パレート分析とは エクセルでの作り方とパレート図での分析のコツを解説
改善したいことや困りごとがたくさんあるとき、重点分析という考え方が役立ちます。重点分析の一つに、パレート図を使った「パレート分析」という手法があります。問題の大きさや順位と同時に、全体に対してどの程度の割合を占めているのかが把握しやすくなります。ISO9001やTQMなど品質保証・品質管理の実務経験が豊富な中小企業診断士がExcel(エクセル)を使ったパレートなどを図の作り方わかりやすく解説します。
改善したいことや困りごとがたくさんあるとき、重点分析という考え方が役立ちます。重点分析の一つに、パレート図を使った「パレート分析」という手法があります。問題の大きさや順位と同時に、全体に対してどの程度の割合を占めているのかが把握しやすくなります。ISO9001やTQMなど品質保証・品質管理の実務経験が豊富な中小企業診断士がExcel(エクセル)を使ったパレートなどを図の作り方わかりやすく解説します。
目次
パレート分析とは、パレート図を使った分析のことです。パレート図はデータを項目別に集計・分類して多い順に並べ、棒グラフと累積曲線によってあらわした図になります。
複数の問題があった場合、重要な問題から解決したり、問題に対する影響度の大きい原因から対策を打ったりするというのは一般的な考え方ですが、パレート図を使うことで問題の大きさや順位がわかるようになると同時に、それらが全体の問題に対してどの程度の割合を占めているのか把握しやすくなります。
不良内容(項目)を横軸にして不良件数の多い順に並べ、集計値を棒グラフに表します。折れ線グラフは各項目の累積構成比となっており、一番右側は累計割合の100%となります。
パレート図は品質管理の分野において「QC7つ道具」(QC〈Quality Control:品質管理〉に用いられるデータ分析の道具の総称)の一つとしてよく知られているものであり、製造現場においては不良や不具合の原因に対してどこから手を打っていくのか分析するときによく使われています。
パレート分析には、具体的に次のようなメリットがあります。具体例を使って紹介します。
頭の中にあるイメージを言葉でいくら説明しても、チームのメンバーになかなか理解してもらえないことがあります。また、どの対策を優先すべきかなどについて、メンバー内で意見が対立して議論が進まなくなってしまうかもしれません。
しかし、例えば前述の不良の内訳をまとめたパレート図をチームに見せて説明した場合、棒グラフからこの工程で最も多い不良は「バリ」であること、また折れ線グラフから、バリによる不良は全体の約半数を占めていることがすぐにわかります。そのため、まず対策を検討すべきなのはバリの発生防止である、ということが言葉を尽くすことなく共有できます。
パレート分析は品質管理で使われる印象が強いのですが、後で詳しく紹介するパレートの法則(80:20の法則)やABC分析との親和性が高いため、品質管理に限らず広く経営課題に対して優先的に手を打つべき項目を絞り込むときにも活用できます。
例えば、以下のようなことを行う場合に使えるでしょう。
一例として、ある企業の顧客別の売上高をパレート図にまとめると、以下のようになります。
この企業の場合、S社への売上が約800万円であり、全売上高の約65%を占めています。この結果が見えれば、そこで「1社に大きく依存しているから経営的にはリスクが高い。他の顧客の売上を作り、リスクを下げることが必要なのではないか」「もしくは、S社にとってのオンリーワンになることを目指したほうがいいのではないか」と検討できるようになります。パレート分析は、こうした具体的かつ現実的な経営戦略を練るときにも役立ちます。
対策を取ったあとに、縦軸を変えずにパレート図を再作成することで、前後の比較ができます。そこで、効果があった場合にはさらに対策を推し進めたり次の不良の対策に着手したりする、効果がなかった場合には対策を再検討したり対策を断念したりする、といった判断が可能になります。
パレート分析に関連する手法に、ABC分析があります。
ABC分析とは、パレートの法則(イタリアの経済学者ヴィルフレド・パレートが提唱した『全体の数値の8割は、全体を構成する要素のうちの2割の要素が生み出している』という経験則。80:20の法則)に基づき、重要度別にA・B・Cに分けるもので、主に原材料、製品(商品)などの資金的重要度を分析する際に使われています。
重要度の分類方法はいくつかありますが、よく知られているのは、ある期間における原材料の購買や製品(商品)の販売について金額(単価×数量)を集計して大きい方から並べ、累積金額の割合が70%以下のものをA(重要管理品目)、71~90%のものをB(中程度管理品目)、91~100%のものをC(一般管理品目)というグループに分けるものです。
ABC分析によりグループ分けされた結果は、グループごとに在庫管理方法や販売方法などを変えるなど、主に管理コストを下げることに用いられます。
一方、パレート分析でも、パレート図の累積構成比曲線の値を使って同様な分析を行うことができます。そのため、パレート分析とABC分析は基本的には大きな違いはありません。
パレート分析を行うためには、パレート図を作成する必要があります。ここではExcel(エクセル)を使った作成方法をお伝えします。
まずは、元データを項目ごとに集計を行います。
エクセルのセルに式を入れて集計してもいいですが、データ数が多い場合はエクセルのピボットテーブル機能を使うと簡単に集計できます。
集計が終わったら、データの数値の大きい順に並べ替えておきます。
集計したら、それぞれの項目の累積構成比を計算します。また、あとでパレート図の形を整える際に必要となるため、隣の列の一番上の行に「0」を入れた累積構成比も作成します。
データの範囲を指定してグラフを作っていきます。
横軸と棒グラフに相当するデータの範囲を選択。そのままCtrlキーを押しながら累積構成比率のデータ範囲を選択します。
エクセルのツールバーから[挿入]→[複合グラフの挿入]→[集合縦棒-第2軸の折れ線]を選択します。
ワークシート上に複合グラフが生成されます。
複合グラフの状態でも概要はわかりますが、目盛りの修正をしてパレート図にしていきます。
第2軸縦軸(右側縦軸)を右クリックして軸の書式設定を開きます。軸のオプションで、最小値を「0」、最大値を「1」、メモリの種類を「内向き」、表示形式を「パーセンテージ」、小数点の桁数は「0」にします。
横軸を右クリックして軸の書式設定を開きます。軸のオプションから目盛りの種類を「内向き」にします。
棒グラフを右クリックしてデータ系列の書式設定を開きます。系列のオプションから要素の間隔を「0%」にします。
折れ線グラフを右クリックしてデータ系列の書式設定を開きます。系列のオプションからマーカーのオプションを「自動」にします。
グラフをクリックし、グラフの右上に表れる「+」マークをクリック→「軸」の右側にある「▶」をクリック→「第2横軸」にチェックを入れます(これにより、グラフの上側にも軸ができます)。
第2横軸(上側の横軸)を右クリックして軸の書式設定を開きます。軸のオプションから軸位置を「目盛り」、目盛りの種類を「なし」、補助目盛の種類を「なし」、ラベルの位置を「なし」にします。
縦軸(左側縦軸)を右クリックして軸の書式設定を開きます。軸のオプションで、最小値を「0」、最大値にはデータの累計値を入力します。
以上の設定により、パレート図としての形ができ上がります。
最後にグラフの体裁を整えます。タイトルを入れたり、軸ラベルを入れたり、グラフ部分の形を正方形にしたりなど、お好みでグラフとしての見栄えを良くしていきましょう。
今回は「製品検査における不良内容」「不良件数」といったタイトルの挿入や、色やグラフの形の変更などを行いました。完成したパレート図は以下のようになります。
パレート図ができ上がったら、パレート分析を行いましょう。棒グラフが高く、構成比の数値が大きいものほど重要で、左から順に優先順位がつくことは直観的にわかると思いますが、そのほかの読み取りのコツや気を付けておいた方がいいことをいくつかご紹介します。
ABC分析的な活用をし、優先課題は何かをあらためて確かめてみましょう。累積構成比の折れ線グラフを見て、0から70%までがA(重要管理品目)、71~90%がB(中程度管理品目)、91~100%がC(一般管理品目)となります。上記の検査不良の例では「バリ」「キズ」を合わせると約80%となることから、これら2つの対策の優先順位が高いと読み取れます。
ほかの集計結果についても、あらかじめ分析しておくことが肝要です。下記のように、縦軸の項目を不良の件数ではなく損失金額としたときに、バリ以外の項目が上位になることもあるからです。少なくとも「件数」と「金額」は分析してください。
IT化が進んだ現在、経理・会計システムや販売管理システム、タイムカードシステム、在庫管理システムなど、多くのシステムが稼働しています。
システムの多くは数値データを扱っており、ERP(基幹システム)とBI(ビジネスインテリジェンス)ツールを導入している場合を除くと、データの解析は数字の羅列だけだったり、エクセルが作成する一般的なグラフだったりすることが多いようです。
パレート図を含むQC7つ道具は、データを単に見える化するだけではなく、データを整理・分析することに役立つ非常に有用な道具として、主に製造現場の改善の場で長く使われています。また、似た名前である新QC7つ道具は、数値ではなく言語データを整理する道具になっています。
「製造現場のためのもの」と切り捨てずに、経営一般に使える道具として、ぜひ活用していきましょう。
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