認知度ゼロから始めたコーヒー豆専門店 強みを伝えるのは“こども“から
高品質で際立った風味をもつ「スペシャルティコーヒー」を取り扱うコーヒー豆専門店が岐阜県大垣市にあります。オープン当初は認知度がなく、課題を感じていました。しかし、店の強みを広く知ってもらおうと「こども向け商品」を始めたところ、売れ筋商品となりました。商品開発と資金調達、認知度アップまでを支援した大垣ビジネスサポートセンター(Gaki-Biz)からご紹介します。
高品質で際立った風味をもつ「スペシャルティコーヒー」を取り扱うコーヒー豆専門店が岐阜県大垣市にあります。オープン当初は認知度がなく、課題を感じていました。しかし、店の強みを広く知ってもらおうと「こども向け商品」を始めたところ、売れ筋商品となりました。商品開発と資金調達、認知度アップまでを支援した大垣ビジネスサポートセンター(Gaki-Biz)からご紹介します。
2018年10月1日にオープンした「焙煎幸房そら」は、スペシャルティコーヒーを取り扱い、注文をいただいてから焙煎するこだわりのコーヒー豆専門店です。
代表の岩田純さん(30)が最初にGaki-Bizに相談に訪れたのは、オープンから3日後でした。当時は商工会議所が主催する創業塾に参加するなど、経営者として勉強中でした。ただし、オープン前に店の存在を周知できていなかったため、認知度ゼロのままオープンしたことに課題を感じていました。
まずはしっかりと岩田さんの事業や経緯について、聞きました。岩田さんは有名チェーンの飲食店で勤務をしていましたが、コーヒー好きが高じて、脱サラし、住宅街に位置する自宅敷地内に小さなコーヒー豆の店をオープンさせました。ご自身が美味しいコーヒーに出会ったことで、コーヒーの概念が変わり、脱サラをして自宅敷地内に念願のプレハブの小さな店を建てました。
厳選した世界各地14種類の生産者の顔までわかるスペシャルティコーヒーと呼ばれる高品質で特徴的な味わいを持つコーヒーを扱う専門の店にしたのだと。このこだわり抜いたスペシャルティコーヒー専門店を知ってもらい、売上アップにつながるアイデアがないかという相談内容でした。
著者の個人的なことを申し上げると、実はコーヒーが苦手で、スペシャルティコーヒーと言われても正直ピンとこなかったのと、コーヒーをメインにする店の多くは、「厳選したこだわり」のコーヒーを取り扱っていることや、「オリジナルブレンド」を売りにしているイメージがありました。
そこで、私自身、コーヒーの香りや味は好きですが、カフェインが体に合わないのであえて飲まないということを相談中に話しました。
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すると、岩田さんからは「カフェインレスも美味しいものを扱っています」という返事が返ってきました。
カフェインレスというと、コーヒーが提供される喫茶店やカフェで取り扱われることが欧米と比べてまだ少ないのです。そして、取扱いがあっても、「とりあえず」の1種類を用意している程度の店が多かったことを私自身が体験していました。そこで、岩田さんの「こだわりのカフェインレス」というキーワードに着目し、お店の強みになる可能性があると仮説を立てました。
岩田さんと一緒になってリサーチした結果、健康ブームが広がるなか、コーヒー以外のカフェインレス商品の増加に加え、カフェインレスコーヒーの輸入量が増えていたことを背景に、「こだわりのカフェインレスコーヒー」を切り口にして、店のPRへとつなげることにしました。
よりわかりやすくこの強みを伝えるために商品化を提案し、岐阜県に根付いている週末は家族でモーニングに行く文化や、その際に大人が飲むコーヒーを真似して飲みたがるこどもがいることを背景に、こどもにターゲットを絞り、カフェインレスの安心感へもつなげることにしました。
また、同様のシーンとして、「こどもびいる」というパッケージデザインがまるでビールのようなリンゴ味の炭酸飲料が商品化されていて、大人が楽しむイメージが大きいビール祭り会場で、家族連れにこの商品が良く売れていたのを根拠にして商品提案をさせていただいたのが、新商品の「こどもコーヒー」です。
さっそく、商品化の検討を進めてもらいましたが、そもそも開店して間もない客が少ないお店です。ある程度のロット生産が必要な新商品開発のための資金余力はありませんでした。
ここでさらなる提案をしたのが、クラウドファンディングを活用したテストマーケティングと先行販売を兼ねた資金調達です。クラウドファンディングでは、NPO法人を通じてこどもコーヒー1本につき、15円を東アフリカの給食費として寄付することも明らかにしました。結果、製造の最低ロットに合わせた目標の30万円を超え、リスクを負うことなく、投資ゼロで商品化の実現と同時に販売先まで確保ができました。
オリジナル性の高い「こどもコーヒー」やクラウドファンディングの挑戦について、数多くの新聞やテレビメディアなどで取り上げられました。こどもが飲めるほどの美味しいこだわりの安心・安全なカフェインレスコーヒーを切り口に、店のPRに繋がり、売上アップに貢献する新商品となりました。
その後、喫茶店への卸販売につながったり、ふるさと納税の返礼品に選ばれて400品以上の登録商品中ベスト5に入る売れ筋になる商品が誕生したりと、周知だけでなく、大垣市を代表する店という地位の確立もできたのではないでしょうか。
最近では、売上も順調に推移していることもあり、コンテナを活用した店舗導入で拡張し、こどもコーヒーはさらなる商品ブラッシュアップをかけ、都内での販売展開も挑戦中です。
事業者の強みとなり得る可能性に気付き、トレンドやブームの背景を読み取り、掛け合わせることで、新しいアイデアを生み出した事例のご紹介でしたが、「好き」を仕事にしたことで学ぼうとする向上心を常に持っている、焙煎幸房そらのオーナー「岩田さん自身」が一番の強みだったのかもしれません。
大垣ビジネスサポートセンター(Gaki-Biz、岐阜県大垣市)は、2018年7月に大垣地域経済戦略推進協議会が地域での雇用や新しい産業の創出を促進するとともに、地元の頑張る中小企業を支援するために全国初となるCSR型(企業の社会貢献)のビズモデル型支援センターとして開設されました。「お金をかけずに売り上げをアップ」するために知恵を出し、伴走型のサポートをする無料の相談所です。
「withコロナ」時代に、新しい挑戦をやりやすくするためには、まずはお金ではなく「知恵」と「アイデア」を活用し、できるだけリスクを低くしていきたいものです。さらにこれからの時代、中小企業だからこそ世界の問題を自分事と捉え、SDGsの視点を持った活動が求められると感じています。
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