債務超過の家業を復活させた3代目 インテリアは隠すから「見せる」へ
大阪府八尾市の友安製作所は、鉄加工の技術を生かし、カーテンフックなどの製造販売をしていましたが、プラスチック製品の台頭とともに業績が悪化。3代目社長・友安啓則さん(43)が、インテリアの自社ブランドを立ち上げ、倒産危機だった家業を立て直しました。
大阪府八尾市の友安製作所は、鉄加工の技術を生かし、カーテンフックなどの製造販売をしていましたが、プラスチック製品の台頭とともに業績が悪化。3代目社長・友安啓則さん(43)が、インテリアの自社ブランドを立ち上げ、倒産危機だった家業を立て直しました。
目次
友安製作所は1948年に友安さんの祖父が創業。ネジ製造の町工場からスタートしました。1980年には線材加工品の全自動機械を自社開発し、カーテンフックなどの製造販売を主体に成長してきました。
「90年代は当社の黄金期。当時はカーテンフックが大変売れた時代で、従業員も30人くらいいました」
その後、友安さんは高校1年より米国へ留学。高校・大学卒業後、大学院でMBAを取得し商社に就職します。米国生活を満喫していましたが、父の体調不良を機に帰国を決意します。
帰国後、友安さんは家業の実状を知り愕然とします。順調だと思っていた経営は、債務超過の状態。従業員はわずか6人となり、平均年齢も50歳以上になっていたのです。
「父は、このまま会社をたたむつもりだったようです。『父と一緒に仕事がしたい』と申し出ると、『戻ってくるな』と断られました」
そんな父から出された入社の条件は、「新事業を立ち上げ、半年以内に自分の給料を稼ぎ出すこと」。この条件付きで2004年2月に入社しました。
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このまま同じことを続けていてもつぶれてしまう。つくるのを諦めて、売ることに特化する会社にしよう。そう考えた友安さんは、インテリア商材の輸入販売に着目します。
10年間の米国生活を経験した友安さんは、欧米では自分好みに住宅を改装するのが当たり前であるのに対し、日本の住宅は画一化されていると感じていました。もっと日本人も彩りのある暮らしを楽しんでほしい――。
その思いから生まれたのが、自社ブランド「Colors(カラーズ)」です。友安さんは、他社との差別化を図るため、商品にもこだわりました。
「当ブランドは、『隠す』のではなく、『見せる』商品です。世の中にある商品に“デザイン性”という新たな価値をプラスして提供しています。例えば、今までは機能性に特化していた突っ張り棒やカーテンレールも、あえてアンティーク調など意匠性の高いものを揃えました」
インテリア業界に初めて飛び込んだ友安さんは、中間マージンにより店頭価格が高額になるという課題に直面します。そこで、中間業者を徹底的に除くことで価格を抑えようと考えました。
「通常は、問屋、商社、海外商社、海外問屋という多くの中間業者が介在するため、店頭価格がどうしても高額になってしまいます。そこで、海外のメーカーから直接商品を仕入れることで、価格をできる限り抑えました。インテリア業界にしがらみがない専門外の人間だからこそ、流通システムの常識を壊すことができたのだと思います」
商品をトラックに積み、たった一人で全国のインテリアショップに飛び込み営業をスタート。門前払いされることもありましたが、粘り強く活動を続けました。これが少しずつ反響を呼び、入社から3カ月後には父からの条件をクリアすることができました。
しかし、売上が伸びるにつれ、手が回らなくなります。当時、仕入れから営業、発送まで、友安さんほぼ一人で担っていたからです。
他の従業員は高齢化している。新たに営業を育てるのは時間がかかる。そこで、簡単に一人でできる販路をつくろうと、ECショップを3日でスピード開設しました。
「Yahoo!ショッピング」で初月に50万円を売り上げ、続いて「楽天市場」にも出店。売上が好調なのを受け、新たに従業員を採用し、自社サイトでの販売も始めました。
「思いついたら即実行。切り替えも速い」という友安さん。入社からここまで、わずか1年以内というスピード感でした。
現在、EC事業は売上全体の6割まで成長しました。2016年に社長に就任した友安さんは、さらなる発展に向けて新たな事業づくりを進めています。
「現在、EC事業、カフェ事業、工務店事業、メディア事業、レンタルスペース事業の5つの事業を展開しています。これらをお客様が循環する『友安経済圏』をつくることで、顧客満足度を高めたい」
2015年に東京・浅草橋にインテリアショップを併設したカフェをオープン。これを皮切りに、2017年に大阪・阿倍野、2021年には福岡・博多にも出店しました。「ふらりとコーヒーを飲みに立ち寄ったついでに、DIYの魅力を体感していただくことが狙いです」
DIYではなくプロに依頼したいというニーズに応えるため、2018年から工務店事業を始めました。新たに建設業免許を取得し、大型のリノベーション案件も手がけています。
また、いま力を入れているのが、レンタルスペース事業です。空き家や営業時間外の飲食店などを収益空間に変えるともに、物件オーナーという潜在顧客の獲得にもつなげています。
2020年から始めたメディア事業では、「トモヤス タイムズ」というオウンドメディアを運営するとともに、ホームパーティ文化を推進する団体を設立しました。
「人口減少が加速する日本において、今後『住』に関する需要をどうやって増やしていくのかが重要になります。そこで、日本でホームパーティを文化にして、家に人を招くことが日常化すれば、必ず需要は生まれると考えました。当社の呼びかけに対して、象印やシャープなど90社の企業が賛同してくださり、共に活動を進めています」
こうして、6人だった従業員は、現在100人を超え、売上20億円の企業へと成長しました。そして、いま友安さんが目指すのは、“ものづくりへの原点回帰”です。
「売ることに特化してきて改めて気づいたのが、『商品にはストーリーが大切』ということでした。そこで、先代が築き上げた技術力と自社工場のリソースを生かし、自社デザイナーのオリジナル家具づくりを始めました。入社当時からいる職人は65歳を超えていますが、現在もいきいきと働いてくれています」
入社から17年。今までは経営に関するすべてを友安さん一人で決めてきました。「今後は、社員一人ひとりが『会社をどうしていきたいか』をいま一度考え直して、自分たちの力で変えていくフェーズにきている」といいます。
「当社のミッションは、『Add Colors to everyone's home (全世界の人々の生活に彩りを)』 です。これを軸に、将来的には『個』から『集』へ、『家』から『街』へと、幅広く暮らしをコーディネイトできる企業にしていきたいです」
友安製作所は、次なるステージに向けて、新たな歩みを進めています。
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