目次

  1. 内部監査とは 
    1. 内部監査の基本知識4つ
    2. 内部監査と外部監査の違い 三様監査について
  2. 内部監査の主な流れ
    1. 内部監査計画の策定
    2. 実施の通知と予備調査
    3. 内部監査の実施と意見交換
    4. 結果の検討と報告書の作成
    5. 結果と改善指示の報告
    6. 回答、フォローアップ
  3. 内部監査を行うときに知っておきたいこと
    1. 内部監査人の向いている人、向いていない人
    2. 内部監査人は従業員でなくても良い
    3. 必要なフォーマットは自社で作成
  4. 内部監査を行ったあと

 内部監査とは、会社の状態を適切に確認・評価し、会社に対してその結果の説明や、改善や予防などに役立つ助言や実施のサポートを行う取り組みです。その内容から、会社の健康診断とよくいわれます。

 内部監査は、従業員の健康診断と異なり、義務化されているわけではありません。法律的にやらなければいけないということはなく、自主性に委ねられています。※会社法第362条等と金融商品取引法第24条、第193条に基づき、上場企業や会社法上の大会社は内部監査を行う義務があります。

 ただ、上場していない中小企業においても、自社の異常事態(不正への加担、見逃し、隠ぺいなど)について、常態化しているためにそれが異常だと気づいていないことがよくあります。そして気づかないままいきなり重大なトラブルを起こし、倒産や多額の損害賠償金を支払うなどになったケースも少なくありません。

 内部監査は、国際機関のIIA(内部監査人協会)によって以下のように定義されています。

 内部監査は、組織体の運営に関し価値を付加し、また改善するために行われる、独立にして、客観的なアシュアランスおよびコンサルティング活動である。内部監査は、組織体の目標の達成に役立つことにある。このためにリスク・マネジメント、コントロールおよびガバナンスの各プロセスの有効性の評価、改善を、内部監査の専門職として規律ある姿勢で体系的な手法をもって行う。

内部監査の定義│内部監査人協会

 こちらにもとづきながら、内部監査をよりわかりやすくご説明します。

価値の付加と改善

 内部監査は、会社運営の価値向上やその状態の改善のために行われるものです。

 そのため、患っている病気(無駄で非効率な業務・守られないルール・法律違反・不正・ビジネスリスクなど)の発見や、健康面(法令を遵守している・効率的に仕事をしている・業務記録を適切に保管しているなど)の診断のみで終わりではありません。

 診断結果の説明(内部監査結果報告書を用いて結果を報告)し、そのために必要な治療や予防・再発防止の助言(非効率な業務の改善や規程の変更、社員教育といった指示など)もあわせて行う必要があります。

アシュアランス(保証)

 ここでいわれているアシュアランスとは、「内部監査結果報告書(内部監査を行った結果をまとめる文書)に記載する指摘事項以外に、異常な状態は発見されなかった」という約束の提供です。後述する外部監査(会計監査)において、公認会計士が、株主などに対して会計基準に則った財務諸表であることを保証しているのと同義になります。

コンサルティング(助言)

 コンサルティングとは、業務に対する改善指示です。この業務では、「改善案は現場で考えてください」という丸投げではなく、内部監査人と被監査部署が一緒になり、業務改善を目指す姿勢が重要になります。

専門職として規律ある姿勢・体系的な手法

 内部監査を行う内部監査人には、以下の姿勢やスキルが求められます。

  • 誠実性(法令を遵守。期待される開示を行う。違法行為に加担しない)
  • 客観性(自身の利害や他者から不当に影響を受けてはならない)
  • 秘密の保持(入手する情報の価値を尊重して、適切な権限なしに情報を開示しない)
  • 専門的能力(必要な知識、技能、経験を有する。また継続的な能力向上に努める)

 これらが欠けてしまうと形式的なチェックしか行わない、意味のない内部監査になりがちです。体系的な手法についてはこの後の内部監査の主な流れで説明します。

 日本では、内部監査以外にも外部監査や監査役監査といった監査形態があります(この3つをあわせて、三様監査と呼びます)。

  • 外部監査
    公認会計士または監査法人が、会社法及び金融商品取引法に基づき、一般投資家の保護を目的に、上場会社が提出する財務諸表について行う会計監査のこと。外部機関に業務委託して内部監査を行わせるものは当てはまらないので注意
  • 監査役監査
    株主総会で選任される監査役が、会社法に基づき、取締役の職務の執行が法令や定款に適合して実施されているかを確認する業務監査、および財務諸表等が適切に作成されているか確認する会計監査のこと
    内部監査は従業員に対してだが、監査役監査は取締役の業務執行に対して行う。ただし、取締役を監視して見張るような対立関係ではなく、取締役が違法行為を行い、処罰されないよう見守ることが重要

 内部監査と外部監査・監査役監査との大きな違いは、法的な根拠がないことです。

 なお、内部監査では、監査役(監査役監査)と連携して会社全体の業務が適法および適切であるかを確認したり、公認会計士(外部監査)と連携して財務諸表作成プロセスに不備がないかも確認したりなども行われます。

 最も効果的なのは、これら三者が連携して会社全体を見ることです。ただ、中小企業の場合、会計士や常勤監査役をなかなか置けないところが多いでしょう。そうしたときでも、「三者すべてができないからやらない」ではなく、内部監査だけでもやるのが重要です。

内部監査の定義と大まかなプロセス
内部監査の定義と大まかなプロセス(デザイン:増渕舞)

 内部監査は、大きく以下の6項目のプロセスで行われます。

  1. 内部監査計画の策定
  2. 実施の通知と予備調査
  3. 内部監査の実施と意見交換
  4. 結果の検討と報告書の作成
  5. 結果と改善指示の報告
  6. 回答、フォローアップ

 ただし、意味のある内部監査を行うために、以下のポイントをおさえておくようにしましょう。

  • ①内部監査組織の独立性を確保する
    内部監査組織およびその従業員に対しての人事権や報酬について、他部署(人事部など)の影響が及ぶような仕組みだと公平な監査が行われなくなってしまいます。
    そのため、例えば他部署と兼務する従業員が内部監査を行う場合、その従業員はもう一方の部署に対しての内部監査を行えないようにしたほうがトラブルになりません。異動した従業員がいる場合も、1年は前部署の内部監査は行わないほうが望ましいでしょう。
  • ②必要な規程を用意する
    内部監査は、ルールに則って適切に業務が行われているか見るものなので、内部監査規程はもちろん、就業規則や各種規程、マニュアルが必要です行えません。
    IPOを目指すために行う場合は、30から40種類程度の規程を作り、その規程が正しく機能しているか見るようにしましょう。

 では、各プロセスについて、それぞれ詳しくご説明します。

 まずは、内部監査計画を立てます。1年間の内部監査を行うにあたっての日程(いつ実施するか)、対象(どの部署の何を見るか)、着眼点(法令を遵守しているか、業務が健全に行われているか)、実施分担などを定めます。

 実務としては前回の内部監査の結果を受けて、対象や着眼点を検討しつつ、経営や内部監査人が重要と考える項目を加えて作成します。なお、1ヵ月程度でまとめるのが一般的です。

 内部監査計画にて定まった対象組織に対して日程や対象を通知します。また、実地監査を効率的に実施する事前準備として予備調査を行います。

 予備調査は対象組織から必要な資料や情報を入手して分析を行い、本番で何を質問するかを検討する書面調査のことです。通知から予備調査の実施までの期間は、1〜1.5ヵ月が通例となっています。

 内部監査人が対象の部署に出向いて、必要な資料の収集や、従業員および責任者からヒアリングを行います。内部監査人は専門職としての懐疑心を持ち、正当な注意を払って確認を行うことが重要です。また、事実関係について誤解を避けるため、今後の改善策の検討や実施の可否を確認するために、対象部署と内部監査人と意見交換を行います。

 場合にもよりますが、内部監査の実施と意見交換だけで1〜2ヵ月程度はかかるので、余裕を持つようにしましょう

 内部監査を実施して得られた情報を整理し、業務の有効性の評価、異常な事態の有無、異常な事態があった場合の原因究明などを行い、それらをまとめた内部監査報告書を作成します。

 経営に対して会社の状況が良いのか悪いのか(過去と比べて、部門間で比べて、世間一般と比べて)を明確にした報告書を作成することがポイントです。

 作成した報告書を経営者、及び監査を実施した部署の責任者に報告します。このとき、報告書に記載する指摘事項と改善指示について、経営者から部署の責任者に実施してもらうよう命じる形をとることが重要です。

 部署の責任者に、内部監査報告書および改善指示に対する回答(いつ何に取りかかるのか、どれくらいで対応完了するのか、など)を出してもらいます。その回答内容が適切なものかを吟味し、その対処スケジュールを基にフォローアップの実施時期・方法を決めます。

 このフォローアップで適切な改善が行われていることを確認したら、フォローアップ報告書を作成して、内部監査の一連の業務が完了となります。

 内部監査業務を実行するにあたって、知っておくと良い豆知識を紹介します。 

 内部監査には、向いている人と向いていない人がいます。

 内部監査を行ううえで、不正の発覚はつきものです。そのなかで、不正を行っている人が、例えばマイホームを買い、子供も受験というように多くの責任を負っていた、というケースもあります。

 このときに、その人を摘発できない、例え摘発しても落ち込む、という人は向いていません。お世話になった先輩・上司だからと、その人の言葉を鵜呑みにしてしまう人も同様です。

 一方で、不正というのは、ルールや業務の規程に穴が必ずあるときに行われます。何か楽する道はないかなと考えて、要領よく動けるタイプの人だと、それに気づけるセンスを持ってる可能性が高いので内部監査に向いています。

 求人情報・転職サイト「doda」によれば、内部監査を行っている人の平均年収は700万円です(参照:平均年収ランキング(165職種別の平均年収/生涯賃金)【最新版】│doda)。

 この人件費を継続して払うほどの余裕はないが、専門的な知識を持っている人に内部監査を行ってほしい場合は、外部委託として内部監査を実施してもらうのもひとつです。最近では、必要なところだけサポートをしてもらう形も増えています。

 また、従業員に内部監査をしてもらう場合、仮に経営者が不正をしていたとなると、どのような優れた人であっても指摘がなかなかできない、ということもあります。万が一に備えたいと考えている場合も、外部の専門家に依頼するのが有効です。

 なお、依頼する際は、内部監査士や公認内部監査人といった資格(日本内部監査協会が認定する資格)を持つ人が内部監査の支援事業を行っている会社を選ぶと良いでしょう。

 内部監査には、内部監査規程や内部監査契約書、内部監査通知書、チェックシート、内部監査報告書、改善指示書、改善報告書など、多くのフォーマットが必要になります。今は多くの書籍でテンプレートが紹介されているので、そちらを参考に作成してみてください。

 もし、作成したものが自社に合っているのか、規程やチェックシートに漏れがないか確認したいときは、上記のような専門機関に相談してみるのも良いでしょう。

 内部監査を実際に行ったあとは、それが意味のあるものであったか振り返ることも重要です。

 特に、経営者が会社の問題点に気づき、改善するための行動を取ったかが重要なポイントになります。経営者が「やって良かった。また来年もやろう」と思えるものになってはじめて、会社の健康な成長につながるからです。

 また、内部監査は1年間の計画を回していくだけではなく、3年、5年といった中長期の計画を立てることも重要です。

 会社が大きくなっていけば、1年で解決しない問題がしばしば生じます。システムの改善、新しい組織や業務フローの構築など、会社の中長期経営計画と同様に中長期で改善されているかをフォローすることで、より大きな問題の解決に貢献することができます。