目次

  1. ユーザビリティテストとは
  2. ユーザビリティテストのやり方 8つの手順で紹介
    1. 手順① ユーザビリティテストの内容・項目を決める
    2. 手順② 被験者を探して決める
    3. 手順③ 製品を試用してもらう
    4. 手順④被験者からフィードバックをもらう
    5. 手順⑤要望リストを整理する
    6. 手順⑥開発計画に反映させる
    7. 手順⑦製品に反映させる
    8. 手順⑧被験者からの評価を受ける
  3. ユーザビリティテストを実施する上でのポイント
    1. マーケティングと並行して行う
    2. 被験者の何気ない感情を見逃さない
    3. 継続的な改善活動として実施する
  4. ユーザビリティテストの費用
  5. ユーザビリティテストを通した顧客との共創が大切

 ユーザビリティテストとは、開発中の製品・サービスをユーザーに利用してもらい、より優れたUI/UXを目指す方法です。

 リリース前の製品・サービスの特性に合わせてテスト内容を決め、実際にユーザーに製品・サービスを利用してもらい、そこで得られた気付きを改善につなげます。

 また、製品・サービスの存在意義は、製品・サービスがターゲットとしているユーザーが抱いている課題の解決です。

 製品・サービスの改善ができれば、課題解決に貢献している事業者とみなされ、事業競争力は自ずと高まります。新規ユーザーの獲得や既存ユーザーの満足度向上も期待できるでしょう。

 ユーザビリティテストは、単なる製品・サービスの改善施策ではなく、ユーザーへの提供価値向上によって、製品・サービスのマーケティングを前進させられる優れた方法論なのです。

 ユーザビリティテストの具体的な手順は、以下の8項目です。

  1. ユーザビリティテストの内容を決める
  2. 被験者を探して決める
  3. 製品を試用してもらう
  4. 被験者からフィードバックをもらう
  5. 要望リストを整理する
  6. 開発計画に反映させる
  7. 製品に反映させる
  8. 被験者からの評価を受ける

 実施方法としては、同じ部屋で対面型で行う方法や、LINEやメールなどのコミュニケーションツールを用いて行う方法など、様々な方法があります。

 また、定性的ユーザビリティテストや定量的ユーザビリティテストなど、ユーザビリティテストの実施の仕方や内容についても、事前に検討をしておく必要があります。

  • 定性的ユーザビリティテスト:純粋な感想を聞くための検査手法
    実際の利用シーンを明確に想定できる点などがメリットだが、狙いを明確に定めてから実施しないと、何を確認したかったかがぼやけるリスクがある点に注意。製品・サービスの利用に当たって、様々な利用の可能性を模索したいときや、ありのままの状態を観察して改善に活かしたいときに向いている
  • 定量的ユーザビリティテスト:特定の検査項目を事前に決めて、数量化できる検査手法
    数値で状況が明確になるので改善点がわかりやすい点がメリットだが、その数値が実際の使いやすさや利便性につながるかどうかは別途検討が必要な点に注意。宣材に盛り込むことで調査結果を公表したいときや、提案資料に盛り込みたいのときに向いている

 あわせて、ユーザビリティテストを実施するに当たっての役割も決めておくと良いでしょう。

 ユーザーに対してヒアリングを行うインタビュアーや、そのインタビュー内容を記録する記録担当者、被験者、これらヒアリング内容を観察するオブザーバーなど、様々な役割があります。

 このように、ユーザビリティテストの実施に当たって、5w1h(誰に、何を、いつ、どこで、どんな内容で行うのか)についての計画を、事前に決めておくことが重要です。

 以下に具体例をあげておきますので、参考にしてください。

ユーザビリティテストの内容 具体例
誰に 自分の妻に
何を 化粧水のサンプルを
いつ 夜お風呂に入った後に
どこで お風呂場の前の洗面所で
どんな内容で 取扱説明書に従って

 計画を立てたら、被験者になってくれる候補者を探す必要があります。

 ユーザビリティテストを行うに当たって、テストの特性を考慮した上で、候補者に適している方を探す必要がある点に留意しましょう。

 具体的には、製品・サービスの利用者として想定しているペルソナに近い方を被験者として採用し、ユーザビリティテストを実施する方法が良いと思います。

 その方が普段どのように製品・サービスを利用しているのかがわかってくると、製品・サービスの改善方法についての知見を得ることにつながるはずです。

 被験者の採用方法については、公募する方法もありますが、リリース前の製品の場合、情報を極力外部に出したくない場合も多いかもしれません。

 関係者の親族など、近親者から採用を行う方法が手軽にできてオススメです。

 被験者の採用が終わったら、今度は実際に製品・サービスを試用してもらうフェーズに入ります。

 実施の方法としては、被験者を呼び寄せて、その場で試用をしてもらう方法や、被験者に製品・サービスを送ったり利用できる状態をつくって、利用してもらう方法があります。

 実際にユーザーに製品・サービスを使ってもらうことを通して、不具合などの問題の特定に役に立つ場合もありますし、試してもらうものがサービスの場合には、サービス提供時の流れを確認・整理することができます。

 製品の試用にあたっては、製品・サービスの料金は基本的にはいただかない場合も多いと思いますが、高価な製品・サービスの場合には検討が必要になる項目です。

 製品・サービスを試用してもらったら、ユーザーから「どんなところが良かったか」「使いづらい点はなかったか」などのフィードバックをもらいます。

 従来の方法としては、アンケートやインタビューがあります。

 最近では、LINEやメール、チャットツール、Googleフォームなどのアンケートフォームなどを利用し、遠隔でフィードバックを募る方法もよく利用されるようになってきました。

 それぞれのメリット・デメリットと実施のポイントをあげますので、どの方法がよいか選ぶときにご活用いただければと思います。

方法 メリット デメリット 実施のポイント
アンケート(対面)

・何気ない会話を挟めることから、様々な情報を吸い上げることができる
・昔ながらのやり方で、どんな世代にも違和感なく受け入れてもらいやすい

・集計するためにアンケート用紙を一か所に集約する必要があるなど、集計の手間が増える
・交通費など、移動の手間もかかる

・アンケート用紙を集約するオペレーションが大変なので、連絡を密に取り合うことが大切
アンケート(Web)

・ユーザーからの情報を直接コミュニケーション媒体に記録でき、記録の手間を削減できる
・試験地や場所による制約がないため気楽に実施できる
・集計もツールにより自動化されていることが多く、手間がかからない

・高齢層など、調査対象者層によっては、ITツールに慣れていない可能性がある
・顔が見えないところで実施されるため、被験者の雰囲気や表情などは知ることができない

・被験者のペースにゆだねることになるので、期限を決めて実施すると良い
・アンケートと集客との連携なども検討可能なので、可能性は大きく広がっていく。マーケティング会社やシステム会社と連携して取り組みたい

インタビュー(対面)

・動作や表情など、多くの情報を得ることができる
・記録者、オブザーバー、インタビュアーを分けることで、ユーザビリティテストの精度を上げられる

・移動や集計の手間が増える
・実施時や準備に労力がかかり、予算が膨らみやすい

・実施時の役割分担や準備物などをしっかり準備して行うことが肝心。当日までにリハーサルしておくと良い
インタビュー(Web)

・オンライン会議ツールを利用して実施することで、移動の手間などを大きく削減できる
・記録者、オブザーバー、インタビュアーを分けることで、ユーザビリティテストの制度を上げられる

・画面越しになるため、空気感までは伝わってこない、対面ではわからない雰囲気などがある ・オンラインでのカレンダーや会議ツールを駆使することで、業務の効率性を大きく向上させられる可能性が高い

 フィードバックを取得したら、不具合や要望のリストをそれぞれ作成します。

 改善リストの作成と改善の優先順位付けの工程を分離して、改善リストの蓄積を行うための工程と捉えて実施すると良いでしょう。

 改善リストの作成が済んだら、今度はそれらを開発計画へ反映していく必要があります。

 エンジニアやデザイナーなどの改善タスクに充てられる人的リソースは限られている場合が多いと思いますので、改善項目別に、それらの改善による成果のインパクトを想定して、優先度を設定してスケジュールを立てることが大切です。

 手順⑥で立てた計画にしたがって、製品・サービスを改善します。

 改善を行ったとしても、それらをお客様に届けることができなければ改善効果が得られません。改善の際は、リリースまでに必要な時間を計算して、リリースの周期が短くなるように配慮することが大切です。

 製品・サービスを改善後、再度、被験者に試用してもらい、ユーザー目線で課題が改善されているかどうか確認してみましょう。

 課題が解決できていない場合には、再度手順④に戻ります。

 特にソフトウェア製品の場合には、継続的な改善を実施できますので、改善効果が見られるまで、粘り強く改善を繰り返すと良いでしょう。

 ユーザビリティテストを実施する上でのポイントとして、オススメの3点をお伝えします。

  1. マーケティングと平行して行う
  2. 被験者の何気ない感情を見逃さない
  3. 継続的な改善を意識する

 マーケティングミックス(4P)のうち、製品(Product)を改善するための手法として、ユーザビリティテストがあります。

 しかし、製品のみを改善しても、マーケティングを含めた販売オペレーション全体として考えた場合には、他に改善すべき点が多く存在するかもしれません。

 つまり、製品を改善するだけではなく、販売する場所(Prace)、価格(Price)、販売促進(Promotion)など、マーケティング全体を考える必要があるということです。

 ユーザビリティテストは、それ単独で捉えるのではなく、製品・サービスのマーケティング活動全体の中での施策と捉えて活動してみてください。

 被験者の観察を行うに当たり、利用時の感情を詳細に確認すると、思わぬ発見があるかもしれません。

 被験者には先入観がないため、事前情報を与えられないまま製品・サービスを利用する場合が多いと思います。

 一方、製品・サービスが多くのユーザーに受け入れられるには、それが事前情報がない状態で不都合なく、直感的に利用できるものでなければいけません。

 つまり、被験者から質問が出てくる場合や、動作が止まって考えるような表情をとった場合には、何か改善の余地があるということです。

 ユーザビリティテストは、製品・サービスの継続的な改善活動の一貫と捉えて実施することも重要です。

 継続的改善を促すのに、アジャイル開発手法の一部として、ユーザリティテストを取り入れる方法があります。

 アジャイル開発とは、開発期間を短期間に区切り、継続的・反復的に開発を行ってく手法のことです。

 アジャイル開発におけるプロダクトのテスト段階において、ユーザビリティテストを導入することで、お客様が“今感じている課題”を解決する最適な製品・サービスを迅速に届けられるようになります。

 なお、アジャイル開発については、下記で詳しく解説しています。

 ユーザビリティテストは、知人や友人から集めると費用は安く済ませることができますが、想定するユーザーに近い協力者が集まりにくかったり、関係性によっては、厳しい意見を言いづらいといった側面もあります。このほか、クラウドソーシングを利用して被験者を集める方法もあります。

 専門会社に委託した場合、豊富な知見を生かせる一方で、数十万~100万円ほどかかる場合もあります。

 「顧客への販売を目的にマーケティングを行う」といった、企業からユーザーに向けての「一方通行のマーケティング」は既に時代遅れになりつつあります。

 ユーザビリティテストを通して、ユーザーの声を製品・サービスに反映させることが必要ですし、それらを継続的に反復的に実施できる体制が必要不可欠です。

 それほど、現代は、ユーザーが製品を見る目が厳しくなってきているとも言えます。

 製品開発にユーザーを巻き込むことで、本当に市場が求めている視点を得ることができますので、ユーザビリティテストを通して、ユーザーと共に、製品・サービスを共創していくという感覚をもって、取り組んでみてください。