目次

  1. FSC認証とは
    1. FSC認証の仕組み
    2. FSC認証マークとは
  2. FSC認証を取得するメリット
    1. 消費者に環境配慮姿勢をアピールできる
    2. 取引先との関係深化や新規開拓に活用できる
    3. 資金調達の選択肢が増える
    4. 消費者がFSC認証商品を購入するメリットは?
  3. FSC認証の取得方法 必要な手順5ステップ
    1. ステップ1.認証機関への問い合わせ
    2. ステップ2.認証機関の決定
    3. ステップ3.認証機関による審査への対応
    4. ステップ4.認証機関による認証判断
    5. ステップ5.FSC認証取得
  4. FSC認証取得後に企業に求められる対応や姿勢
  5. FSC認証は森林を守りたい消費者と企業をつなぐツール

 FSC認証とは、きちんと管理された森林からできた製品であることを、消費者の目に見える形で表示するためのしくみです。認定第三者機関の審査を受け、規格を満たしていると判断された場合、対象製品にFSC認証ラベルを表示することができます。なお、FSCは「Forest Stewardship Council」の頭文字からなる略語で、1994年に法人として正式に発足したNGO「森林管理協議会」を意味します。

 現代の人間の生活は、さまざまな場面で森林の恵みを享受して成り立っています。森林は紙製品や容器の原料、建材、山菜やきのこなどの食材、水資源を供給してくれるほか、土砂災害の防止や多様な生物の住処の役割も担っています。さらに、二酸化炭素を吸収し酸素を供給するという、地球の大気バランスを保つためにも欠かせない存在です。

 しかし、世界全体の森林面積は、アフリカや南米の熱帯雨林を中心に減少しつづけています。2020年時点の世界の森林面積は約41億ヘクタールで、陸地面積の約3割を占めますが、2010年から2020年にかけて年平均470万ヘクタールの森林が減少しています。

 森林が減少しているおもな理由には、経済発展の原資となる森林資源の獲得や人間の居住地・農地の確保を目的に行われた無計画な森林伐採(または違法伐採)、降雨量減少や気温上昇など気候変動の影響による乾燥から発生する森林火災などがあげられます。

 FSCはこのような状況を食い止めるため、1994年に26ヵ国の環境NGO・林業者・林産物取引事業者・先住民団体などが中心となり正式発足した団体です。日本では2000年ごろからFCS認証の取得がはじまりました。

 FCS認証はSDGs(持続可能な開発目標)の達成に貢献するツールとしても期待されており、もっとも関係性が深いのは目標15「陸の豊かさも守ろう」ですが、そのほかにも14の目標と40項目のターゲット(達成基準)にも関わります。

 企業がFSC認証を取得したり、FSC認証マーク(詳細後述)が表示されている製品を選択することで、事業活動を通じて森林を守る取り組みに貢献することができます。

FSC認証のしくみ
FSC認証のしくみ(デザイン:吉田咲雪)

 FSC認証の製品を市場に届けるには、以下の2つの認証が必要です。

  • FM(Forest Management:森林管理)認証:責任を持って管理された森林であることの規格を満たした認定林に付与される認証。
  • CoC(Chain of Custody:加工・流通過程)認証:認証林で収穫された認定木材が製品になり消費者の手に届くまでの加工・流通過程を認証するもの。認定林で収穫された木材が、加工・流通過程で不適格な木材と混ざってしまわないようにするため、CoC認定を受けた組織が加工・流通を行わなくてはなりません。

 要するに、FSC認証の製品を消費者に届けるためには、生産、加工、流通に関わるすべての組織(小売を除く)での認証取得が必要です。

 FSC認証マーク(ラベル)は、消費者が環境保全や森林保護の観点で適切な商品を選択する機会を生み出し、誰もが消費活動を通じて森林保全のサイクルに参加できるようアプローチする役目があります。

 そのためFSC認証マークは、一目でわかるシンプルな分類となっています。FSC認証マークには3つの種類があります。

  • FSC100%:FSC認証林からの原料を100%使用している製品に付けることができる
  • FSCミックス:FSCが認める的確な原材料が複数使用されている製品に付けることができる
  • FSCリサイクル:回収原材料を100%使用する製品に付けることができる

 FSC認証マークの下部分に表示される数字はFSC認証ライセンス番号です。FSC認証マークは、印刷用紙、木材、段ボールなどの製品に付けることができます。

 企業がFSC認証を取得した場合、どのようなメリットを得られるのでしょうか。代表的な例をご紹介します。

 FSC認証を取得し製品にマークを付することで、自社の環境配慮姿勢をわかりやすく消費者に伝えることができます。

 また、昨今は、環境問題に対する危機意識の高まりやSDGsの社会への浸透によって「環境に配慮している企業からモノやサービスを購入したい」と考える消費者も増えてきています。環境経営企業としてのブランディング強化や、環境に配慮した商品の売上の向上に期待できるのが、FSC認証取得のメリットのひとつです。

 昨今の環境意識の高まりは、環境への取り組みを強化している企業の増加にもつながっています。そのような企業は、取引相手を選ぶ際に環境を意識した活動をしているかどうかを重視することがあるので、FSC認証を取得していることが取引継続や新規取引の判断の好材料になると考えられます。

 金融機関の多くでは環境に配慮した経営を行うために必要な運転資金や設備投資を対象とした、環境配慮型融資商品を提供しています。環境問題への取り組み状況によって金利や融資額が優遇されるものもあります。FSC認証の取得は企業の資金調達の選択肢を増やしてくれる可能性があります。

 消費者がFSC認証商品を購入するメリットは、豊かな森を次世代につなぐサイクルに関われることです。消費者が意図せず環境破壊に加担することを避けるために役立つ目印のひとつが、FSC認証です。

 環境意識の高い層に向けてマーケティングを行う企業の中には、自社基準でエコやサステナブルを謳っている商品もありますが、FSC認証商品は第三者機関による審査を受けているため、より客観的な信頼性が担保されていると考えられます。

 FSC認証の取得方法には、次のような種類があります。

  • 1つの組織で単独に取得する方法
  • グループで取得する方法(グループ認証)
  • 複数の拠点を含んで取得する方法(マルチサイト認証)
  • 建物、船、イベント会場など一度しか作らないものに対する認証(プロジェクト認証)プロジェクト認証は1回きりのもので有効期限はありません。

 いずれの場合も、基本的には次のような流れで行います。

 FSC認証は、FSC認定の独立した第三者認証機関が提供します。まずはFSC認定認証機関に問い合わせをして見積を取得します。認証審査にかかる費用、期間、手間などは、各事業の規模や複雑さ、リスクなどによって異なります。そのため認証期間へ問い合わせをする前に、あらかじめ認証を予定している製品やサイトなどの範囲を決めておくとスムーズです。

 なお2023年3月時点での日本国内の認定機関は下記の6社です。

 最新の情報はFSCジャパンのウェブサイトでご確認ください(認証を取得するには | Forest Stewardship Council)。

 認証機関に問い合わせしたあと、認証機関からFSC認証に関わる費用などの条件や手順の説明を受けます。内容をよく確認したうえで認証機関を決定し、正式に契約を交わします。

 認証機関から審査員が派遣され、FSC認証規格に適合しているかの審査が行われます。審査は事務所、工場、倉庫などへの訪問のほか、管理体制や管理手順の確認、伝票の確認や担当社への理解度確認のためのインタビューも実施されます。

 審査の結果、FSC規格の要求事項を満たしていると判断されると、認定機関から認証が発行されます。もし重大な不遵守があるとされた場合、改善されるまで認証は発行されません。

 5年間有効の認証が認証機関から発行されます。認証を受けた組織はFSC商標(ロゴマーク)を使用することができます。

 企業がFSC認証を取得した後は、FSCの10原則と70の基準にのっとって対応を続ける必要があります。

 認証の有効期間はFM認証、CoC認証ともに5年間です。継続的に認証資格を保持したい場合、認証機関の監査を年1回受けてパスしなければなりません。監査機関から改善要求がなされた場合は、一定期間内に改善することが要求されます。

 企業がどんなに環境に良いモノを作っていても、消費者に価値が伝わらず選ばれなければインパクトは生まれません。商品にFSC認証マークがあることで、森から製品化するまでのストーリーに関わるすべての組織が森林管理や加工・流通プロセスに責任を持って携わっていることを証明してくれます。

 FSC認証は世界でもっとも多くの認証を発行している木材認証制度です。その信頼性の高さは、世界中で一貫した規格と原則に基づいていることや、指針や規格の策定・見直し手続きの意思決定が公開されており誰でも意見できるという透明性によって支えられています。

 企業がFSC認証を取得するまでのプロセスでは、対応する人員や時間、費用などのリソースを要しますが、FSC認証を取得することで地球環境・社会に対する責任ある経営姿勢を対外的に示すことができるようになるでしょう。