クラウドファンディングを進める企業にかかる税金は タイプ別に解説
クラウドファンディング(CF)で資金を集めて、新商品開発や新プロジェクトを進める中小企業が増えています。しかし、集めた資金などに課せられる税金は、CFの種類ごとに異なります。CFのタイプ別に、必要な税負担や控除対象、注意点やリスクを解説します。
クラウドファンディング(CF)で資金を集めて、新商品開発や新プロジェクトを進める中小企業が増えています。しかし、集めた資金などに課せられる税金は、CFの種類ごとに異なります。CFのタイプ別に、必要な税負担や控除対象、注意点やリスクを解説します。
目次
CFが資金調達の新たな手法として注目を集めています。CFとはCrowd(群衆)とFunding(資金調達)を組み合わせた造語になります。資金が必要な者(以下「資金調達者」)がインターネット上のプラットフォームを経由して、資金を持っている者(以下「資金提供者」)に呼びかけて、資金を集める方法です。
中小企業の資金調達は、金融機関からの借入や社債発行による方法がほとんどでした。一部のスタートアップ企業ではベンチャーキャピタル等から資金を調達することもありましたが、それはごくまれな例です。
しかし、CFの環境が整うことで、全国の企業の大半を占める中小企業でも、資金提供者から直接資金を調達できるようになります。実際に、ツギノジダイでも、CFの活用事例やインタビューが掲載されています。
また、私のクライアントである中小企業でもCFを実施したところがあります。そこはサービス業で、新型コロナウイルス感染拡大の影響による売上減からの回復の一手として、新規サービスを始めるための設備資金の一部を、CFで調達できました。その際、経営者の方からは税務会計上の処理方法や、目標金額の設定について相談を受けております。
CFの概念は古くからあったとされ、例えば1180年に、焼失した奈良の東大寺大仏を再建する際に、広く資金を募ったという記録が残っています。
なお、国内の市場規模は拡大しており、日本クラウドファンディング協会によると、購入型CFを手掛ける大手7社の2020年の1~6月の合計決済金額は、223億円に達し、前年同期比3倍へと急成長しました。
CFには大きく分けて、購入型、寄付型、投資型の3種類があります。それぞれの特徴を理解して、どの手法を活用するべきか検討が必要です。
購入型は予約販売の一種と考えられます。資金調達者は資金提供者から事前に資金を受け取り、完成時にモノまたはサービスの提供をします。先行して資金を得ることができ、販売数量も見込めることから、新商品開発の資金調達として利用されることが多いです。
なお、募集方法は2種類あります。目標金額に達成しなかった場合は、すべてキャンセルとなって返金するオール・オア・ナッシングと、申し込みがあった分は受け取り、その分モノ・サービスの提供を行うオールインです。これらについても目的に応じて選択する必要があります。
寄付型は、文字通り寄付を募る形です。資金提供者に対してモノやサービスの提供はありませんが、お礼など(サンクスレターや活動報告書等)をつける場合がほとんどです。性格上、公共性が高い内容が多いです。
投資型は貸付型、ファンド型、株式型の3種類に分けられます。なお、いずれの種類も金融商品取引法の規制対象です。
・貸付型
資金提供者から資金を募り、資金調達者に貸付ける仕組みです。資金調達者から見れば借入金なので、元本の返済と利息の支払いをします。通常は、金融機関からの借入より高い利率が設定されています。
・ファンド型
資金提供者から出資を募り、プラットフォームを通じてファンドを組成します。資金調達者はその出資で事業を行い、事業で得られた利益を分配します。
・株式型
資金提供者に株式を買ってもらい、株主となってもらう方法です。資金調達者は利益から配当金を支払い還元します。借入ではなく、出資してもらう形式の為、連帯保証がなく長期で返済不要の資金が調達できるのが、大きな特徴です。
購入型については前章で説明した通り、予約販売となりますので、資金を受け取った段階では前受金として計上。モノ・サービス提供時に売上処理されます。
なお、資金調達者が法人である場合については、どのような形で利益が発生しても、すべて法人税で課税されます。消費税についても、モノやサービスの対価に相当する金額は課税対象です。
モノやサービスを提供すると経費も発生します。商品であれば仕入、製造であれば材料費・外注費等、通常の取引と同じ考え方で、これらの経費は控除対象となります。それに加え、プラットフォームへの手数料(概ね15~20%)が発生しますので、その金額も控除対象です。
購入型で資金を調達する際は、オール・オア・ナッシングかオールインかの選択が大事です。新商品開発や新プロジェクトであれば、オール・オア・ナッシング。既に実現可能なプロジェクトなどの補完であればオールインが適していると考えられます。
また、目標金額の設定には逆算の思考が有効です。オール・オア・ナッシングでは目標金額を設定する際に、金額に応じた最低販売数量が見込めるため、事前に原価や手数料を算出し、そこから逆算した金額を設定できます。
加えて、CFの期間や、成立後にいつ資金が資金調達者に届くかも、事前に確認が必要です。
寄付型の利用を考えている方に向けて、課税される税金の注意点などについて説明します。
個人から寄付を受ける形になるので、受増益として収益に計上されます。最終的な利益に対して法人税が課税されます。消費税はモノやサービスの提供が無いため、課税対象外です。法人からの寄付でも、個人からの場合と同様の処理方法になります。
通常、消費税については課税対象外ですが、お礼に対価性(グッズなど販売されているようなもの)があると判断されると、その部分については購入型と同じく消費税が課税されます。また、資金提供者側から、寄付金控除の適用の有無について確認される事が想定されるので、注意が必要です。
投資型に課せられる税金についても、タイプ別に整理しました。
借入なので、調達した資金は売上ではなく借入金として計上します。元本の返済は借入金の減少、利息部分は支払利息として費用に計上します。
出資なので、調達した資金は売上ではなく資本金として計上。収益の分配は、法人税等を支払った後の税引き後利益から配当として計上されます。株式型も、原則ファンド型と同じ処理方法です。
今までのおさらいとして、資金調達者が知っておくべき税務・会計上の取り扱いを、CFのタイプ別に表でまとめました。
購入型や寄付型を利用する場合のリスクを挙げるとすれば、調達した資金は売上や利益に計上され、消費税も課税される場合がありますので、税負担を考慮しておく必要があります。また、CF後の事業についても、資金提供者から推移を見られている、という意識が必要です。
メリットとしては、資金を先行して調達できる可能性があり、事前にある程度の売上が見込め、在庫リスクを抑えられること、広告宣伝効果が見込めることなどがあります。
実際にCFを利用した後継者の方からは、「挑戦することで資金を得た部分はもちろん、自社がどのような企業を目指しているかが言語化でき、それに対して多くの方から賛同を得られたことが、何よりも自信になり、会社の在り方が明確になった」という声もありました。
前章までに述べたように、種類によって調達した資金に対する税務の取り扱いは異なります。また税金や手数料を考慮すると、調達した金額すべてを使えるわけではありません。中小企業経営者、後継者の皆さんが、CFの活用を考える際は、事前に専門家に相談・確認することをお勧めします。
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