職場コミュニケーションを活性化するには?改善への取り組みや具体例を解説
職場のコミュニケーションの活性化は重要です。しかし、どのように改善したらよいのかわからない……と悩む経営者は少なくありません。組織コンサルティングが専門の中小企業診断士が、職場のコミュニケーションを改善し活性化する方法について、具体例を交えながらわかりやすく紹介します。
職場のコミュニケーションの活性化は重要です。しかし、どのように改善したらよいのかわからない……と悩む経営者は少なくありません。組織コンサルティングが専門の中小企業診断士が、職場のコミュニケーションを改善し活性化する方法について、具体例を交えながらわかりやすく紹介します。
目次
職場のコミュニケーションを改善しようとする際、有効だと言われている施策を安直に取り入れるのは避けましょう。
目下の課題を解決できるかもしれませんが、組織のパフォーマンス力が上がる、売上が向上するなど、組織が本来求めるべき成果に結びつくとは限らないからです。また、再び同じ課題に直面し、悩む可能性もあります。
具体的な施策を実行する前に、押さえておくべき3つのポイントをご紹介します。
まずは、コミュニケーションが組織に成果を生み出すために欠かせない要素であることを理解しましょう。
個人のパフォーマンスがいかに優れていても、協働して生み出すゴールイメージをチームで共有できていないと、成果は生まれません。サッカーやバスケットボールのようなチームスポーツにおいて、一人のスタープレーヤーで戦うには無理があるのと同じです。
そして、チームで協働し、成果を創出するためにはコミュニケーションが欠かせません。チームが組織として成立するためには、「共通の目的」「コミュニケーション」「貢献意欲」の3つが欠かせないと、アメリカの経営学者チェスター・バーナードは提唱しました。組織のメンバーが同じ目標に向かい、情報共有しあい、最後まで成し遂げようと意欲をもって取り組むことが重要ということです。
組織の状態や社員のスキルに合わせて実施するのも、ポイントのひとつです。
コミュニケーションを取ることが苦手な社員が多い組織で「ワイガヤ」のようなブレーンストーミングを導入したり、上司と部下の関係性が悪い組織で「1on1ミーティング」を実施したりしても、長続きしないことは明らかです。
また、社員のコミュニケーション力に見合っていない施策も、維持するのに労力を要してしまい、本来の目的を見失う可能性があります。
この組織は今どういう状態なのか、社員のコミュニケーション力はどの程度か、検討してから実施することをおすすめします。
職場の雰囲気改善や業務の進めやすくするなどのメリットを考えて取り組みがちですが、そもそもコミュニケーションが苦手な方が多い職場もあります。
その場合、コミュニケーションそのものを活発にしようとしても難しいため、制度や改善活動の導入により、間接的にコミュニケーションが生まれることを期待する施策も効果的です。
社内のオフィシャルな活動を通じて組織に良い緊張感が生まれ、コミュニケーションの質・量の向上につながるだけでなく、職場の仕事の質そのものを直接的に向上させることにもつながります。
具体的には、QC活動、3S活動、人事評価制度の導入など、仕事そのものの改善や推進を通じてコミュニケーションの活性化を狙います。
実際に職場コミュニケーションの改善を図るためには、組織の状況をまず理解する必要があります。みなさんの組織は、以下の図でどこにあたりますか。
充実した「ワクワク」状態であれば、今のコミュニケーションスタイルでも良いかもしれませんが、残りの3つの状態であれば、次のような施策を講じる必要があります。
ケース | 改善策一例 |
---|---|
疲弊:バラバラした組織の場合 | ・職場内ミーティングの促進 ・組織の存在目的の理解浸透 ・社内イベント実施・社内報発行 |
利己:ギスギスした組織の場合 | ・1on1ミーティングの実施 ・メンター制度の導入 ・サンクスカードの導入 |
仲良し:ワイワイとした組織の場合 | ・業務改善活動の実施 ・人事評価制度の導入・刷新 |
以下で詳しく解説します。
職場の雰囲気が芳しくない上、成果も低いという疲弊した組織の場合、職場全体の活性化がまず求められます。
組織の縦のつながり、横のつながりが弱くなっている可能性があります。まずは業務に必要なことを話し合う場としてのミーティングを持ち、相互理解、信頼関係を少しずつ醸成するようにすると良いでしょう。
仕事の意味や目的、組織の使命などが曖昧になっている可能性があります。組織のトップ層から改めて周知浸透を図ったり、社員を集めてグループワークなどを実施し、企業の存在意義を考えさせたりすることで、責任感の醸成や成果創出への思いが生まれるなど、仕事へのエンゲージメントが高まります。
社内のコミュニケーションを活発化させるためにも、社内イベントの実施も一案です。例えば、他部署の人と交流するランチ会や誕生日の近い人を集める誕生日会、スポーツ会などがあげられます。また、定期的に社内の情報を発信する社内報も、発信という点では一方通行であるものの、社内のメンバーの相互理解を深めるツールとして効果的です。
成果は創出するものの、職場の雰囲気は芳しくないという職場の場合、自分さえ成果を出していればよいという利己的な行動に走っている可能性があります。チーム全体で成果を創出するため、まずは身近なメンバーとの相互理解の重要性を目指すことが求められます。
1on1ミーティングとは、上司と部下による1対1の定期的な面談で、最低でも月に1回実施するミーティングを指します。肩肘張った評価面談のようなものではなく、業務やプライベートなことを含めて、ざっくばらんに話すことで、仕事の進めやすさや業務上の不安の解消を狙うものです。上司と部下の接点を増やすことで親近感が沸き、お互いが助け合おうとする気持ちの醸成にもつながります。
メンター制度とは、直属の上司ではなく、年齢や社歴の近い先輩社員が若手をサポートする制度です。相談しやすいお兄さん、お姉さんのような役割を設けることで、若手の不安解消になるだけでなく、メンター役の責任感の醸成、さらには人間関係の構築から、職場内のコミュニケーションが活発になることが期待できます。
サンクスカードとは、仕事の中での感謝をカードに書いて相手に送り合う制度です。お互いを認め合うことで信頼関係の構築や職場コミュニケーションの活性化を促すことが可能になります。また、社内の風通しが良くなったり、モチベーションが高まったりする効果が期待できます。ただ、定期的に実施するため、負担を感じる人もいる可能性があり、社員の人数や負担なども考慮して導入する必要があります。
職場の雰囲気は良いが、成果にはつながっていないという仲良し組織の場合、組織に良い緊張感を生み、成果の重要性を理解するコミュニケーションにつなげていくと良いでしょう。
仕事の価値を高めるためには、ムダ・ムリ・ムラを減らす改善活動、自由なアイデアによる革新や新しい仕事の進め方の導入が重要になります。これらの業務改善活動を通じて、コミュニケーションの活性化を図ることができれば、ただの仲良しからの脱却が図れるでしょう。
組織に良い緊張感を生むためには、人事評価制度の導入が効果的です。制度を通じて、上司と部下がコミュニケーションを定期的に取る必要が生まれますし、仕事ぶりを注目されることで仕事に対する前向きさの向上が期待できるでしょう。ただ、評価制度は社員の処遇に影響を与えることになりますので、導入や刷新は慎重に検討して進めることが肝要です。
つづいて、職場コミュニケーションの改善に成功した2つの事例をご紹介します。
従業員5人程度の食品製造小売業の例です。小規模事業でアットホームな雰囲気が良い職場でしたが、適材適所の人材配置が難しかったり、意見交換の機会がなく経営層と従業員の間に見えないすれ違いなどがあったりしました。
アットホームな良さは残しつつお互いの言いたいことを言えるよう、月1回のミーティングと経営者との個別面談を実施したところ、今後のキャリアについての意見や、日々の仕事の進め方に対する前向きな意見が出るなどしました。「普段なかなかタイミングがなく、言えなかった意見を共有できて良かった」や「仕事以外の話を聞いてもらえて嬉しかった」といった従業員の声も上がったようです。
また、それを機に思い込みや決めつけで仕事を振るのではなく、「この人だから任せてみよう」という振り方に変えたところ、生産性の向上と意識改革の両方が進み、組織としての成長にもつながりました。
従業員40人の製造業の例です。独自技術を持ち、市場からも認められた製品を開発している企業ですが、大人しい人材が多く、新しいことが前に進みにくい傾向にありました。
そこで、現在の生産活動は維持しつつ新しいことにも取り組める環境を作るために、まずは今の業務の進め方の見直しの活動を実施することにしました。改善活動に抵抗のある人もいましたが、いざ始めてみると、他の人の仕事の進め方や他部署の仕事の仕方に興味が生まれ、改善活動を通じたコミュニケーションが生まれるようになりました。
各人が競うのではなく、ともに成長して組織に成果を生むためのものだと理解してもらったことで、発言や行動にも良い変化が見られるようになった事例です。
コミュニケーションの改善策を実施しても、個人のコミュニケーション力が低いと効果が生まれません。コミュニケーションを取るということは、相手に踏み込むことでもあります。少し勇気をもってコミュニケーションに臨むために、以下のポイントを意識すると良いでしょう。
コミュニケーションの質の向上から取り組もうとすると、何を話してよいかわからなくなり、結局のところコミュニケーションが活性化しないという事態に陥りかねません。まずは、量を増やすことを目的としてスタートすることも大切です。
挨拶の際に一言付け加えたり、自分の日常について伝えたり、いつもより一つ多く会話を挟むことから始めると良いでしょう。
職場で発言をしたときに、拒絶されたり、非難されたり、職場での立場が危うくなったりしては、自由闊達な議論ができないばかりか、質問することもはばかられます。また、業務上の失敗なども報告しにくい雰囲気となり、トラブルやクレームの対応が遅れたり、業務の改善が進まなかったりするリスクを伴います。
そのため、相手の発言にはまず肯定的な受け止め方をします。「○○さんは、そう考えているんですね」「よくやってくれていると思っていますよ」など、一旦受け止める発言を癖づけておくと良いでしょう。
コミュニケーションが一方的になってはいけません。会話はお互いのキャッチボールですから、自分だけが話すのではなく、相手にも話してもらえるよう、相手が受け取りやすいボールを投げられると良いでしょう。
そのためには、自分の投げたボールを相手が正しく受け取っているのか、確認しながら会話を進めることが必要です。相手を傷つけてしまったり、上手に受け取れていなかったりするようであれば、相手を困らせたいわけではないことを伝えるなど、本来伝えたいこと、訊きたいこととは異なる旨を伝えてバランスを取ることが必要です。
コミュニケーションは、心理的安全性を創出し職場のストレスを軽減する「働きやすさ」の機能と、個人の成長や組織に成果をもたらす「働きがい」を作る機能の2つの効果があります。
ただ仲良しになることを求めるのではなく、職場にどのような効果をもたらしたいのかを考えてコミュニケーション施策を導入すれば、成果に結びつけることができるでしょう。
たかがコミュニケーション、されどコミュニケーション。多くの組織に良い対話が生まれることを祈っています。
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