのが統一期の特徴です。

 一方、丁寧な議論をするがゆえに、決める力に欠けてしまうことがあります。誰が決めるのかを明確にし、決める人・決めるタイミングを明確にしておくことが肝要です。

 機能期は、チームとして目に見える成果が出始め、メンバー個々が何をすればよいのか、ある程度解ってきた時期を示します。この時期になると、チームリーダーに頼らず自律的に機能するようになってくるので、リーダーの負担が減ってきます。

 負担が減ったからといって放置しておくと、あっさり混乱期に戻ってしまうこともあります。統一期までのチームリーダーの役割はまさに「リーダーシップ」ですが、機能期以降は「スポンサーシップ」、つまり、きちんとチーム全体の挙動やメンバー個々の挙動を観察し、必要に応じて働きかけや助言をおこなうスタイルに切り替えて関わることが重要になります。

 散会期には、チームが終了することだけではなく、メンバーの入れ替わり時期も含まれます。

 この時期は、どうしても「終わった感」が生まれがちです。チームが散会するのであれば、その効果のまとめを、グループがこの後もメンバーを入れ替えて続くのであれば、その引き継ぎのための整理が必要です。

 チームで取り組んできたことに対する「思い」があると、そういった引き継ぎやまとめの意思が生まれます。

 形成期から「このチームは散会期を迎えたときに、どういう状態になっているだろうか」という点を意識した業務運営をしていくとよいでしょう。

 次に、チームビルディング全体を通じた、主な成功と失敗のターニングポイントについてご紹介します。

 チームの活動の中でベースになるのは、コミュニケーション(対話)です。

 コミュニケーションの場が増えることは、基本的には前向きな効果しかありませんが、「リーダーや声の大きい社員の『ご高説』を聞くだけの場になっている」「お互いを批判し、それぞれのメンバーのやる気を削ぐ場になっている」など、逆効果を生む状況は避けたいものです。

 そこで、安心して対話ができるよう、コミュニケーションのルールを決めることが重要です。たとえば、次のようなものです。

コミュニケーション(対話)ルールの例
コミュニケーション(対話)ルールの例(筆者作成)

 ルールを守らない状態になってくると、チーム内に不信感が生まれます。チームリーダーは、ミーティングのたびにこのルールに沿っているかを確認していくと良いでしょう。

 すべての期において起きえますが、課題が明確になり作業ベースになってくると、そもそものチームの目的を忘れがちです。目的を失うと、徒労感が増すこともあります。定期的にチームの目的を確認することを忘れないようにしましょう。

 混乱期以降であればどこでも起きえることですが、チームの人間関係が何かをキッカケにギクシャクすることがあります。そういったときにレクリエーション(飲み会・旅行・イベント参加・BBQ・ゴルフなど)に頼りたくなることもあるでしょう。ただ、そういった業務外の活動は気をつけて実施する必要があります。

 社員は、ギクシャクしているときほど、業務の内と外でのコミュニケーションを別々に捉えるからです。

 たとえば、レクリエーションでは充分にコミュニケーションがとれたとしても、職場に戻って議論をはじめたら、元の空気に戻ってしまうということはいくらでもあります。

 業務内での人間関係のギクシャクは業務内で解決を試み、キッカケがみえてきたところにレクリエーションを活用し「もう一押し」をするのであれば効果があります。

 なお、レクリエーションを実施する際には、参加メンバー個々の状況も考慮しましょう。たとえば飲み会を開催するにしても、お酒を飲めない人もいれば、夜は育児都合で参加できない社員もいます。メンバー全員が納得できる形態で開催するか、参加できなくても不都合には繋がらないような形態で実施するようにしましょう。

 最後に、チーム内でのコミュニケーションで普段から気をつけておくことと、コロナ禍で活用する機会が増えてきたリモート環境下における留意点を解説します。

(1)「対話のルール」を明確にしているか

 上記で紹介したような、対話のルールを作成するとよいでしょう。私が支援する場合は、初回のミーティングでルールを提示し、合意した上で進めていくようにします。ルールを常に提示しておくことで、メンバーに発言や傾聴の安心感が生まれ、合意形成しやすい環境をもたらします。

(2)「決める人」が明確になっているかどうか

 提案や議題があったときに、最終的に決める人を明確にしておくことで議論が進みやすくなります。決めるというのは常にチームリーダーがおこなうものではありません。領域に応じて、その議論分野での担当者を決めるようにしましょう。

(3)「会議の目的」を明確にしているか

 会議の目的、とくに「アイデア出しの場(結論を求めない)」なのか「決める場(結論が必須)」なのかハッキリさせておくとよいでしょう。

(1)参加環境が「1対多」にならないようにする

 当日出社している社員は会議室に集まり、在宅業務の社員はリモートで参加、いわゆる「1対多」の形式はよくあるパターンですが、私はこのスタイルは好ましくないと考えています。会議室の社員だけで話しが進みがちで、在宅参加者の参加実感が薄れがちになるからです。リモート会議の際は、出社、在宅に寄らず、個別に会議システムに参加することが好ましいでしょう。

(2)基本的には全員ビデオオンで参加する

 表情も重要な対話の要素の一つです。通信環境等、様々な要件で難しい場合には、せめて定期的に話しかけて発言を促すなど、雰囲気を感じ取れる仕掛けが必要です。

(3)ダブルトークにならないように気をつける

 リモートの欠点は、複数者の発言が被った(ダブルトーク)ときに、対面と比べて音声が聞き取りにくくなることです。エコーキャンセリング機能など、聞き取りやすくする機能が逆効果になることもあります。ダブルトーク対応の機器を利用すれば問題が生じにくくなりますが、できるだけ発言が被らないように気をつけることが大切です。

 チームビルディングには、確かに先人が考えた、たくさんの方法論や枠組みがありますが、方法論を考える前に、次の2つを明確にしていただければと思います。

  • 何を達成するためのどういったチームにしたいかというビジョンをもつ
  • チームメンバーひとりひとりの個性・能力を把握する

 この2つを明確にした上で選定した方策であれば、効果を発揮する可能性が高まります。

 また、質の高いチームは、リーダーがメンバー個々に強く関心を持ち、その上で丁寧に手法を検討しているという特徴があります。

 当記事が、皆さまのチームがうまく機能することのお役に立てば幸いです。