目次

  1. 障害者雇用とは 法定雇用率は引き上げ
  2. 法定雇用率満たしていないと納付金
  3. 障害者雇用の流れ
  4. 在宅勤務を導入したスタッフサービス・クラウドワーク
  5. 障害者の在宅勤務での業務内容
  6. これまでの障害者雇用の課題
  7. 在宅勤務を始めて見えてきた新たな課題とは
  8. 働きやすい在宅勤務のための5つの工夫
    1. 生活スタイルを守る
    2. ソーシャルスキルの向上
    3. チームワーク運営
    4. 働きがいづくり
    5. サポート体制
  9. 在宅勤務の成果
  10. 障害者雇用の助成金
    1. トライアル雇用助成金(障害者トライアルコース)
    2. トライアル雇用助成金(障害者短時間トライアルコース)
    3. 特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)
    4. 特定求職者雇用開発助成金(発達障害者・難治性疾患患者雇用開発コース)
    5. 特定求職者雇用開発助成金(障害者初回雇用コース)

 すべての事業主は、従業員の一定割合(=法定雇用率)以上の障害者を雇用することが義務づけられており、これを「障害者雇用率制度」といいます。民間企業はこれまで2.2%でしたが、2021年3月からは2.3%に引き上げられました。

 厚生労働省によると、2019年6月時点で、民間企業で働いている障害者は56.1万人おり、16年連続で過去最高を更新しています。実雇用率(常用労働者に占める、障害者の割合)は2.11%、障害者雇用率を達成した企業の割合は48%に上っています。

 常用労働者が100人を超え、法定雇用率を満たしていない事業主は納付金を支払わないといけません。その一方、障害者を多く雇用している事業主には調整金、報奨金や助成金が支給されます。これを「障害者雇用納付金制度」といいます。

 調整金や納付金の計算方法は以下の通りです。

障害者雇用における調整金や納付金の計算方法(厚労省のパンフレットから引用)

 障害者を雇用しようとなると、どのように進めれば良いでしょうか?厚労省は障害者雇用の流れを次のように紹介しています。

  1. ハローワークへの相談、現場見学を通じて障害者雇用の理解を深める
  2. 地域障害者職業センターなどに相談しつつ配置部署や従事する職務を決める
  3. 指導担当者を選び、事務所を改造するなど受け入れ体制を整え、労働条件などを決める
  4. 採用活動と助成金の申請
  5. ジョブコーチ支援の活用など職場定着

 障害者雇用の課題の一つが、安定して雇用を続けられるかです。では、実際に身体障害者の職場定着はどのように進めているのでしょうか。

 在宅勤務を活用し、2府27県で301人を雇用しているスタッフサービス・クラウドワークのエリア統括部のゼネラルマネージャーの岡崎正洋さんに聞きました。

岡崎正洋さん

スタッフサービス・クラウドワーク エリア統括部 ゼネラルマネージャー

2003年にスタッフサービス人事部門に入社。2015年 9 月より通勤困難な重度身体障害者の在宅就労事業の立ち上げに参画。九州・近畿・関東・東北の採用拠点を立ち上げ、現在は、全国に 300 人を超える重度身体障害者がテレワークでの就労を支援。

 在宅勤務では、次のようなスタッフサービスのグループ内からの受託業務を担当しています。

  • 手書きデータのエクセル入力やエクセルの情報のシステム登録作業
  • システムに登録されている情報の更新や修正
  • 求人サイトなどからの情報収集業務

 このほか、グループ外からも年齢や障害の有無にかかわらずWEBサイトなどが利用しやすいかを調べる「アクセシビリティの検査」を請け負っています。

 採用活動を進めていくなか、毎日の通勤となると、身体能力的に働き続けるのがむずかしい人や、障害特性とオフィスのバリアフリー環境がマッチしないなど、やる気やスキルがあっても採用を見送らざるを得ない人をたくさん見てきました。

  そこで、通勤を前提とする働き方が重い障害がある人にとって就労の壁となっていたことが課題だと感じ、完全在宅型テレワークという新しい働き方を導入しました。

 実験的にテレワークをして見えた課題は、仲間と一緒に働いている実感が持てない、孤独感によるストレスでした。これを解決しないと、在宅社員が定着しづらいと感じました。

 そこで事務所に集まって働いているような、連帯感のある組織を完全在宅でもつくろうと考えました。

 在宅勤務でも、連帯感のある組織をつくるために次の5つの工夫をしました。

 重度障害者には、生活を支えるヘルパーさんの介助や通院の時間が必要です。そのため、時間変更が非常に難しいのです。そこで、9~19時の間で、週30時間の就労ができるならば、始業時間・就業時間・休憩時間を各自が自由に設定できる柔軟なシフトを導入しました。

勤務時間の例(スタッフサービス・クラウドワーク提供)

 入社したばかりだと、テレワーク環境でのコミュニケーションの経験がなく、また社会経験が少ない人も多いので、仲間とのコミュニケーションや連携に不安があります。

 そこで、入社後2カ月は、実務に配属せず、テレワークでのコミュニケーションに慣れることに主眼を置いた研修をしています。

 孤独感の解消だけでなく、安定的に受託業務をこなせるよう、在宅社員同士の連携を生むことが必須と考えました。そこで業務ごとに5~15人のチームに分け、1日3回、それぞれ20分のミーティングをしています。

 そのなかで、業務進捗を共有するだけでなく、雑談することをルール化し、お互いの状況(体調、パーソナリティ)を知り合える環境を作っています。これにより、在宅でおこなっている仕事の不安感や孤独感を解消でき、お互いをサポートしあえるチーム連携のベース作りができました。

 働きがいづくりとして取り組んでいるのが「活躍の場を広げる」ことです。在宅社員の可能性を広げるため、彼らの能力や個性を見ながら職域を徐々に拡げています。

 はじめは受託作業からはじまります。つぎに、新人研修、マニュアル作りなどチームを運営する仕事、そして、社内イベント運営、社内報作成など組織全体にかかわる仕事へと徐々に業務の中心化と職域の幅を広げています。

職域拡大のイメージ(スタッフサービス・クラウドワーク提供)

 そのほかにも、ありがとうの言葉をカードにしてやり取りをするオンラインサービスの導入、年1回のリアルに会って話し合えるエリアミーティングの開催(今期は新型コロナのため、300人がオンラインで参加できるイベントを開催)、社内報の作成、全従業員オンライン参加型社内イベントなど仲間や会社との距離感を縮める工夫もしています。

 東北、関東、近畿、九州の各エリアに3~8人のサポートスタッフが駐在し、緊急時(PCトラブル、緊急時など)の訪問や面談、エリアの支援機関などとの連携づくりのほか、採用選考時から自宅に訪問し、個々の状況把握をしています。

 あわせてサポートスタッフには在宅社員とのより良い関係性を築けるよう、WEB会議ならではのコミュニケーション研修を体系立てて実施しています。

 在宅勤務の成果として、入社1年時点の定着率が97%となりました。高齢・障害者雇用支援機構(JEED)の「障害者の就業状況などに関する調査研究」によると、身体障害者の1年目の定着率の平均は60.8%といい、これと比べると非常に高い定着率となりました。入社2年で92.9%、入社3年で90%と、その後も極端に落ちていません。

障害者の雇用定着率(スタッフサービス・クラウドワーク提供)

 さらに、2府27県と地方の就業機会をつくることができ、就業可能な障害や疾病の幅も広げることができました。その結果、日本テレワーク協会主催のテレワーク推進賞会長賞も受賞することができました。

 さて、上記の事例を参考に障害者雇用を検討する企業向けに5つの助成金を紹介します。

 就職が困難な障害者を、ハローワークなどの紹介により、一定期間試行雇用を行う事業への助成です。

 精神障害者以外の場合は、1人につき月額最大4万円(最長3か月間)です。精神障害者の場合は、1人につき3か月間は月額最大8万円、4か月目以降は月額最大4万円(最長6か月間)です。

 直ちに週20時間以上勤務が難しい精神障害者や発達障害者について、3~12か月の期間をかけながら20時間以上勤務を目指す事業主への助成です。1人につき月額最大4万円(最長12か月間)です。

 障害者などの就職困難者を、ハローワークなどの紹介により、継続して雇用する労働者として雇い入れた事業主への助成です。身体・知的障害者(短時間労働者以外)である場合は、大企業で50万円(1年)、中小企業で120万円(2年)です。

 重度障害者、45歳以上の障害者、短時間労働者以外の精神障害者の場合は、大企業で100万円(1年6か月)、中小企業で240万円(3年)です。短時間労働者の場合は、大企業で30万円(1年)、中小企業で80万円(2年)です。

 発達障害者や難治性疾患患者を、ハローワークなどの紹介により、継続して雇用する労働者として雇い入れた事業主に対して助成されます。

 短時間労働者以外である場合は、大企業で50万円(1年)、中小企業で120万円(2年)です。短時間労働者である場合は、大企業で30万円(1年)、中小企業:80万円(2年)です。

 障害者雇用の経験がない中小企業で、雇用義務制度の対象となるような障害者を初めて雇用し法定雇用義務を達成する事業主への助成です。助成額は 120万円です。