BtoB版「メルカリ」が苦戦した理由とは リサイクルからIT事業へ
月次決算で1500万円の経常赤字だった家業のリサイクル業を建て直し、循環型経済を掲げて企業向けフリマアプリを立ち上げた後継ぎがいます。「メルカリ」に触発され、オフィス家具や産業機械など企業向けのリサイクルアプリを開発しました。当初は企業ニーズをくみ取れず苦戦しましたが、続けていくなかで様々なニーズが見えてきました。
月次決算で1500万円の経常赤字だった家業のリサイクル業を建て直し、循環型経済を掲げて企業向けフリマアプリを立ち上げた後継ぎがいます。「メルカリ」に触発され、オフィス家具や産業機械など企業向けのリサイクルアプリを開発しました。当初は企業ニーズをくみ取れず苦戦しましたが、続けていくなかで様々なニーズが見えてきました。
福田さんが家業を継ごうと、金属スクラップ、産廃物の処理などを手がけてきた「東港金属」に戻ってきたのは2002年2月のことでした。しかし、9月に父親である前社長が急逝。
いきなり4代目社長を任されることになりました。当時28歳。「何とかなるだろう」と楽観視していたら、9月の月次決算を見ると1500万円の経常赤字が記録されていました。「死ぬ気でやらないと……」といきなり窮地に立たされていました。
社内を見返してみると当時、整理整頓も十分ではありませんでした。休憩所を掃除すると、出てきたゴミは4トントラック2台分。事業でも、非鉄金属原料のリサイクルを得意とするなど会社独自の強みを持っていたのに「サービスの観念がなく、営業にも行かず、緩んだ空気が蔓延していました」。
そこで福田さんはスクーターを買い、近隣地域の物流会社、設備工事会社、建築解体会社へ飛込み営業を始めました。前職の営業経験を生かして、訪問先の悩みを聞き出すことから始めました。当時インターネットもまだ普及しきっておらず、ゴミの細かな分別ルールまで把握するのが難しく、ごみに関連する法律も難しくてわからないという課題が浮かび上がりました。
「ゴミを分別したら処理委託費用が下げられること、廃棄物処理法に基づいた対応がコンプライアンス面で安心だと伝えると、飛び込みでも話を聞いてもらえることがわかりました」
50社回ると4社から契約を取ることができました。ノウハウを伝えた営業担当2人もこまめに回って次々と契約を取れるようになりました。10月に黒字へ転換し、売上高は2002年度の9億円から、2004年には16億円へと伸びていきました。
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売り上げとともに取り扱う廃棄物の量も増えます。2007年には千葉県富津市にリサイクルの新工場を増設するまでに拡大しました。しかし、集まってくる廃棄物を見て、福田さんは「もったいない」と思うようになりました。
資源リサイクルをしているとはいえ、再利用には膨大なエネルギーを消費します。それにも関わらず、1セット100万円を超えるような高級スピーカーのほか、新品同然の在庫品が物流拠点の倉庫から運ばれて、工場の大型シュレッダーで破砕されていきます。そんな光景に「このままで良いのか」という疑問が頭から離れませんでした。
そんな思いを抱えていた2017年。「資源を循環させる豊かな社会」という理念を掲げ、不用品を売りたい側と買いたい側をつなげるフリマアプリ「メルカリ」の驚異的な事業成長を見て心のなかで叫びました。
「やられた!」
本来、リサイクル企業がやるべきサービスじゃないかと考えたからでした。ちょうど「都心のリサイクル事業者の強みは何なのだろう」と考えていた時期でした。企業から日々大量の不用品が生まれる一方で、オフィス用品の需要があります。そこで、ITを活用した再循環サービスを手がける新会社「トライシクル」を2018年に立ち上げました。
企業が不要になったものを、それを欲しい企業に販売できる法人向けフリマサービス「ReSACO(リサコ)」を始めました。会員登録後にスマートフォンで出品したい商品を撮影すると、AIが参考価格を査定してくれます。出品情報を登録するだけで出品完了となります。
しかし、予想していたほど出品は集まりませんでした。福田さんは「後から考えれば当然なのですが、個人と違って会社で廃棄処分するときに、社員の方が廃棄品を一つずつ撮影して出品しないですよね」と話します。
そこで、より簡単に回収手続きができるようLINEで写真と回収場所を送ると不用品回収してくれるサービスなども始めました。こうしたサービスを組み合わせることで会員数が1000を超え、月間2000~3000個の回収ができるまでに広がってきました。
利用企業から話を聞くなかで、新たなニーズも浮かび上がってきました。大企業では総務部で捨てたものを、営業部門で新たに購入していたなど「社内のムダ」を気にする声が多いことに気づきました。こうした利用者の声に対してできることを一つずつ確かめています。
集めた不用品の出口戦略として、新しい再循環の手法として「リメイクの工業化」も始めています。福田さんは「今まで家具や調度品のリメイクはごく一部の趣味として行われていましたが、もっと工業的に規模を上げられるはずだと思っています」と話します。
「リメイクの規模拡大にはデザインの力が大きいと考えています。デザイン+設備化を進めてリメイクという再循環を拡大したいと思っています」
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