目次

  1. テレワーク導入の状況
    1. テレワーク導入目的トップは業務の効率性向上
    2. 働く側から見たテレワークのメリット
    3. 在宅勤務をして問題を感じた人は72.2%
  2. テレワークで必要な労働時間管理制度
    1. 在宅勤務なのに事業場外みなし労働時間制度が使えない?
    2. テレワークとフレックスタイム制の相乗効果とは
  3. テレワークでスムーズな勤怠管理の方法
    1. テレワークの勤怠管理手法
    2. 機能豊富な勤怠管理システム「ジョブカン勤怠管理」
    3. 日本生まれのチャットツール「Chatwork」
    4. 在宅でも職場にいるかのように働ける「F-Chair+」
    5. 自宅のパソコンから職場のパソコン操作「Team Viewer」
  4. 選ぶ際のポイント

 テレワークに関する国の調査は2つあり、総務省が2019年(令和元年)12月に実施した通信利用動向調査と、国土交通省が2019年(令和元年)10月~2020年(令和2年)3月にかけて実施したテレワーク人口実態調査があります。

 どちらも新型コロナウイルス感染症が本格的に拡大する直前の調査なので、導入企業割合の結果は現状と隔たりがあるかもしれません。

 しかし、導入目的や問題点などは大きく変わらないと思うので、その部分の結果を見てみましょう。

 総務省が実施した通信利用動向調査によると、企業のテレワーク導入目的は、業務の効率性(生産性)の向上が最も高く、68.3%でした。次に、「勤務者のワーク・ライフ・バランスの向上」、「勤務者の移動時間の短縮・混雑回避」が続いています。

 特に「ワーク・ライフ・バランスの向上」は2018年(平成30年)に比べると、25ポイント以上増えて、46.9%と大きな伸びを見せました。

 働き方改革関連法が2019年(令和元年)から施行され、コロナ禍の前でも導入の動きが進んだのは、多様な働き方を容認・対応する企業が多かったことと、テレワーク導入に関する支援事業・助成金事業が設けられたこともあると思います。

 テレワーク勤務規程の作成に関するご相談のお客様の多くは、何らかの支援事業・助成金事業を活用されたようです。

 また、私の顧問先でも労働時間にこだわらない働き方を導入するために、裁量労働時間制やフレックスタイム制の導入ともにテレワーク勤務を導入した企業が多数ありました。

 次に、企業のテレワークを導入した企業の状況を見ると、モバイルワークが最も高く63.2%、次いで在宅勤務、サテライトオフィスとなっています。テレワークの形態にも次の3種類があります。

  1. 在宅勤務
  2. モバイルワーク
  3. サテライトオフィス勤務

 モバイルワークは、スマホやノートPCなどを用いて移動中や顧客先、カフェ、ホテルなどを就業場所とする働き方で、コロナ禍に関係なく以前から行われています。ワーケーションもモバイルワークの1つだといえます。

 国土交通省が2019年(令和元年)に40,000人を対象に行った、テレワーク人口実態調査(テレワークの普及度合いと実施実態調査)をみてみます。先ほどの調査対象は企業でこちらは労働者側の調査です。

 非テレワーカーのうち、テレワークをしてみたいと回答した人(13,664人)に理由を尋ねたところ「通勤時間・移動時間が削減できそうだから」が71.9%と、最も多い回答でした。

 テレワークを開始する前は、企業の経営者層からすれば在宅でも真面目に業務に取り組むのか気にされる方が多いですが、労働者側からすると通勤で気力を消耗することも多いです。

 そのため私は、テレワークは「在宅という状況で気が緩み効率性が低下する」という懸念より、「通勤で気力をそがれず業務に取り組む」利点が大きいと考えており、通勤時間がネックの方は、それを取り除いた方が在宅という状況を差し置いても効率性(生産性)は良くなるのではと思います。

 また、育児や介護などで所定労働時間会社にいることが難しく、柔軟な働き方を望む人にもテレワーク勤務は好評だったようです。

 2020年(令和2年)3月4,532人を対象にした新型コロナウイルス感染症対策におけるテレワーク実施実態調査では、実際に在宅勤務をした544人を対象に問題があったかと尋ねたところ、なんらかの問題があったと回答した人は、なんと72.2%に上りました。

参考:新型コロナウイルス感染症対策におけるテレワーク実施実態調査(国土交通省 都市局都市政策課 都市環境政策室)

 多くは「会社でないと閲覧・参照できない資料やデータなどがあった」ことや「営業・取引先、同僚や上司などとの連絡・意思疎通」に困ったようです。

 テレワークの勤怠管理では、客観的・正確に記録をとることを大前提として、簡単にでもコミュニケーション機能があると好ましいかもしれません。

 次に、テレワークの社内体制を整備する際に知っておきたい2つの労働時間管理制度として、事業場外みなし労働時間制度とフレックスタイム制について、説明いたします。

 テレワークの、特に在宅勤務の場合では、どのように労働時間を把握するか頭を悩ませている経営者は多いことと思います。

 労働基準法により、企業は労働時間を把握し適切に管理しなければなりません。

 労働時間管理制度の1つである事業場外みなし労働時間制度は、事業場外で労働し、労働時間の算定が困難な場合には所定労働時間労働したものとする制度です。

 一見すると、在宅勤務の場合にはこれを適用し、所定労働時間働いたものとすれば良いように思えます。ただ、この制度は次のいずれかが該当すると、制度対象外となる場合があります。

  • 携帯電話などによっていつでも連絡がとれる状態である
  • 随時使用者(企業)の指示を受けながら労働している
  • 業務の具体的指示を受けている

 デジタル機器を用いて都度指示を受けたり報告をしたりして仕事を進める一般的な在宅勤務では、事業場外みなし労働時間制度は対象となりにくいでしょう。

 私は社会保険労務士として働いていますが、コロナ禍でテレワーク需要が高まり、対応する企業も多いなか、あわせてフレックスタイム制を導入したいというお問い合わせが多くあります。

 フレックスタイム制は、始業・終業の時刻を労働者自身が決められるのが特徴の労働時間管理制度です。ただし始業・終業の時刻を労働者自身が決定するといっても、それを記録しなければならないのは通常の労働時間管理と同じです。

 フレックスタイム制の導入には、労使協定で所定の事項を定めることと、就業規則などへの規定、この労使協定と就業規則を労働基準監督署へ届け出ることが必要となります。

 テレワークとフレックスタイム制をあわせて導入したい企業のねらいは、労働者の働き方に更なる柔軟性を持たせることだと思います。

 多様な働き方が可能な企業として、就活市場で人をひきつけるアピールポイントにしたり、離職防止や業務効率性(生産性)を高めたりということを図っているのでしょう。

 テレワーク導入には、機器の利用手順・通勤手当など諸手当の見直し・テレワーク対象者・テレワーク対象とする業務など、決めなければならないことが非常に多いです。

 あまり勤怠管理の手法に時間をかけたくないという場合は、サービスツールを利用するのが良いでしょう。

 テレワークの勤怠管理手法には大きく次の3つに分けられます。

  • 勤怠管理システムを導入しシステム上で行う
  • 始業・休憩・終業をチャットや電話で連絡する
  • 業務中のパソコン画面を確認する

 これらのサービスツールを紹介していきます。(料金や機能などは2021年2月1日時点の情報に基づきます)

 「ジョブカン勤怠管理」は勤怠管理に特化したツールで、GPS打刻や各チャットツールからの打刻が可能です。

 また、勤怠情報の集計も可能ですので、勤怠管理から給与計算への必要情報の受け渡しをスムーズに行うことができます。

 10名利用時の費用:2000円~/月

 「ジョブカン勤怠管理」の公式サイトはこちら。

 「Chatwork(チャットワーク)はその名の通りチャットツールですが、ビデオ通話・ファイル共有・タスク管理機能を備えており、テレワークに最適なチャットツールの1つだといえます。

 勤怠管理に関して言えば、勤怠報告用のグループチャットを作成し、そこで始業・終業の報告を行ってもよいでしょう。

 また、「エンタープライズプラン」であれば、IP・モバイル端末ごとのアクセス制限をかけることができるため、不正申告の防止などにも役立ちます。

10名利用時の費用:

ビジネスプラン:5000円/月
エンタープライズプラン:8000円/月

※いずれも年間契約の場合の価格

 「Chatwork」の公式サイトはこちら。

 「F-Chair+(エフチェアプラス)」は部下のパソコンにインストールすることで、ワンクリックの時間記録や作業画面の自動撮影(スクリーンショット)、同僚の在籍状況確認などを可能にするサービスです。

 勤怠管理にはワンクリック時間記録を用いて、業務中もランダムに画面のスクリーンショットを撮られることで緊張感をもって取り組むことができます。

 10名利用時の費用:10000円/月

 「F-Chair+」の公式サイトはこちら。

 「Team Viewer」は職場のパソコンにインストールすることで、職場のパソコンを労働者のパソコンやスマホから遠隔操作を行い業務できるようにするサービスです。

 勤怠管理を主としたサービスではありませんが、上司などの管理者はテレワーク勤務者のパソコン画面を見るだけで今どのような仕事をしているかがわかります。

 10名利用時の費用:28167円/月※年間契約

 「Team Viewer」の公式サイトはこちら。

 もし既に勤怠管理システムやサービスを利用している場合は、テレワーク勤務についての対応をサービスデスクに確認した方が良いでしょう。知らなかった機能があるかもしれません。

 新たに導入する場合は、勤怠管理をメインとするのか、コミュニケーションツールとしても使うのか、在宅での業務をサポートすることに注力するのかを考えてみましょう。

 その上で、労働者と経営者が双方納得する無理のない管理手法を選択するのが理想です。