高速道路の深夜割引の仕組み、国交省が見直しへ 適用時間帯など要点は3つ

国土交通省は2023年1月20日、高速道路の深夜割引の仕組みを見直す方針を発表しました。0時前に深夜割引適用待ちの車が料金所出口に滞留するのを防ぐためとして、割引が適用される条件を変更し、対象時間を拡大します。高速道路会社と検討の後、2024年度中に導入される予定です。一方で日中に走行した分の割引がなくなるため、昼~深夜や深夜~午前といった時間帯に長距離で高速を使うドライバーにとっては、割引が大きく減る可能性があります。
国土交通省は2023年1月20日、高速道路の深夜割引の仕組みを見直す方針を発表しました。0時前に深夜割引適用待ちの車が料金所出口に滞留するのを防ぐためとして、割引が適用される条件を変更し、対象時間を拡大します。高速道路会社と検討の後、2024年度中に導入される予定です。一方で日中に走行した分の割引がなくなるため、昼~深夜や深夜~午前といった時間帯に長距離で高速を使うドライバーにとっては、割引が大きく減る可能性があります。
目次
高速道路の深夜割引は、夜間の車を周辺の一般道から高速道路に誘導して騒音を減らすため、2004年に始まりました。割引率の変更などを経て、2014年からは、0時~4時に高速道路の料金所を通過する車両の利用料金を3割引する仕組みとなっています。割引率の基準はどの地域も同じで、割引適用にはETCの搭載が必須になります。
国土交通省の資料によると、見直しの変更点は主に3つです。日中に走る分の割引がなくなるため、昼~深夜や深夜~午前にかけて高速を使う長距離ドライバーは、割引の恩恵が大きく減る可能性があります。デメリットを減らすには、高速の利用時間を深夜中心にずらすか、激変緩和措置などを活用する必要があります。
現行制度では、深夜割の時間帯である0時~4時に少しだけでも高速道路を走れば、0時~4時を超えて走った高速の利用料金も一律で3割引になります。
たとえば21時から高速道路に入った場合、23時55分に料金所を通って高速を出れば深夜割にはなりませんが、0時5分に料金所を出れば、21時以降に走った高速料金がすべて3割引となります。このため0時前になると、料金所の出口手前に割引の適用時間を待つ車両が滞留するなどの課題がありました。
見直し後は一律の割引がなくなり、割引時間帯に走行した分のみが3割引となります。たとえば昼の14時~深夜2時まで高速道路を走った場合、現行では全ての走行分が割引対象ですが、見直し後は深夜の割引時間帯に高速道路を走った分のみが割引対象となります。車両の走行距離をはかるため、ETCの搭載は必須となります。
現行の割引時間帯は0時~4時ですが、見直し後は22時~翌5時となり、計3時間拡大します。
現行の深夜割では、走行距離が100キロ超~200キロ以下だと25%割引、200キロ超だと30%割引で、これ以上長く走っても割引率は変わりません。見直し後は、400キロ超~600キロ以下が40%割引、600キロ超~800キロ以下が45%割引、800キロ超が50%割引と、距離に応じて割引率が上がります。
日中~深夜にかけて高速道路を走るような長距離利用者にとっては、①の条件変更によって割引の恩恵が大きく減ることが予想されます。そのため、こうした負担軽減措置をとるとのことです。
長距離利用者にとっては2-1の条件変更によって割引の恩恵が大きく減ることが予想されることから、見直しから5年ほどは激変緩和措置が導入されます。具体的には、高速道路で深夜割引時間帯に一定以上の距離を走り、かつ1千キロ以上を走行した場合は、1千キロを超えて走行した分も深夜割引の対象に含める方針です。
国土交通省は新たな深夜割引について、2024年度中をめどに導入するとしています。ただ、詳細な日程はまだ決まっていません。
またNEXCO東日本などによると、新たな深夜割引では車両の走行距離を正確にはかるため、ETCの通信アンテナを全国の高速道路各所に設置する必要があります。世界的な半導体不足でアンテナ設置が遅れた場合、割引の導入時期にも影響を及ぼす可能性があります。
現行の割引制度では、深夜0時に高速道路の料金所を通るかどうかで大きく料金が変わるため、割引を受けるために高速道路の出口手前で待機するトラックが増えてしまう仕組みになっています。国土交通省による2021年3月の調査では、東名高速の東京本線料金所で0時前に最大500メートルの滞留が確認されており、トラックドライバーの労働環境悪化につながっているとされてきました。割引制度の見直しでこうした待機が解消され、ドライバーの負担が減ることが期待されています。
また物流業界では近年、トラックドライバー不足が顕在化しています。そうした中、2024年度にはトラックドライバーに時間外労働の上限規制が適用されることから、人手不足に拍車がかかって輸送量が下がる「2024年問題」が懸念されています。国が深夜割の見直しを進める背景には、ドライバーの労働環境を改善して担い手を確保する狙いもあります。
公益社団法人全日本トラック協会は今回の見直し方針について、「この見直しにより、深夜割引時間帯の拡大による割引対象車両の増加や、長距離逓減の拡充による基本料金の引き下げ、本線料金所やSA・PAにおける深夜割引適用待ちの車両滞留の改善など、メリットも大きいものと考えています。以上から、今般の見直しの内容は、当協会の要望を踏まえたものとなっており、高く評価しております」とコメントを出しています。
深夜割引の見直し後は、割引時間帯の間に長く距離を走ったほうが割引の恩恵が増えるため、速度超過の運転が増える懸念があります。こうした無謀な運転を抑止するため、NEXCO東日本など高速道路3社は、深夜割引の対象距離に上限を設ける案を、2023年11月7日に発表しました。一般から意見を募ったうえで国交省に申請をし、新たな深夜割引制度がスタートする前に、正式なルールを決める方針です。
NEXCO東日本などが示した案では、車体の大きさごとに上限距離を設定。大型車・特大車は1時間あたり80キロ、軽自動車・乗用車は1時間あたり100キロを、割引対象の上限距離としており、これを超えて走行した分は割引の対象となりません。また連続の長距離運転を避けるため、4時間以上走行する場合は30分の休憩時間を考慮して上限距離を算出するとしています。
意見の募集期間は、2023年11月7日(火)から2023年11月20日(月)の17時まで。専用の提出フォームなどで意見を受け付けており、誰でも意見提出が可能です。
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