事業再構築補助金の採択率を上げる事業計画とは 審査のポイントを解説
事業再構築補助金とは、これからの時代に合わせた事業転換や新しい分野に進出するのを支援する補助金です。助成額が最大1億円のため注目が集まっており、2021年3月26日に公募要領が公表されました。採択されるために欠かせない事業計画とはどんなものでしょうか。公募要領をもとに、採択のためのポイントを紹介します。
事業再構築補助金とは、これからの時代に合わせた事業転換や新しい分野に進出するのを支援する補助金です。助成額が最大1億円のため注目が集まっており、2021年3月26日に公募要領が公表されました。採択されるために欠かせない事業計画とはどんなものでしょうか。公募要領をもとに、採択のためのポイントを紹介します。
目次
事業計画書とは、事業再構築補助金を審査する上で最も大切な書類の一つです。中小企業庁によると、補助金の審査は、事業計画をもとに行われます。そのため、採択されるには、合理的で説得力のある事業計画をつくる必要があります。
事業再構築補助金の採択率を上げるためには、よく審査項目を読み込んで、必要なポイントをもれなく書き込むことが欠かせません。ただし、事業計画書は15ページ以内が目安ですので、長く書けば良いわけではありません。
審査項目は、事業再構築補助金に採択されるために最も注意して読むべき項目です。公募要領では、審査項目と加点項目で5つを挙げています。問われている内容が自社でどのように説明できるかと考えながら、事業計画書を書くことをお勧めします。
補助対象事業の申請要件を満たすか。補助事業終了後3~5年計画で「付加価値額」年率平均3.0%(グローバル V 字回復枠については 5.0%)以上の増加等を達成する取組みとなっているか。
①事業再構築補助金の目的に沿った事業実施のための体制(人材、事務処理能力など)や最近の財務状況等から、補助事業を適切に遂行できると期待できるか。また、金融機関等からの十分な資金の調達が見込めるか。
②事業化に向けて、競合他社の動向を把握することなどを通じて市場ニーズを考慮するとともに、補助事業の成果の事業化が寄与するユーザー、マーケット及び市場規模が明確か。市場ニーズの有無を検証できているか。
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③補助事業の成果が価格的・性能的に優位性や収益性を有し、かつ、事業化に至るまでの遂行方法、スケジュールが妥当か。補助事業の課題が明確になっており、その課題の解決方法が明確かつ妥当か。
④補助事業として費用対効果(補助金の投入額に対して増額が想定される付加価値額の規模、生産性の向上、その実現性等)が高いか。現在の自社の人材、技術・ノウハウ等の強みを活用することや既存事業とのシナジー効果が期待されることなどで、効果的な取り組みとなっているか。
①事業再構築指針に沿った取組みであるか。また、まったく異なる業種への転換など、リスクの高い、思い切った大胆な事業の再構築を行うものであるか。
② 既存事業における売上の減少が著しいなど、新型コロナウイルスの影響で深刻な被害が生じており、事業再構築を行う必要性や緊要性が高いか。
③ 市場ニーズや自社の強みを踏まえ、「選択と集中」を戦略的に組み合わせ、リソースの最適化を図る取組であるか。
④ 先端的なデジタル技術の活用、新しいビジネスモデルの構築等を通じて、地域のイノベーションに貢献し得る事業か。
①先端的なデジタル技術の活用、低炭素技術の活用、経済社会にとって特に重要な技術の活用などを通じて、我が国の経済成長を牽引し得るか。
②新型コロナウイルスが事業環境に与える影響を乗り越えて V 字回復を達成するために有効な投資内容となっているか。
③ニッチ分野において、適切なマーケティング、独自性の高い製品・サービス開発、厳格な品質管理などにより差別化を行い、グローバル市場でもトップの地位を築く潜在性を有しているか。
④地域の特性を活かして高い付加価値を創出し、地域の事業者等に対する経済的波及効果を及ぼすことにより雇用の創出や地域の経済成長を牽引する事業となることが期待できるか。
⑤異なるサービスを提供する事業者が共通のプラットフォームを構築してサービスを提供するような場合など、単独では解決が難しい課題について複数の事業者が連携して取組むことにより、高い生産性向上が期待できるか。また、異なる強みを持つ複数の企業等(大学等を含む)が共同体を構成して製品開発を行うなど、経済的波及効果が期待できるか。
①2021年の国による緊急事態宣言に伴う飲食店の時短営業や不要不急の外出・移動の自粛等により影響を受けたことにより、2021 年 1 月~3 月のいずれかの月の売上高が対前年(又は対前々年)同月比で 30%以上減少していること。
②上記①の条件を満たした上で、2021 年 1 月~3 月のいずれかの月の固定費(家賃+人件費+光熱費等の固定契約料)が同期間に受給した協力金の額を上回ること。
事業計画書に審査項目を落とし込むときにとくに気を付けたい要素は次の通りです。
たとえば、審査に携わる専門家が注目するのが、①に関わる「市場分析」です。つまり、出店する場合は、その店に顧客が足を運ぶ理由について、その地域の特性や主な年齢層などの情報を交えながら、競合他社にどう優位性を維持するのかを説得力を持たせて解説する必要があります。
たとえば、メーカーが申請する場合は、売り手が決まっている、売り手と相談を始めている、内諾頂いていると説得力が増します。売り手がいることで、市場ニーズがはっきりしていることを示せるからです。
経産省の「事業再構築指針」(PDF方式:168KB)によると、「事業再構築」とは、次の5つのいずれかに当てはまる必要があります。
この5つのいずれかを実施するときに必要なのが「製品等の新規性要件」、「市場の新規性要件」です。
製品等の新規性要件を満たすためには、次の4つを事業計画書で満たす必要があります。
市場の新規性要件を満たすためには、既存製品等と新製品等の代替性が低いことを事業計画において示す必要があります。
加えて、既存製品等と新製品等の顧客層が異なることを事業計画において示す場合には、審査において、より高い評価を受けることができる場合があります。
これまでの編集部による取材のなかでも「新規性要件」に該当するかを心配する声は多く挙がっています。
過去に作っていたものを拡大するだけでは、審査で「新規性がない」と判断されてしまいます。そのため、いまの事業とどう違うか説明を工夫する必要があります。
事業再構築のための事業計画は、認定経営革新等支援機関と一緒につくる必要があります。認定経営革新等支援機関には、地銀や全国の商工会議所などが含まれています。中小企業庁の認定経営革新等支援機関の検索サイトから探すことができます。事業再構築補助金は、ものづくり補助金と共通する部分もあります。そのためものづくり補助金の支援実績のあるところがヒントになります。
事業計画書を書く上で「わかりやすさ」も大切です。審査する人は、個別の企業の専門家ではありません。専門用語がわからず苦労することがあるためです。そこで「高校生や中学生に説明するような形で、写真、グラフや図をきちんと使っていただいた方が良いと思います」と勧めています。
事業再構築補助金は、助成金と異なり、要件を満たし、これまで中小企業庁が示した事例に沿っていれば通るものではありません。
公募要領では「事業者自身による申請」を求めています。悪質な業者、高額な成功報酬で問題になっているケースもあるため、契約書をきちんと確認するよう呼びかけました。
事業開始後、士業に相談するときの報酬は、事業再構築補助金の対象経費になりますが、事業計画書づくりを支援するコンサルタントへの報酬は対象経費ではありません。
中小企業庁は、よくある問い合わせ内容に対する回答を中小企業庁のサイトに掲載しています。
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