減価償却累計額とは?どんな勘定科目か使用例を交えてわかりやすく解説
減価償却累計額は、日常的に発生する科目ではなく、毎年やっていることを同じように繰り返して処理しているケースが多いでしょう。しかし、減価償却累計額は抑えておくポイントも多く、間違えてしまうと決算書に大きな影響を与えます。この記事では定義と扱い方をわかりやすく紹介します。
減価償却累計額は、日常的に発生する科目ではなく、毎年やっていることを同じように繰り返して処理しているケースが多いでしょう。しかし、減価償却累計額は抑えておくポイントも多く、間違えてしまうと決算書に大きな影響を与えます。この記事では定義と扱い方をわかりやすく紹介します。
減価償却累計額とは、固定資産の価値を表すための勘定科目です。
固定資産とは、事業のために複数年に渡って使用する資産であり、例えば本社ビルや事務用のパソコンが該当します。
固定資産の取得価額から減価償却累計額を引くことで、現在の固定資産の価値を簡単に把握できます。
固定資産は、基本的に年月が経過するほど劣化し、市場での価値が下がります。会計の世界で、その劣化を反映させるのが減価償却です。
減価償却には、毎年一定額が減価償却される定額法、毎年固定資産の帳簿価額に一定の率を乗じる定率法があります。どの固定資産にどちらの方法を使うことができるかは税法などで決められています。
固定資産を保有していると、定額法あるいは定率法で計算された減価償却費が、損益計算書上で、毎年発生します。この減価償却費の累計額が減価償却累計額です。
例えばある年に初めて発生した減価償却費が50,000円なら減価償却累計額も50,000円、その次の年にも減価償却費が50,000円発生していたら減価償却累計額は100,000円となります。
固定資産への減価償却の反映方法には、直接法と間接法があります。どちらを採用するかによって、減価償却累計額が記載される書類が異なります。
直接法とは、貸借対照表に記載する固定資産の価額を、減価償却累計額を差し引いたあとの純額で載せる方法を言います。この純額が会計上の現在の固定資産の価値です。
例えば、建物の取得価額(固定資産の価値を購入したときに払ったお金などで測定したもの)が10,000,000円、減価償却累計額が2,000,000の場合、貸借対照表には次のように記載されます。
貸借対照表の例 | |
---|---|
建物 | 8,000,000 |
直接法を用いた場合は、一部の会社は、注記表という貸借対照表や損益計算書などの決算書の補足をする別の書類に、減価償却累計額を記載する必要があります。
注記表の例 | |
---|---|
有形固定資産の減価償却累計額 | 2,000,000 |
間接法とは、貸借対照表に固定資産の取得価格を記載し、その下に減価償却累計額を記載することで、間接的に固定資産の現在の帳簿価額を載せる方法を言います。
固定資産の取得価格と現在の減価償却累計額があわせて記載されるため、見やすいという利点があります。しかし、固定資産の数が多いとそれだけ貸借対照表の勘定科目が多くなり、見づらくなります。
貸借対照表の例 | |
---|---|
建物 | 10,000,000 |
減価償却累計額 | △2,000,000 |
建物(純額) | 8,000,000 |
減価償却累計額は、固定資産が今までどれくらいの期間使用され、それによってどのくらい劣化しているかを示すものです。固定資産の取得価額から減価償却累計額を差し引くことで、決算日である貸借対照表日現在の固定資産の価値を知ることができます。
また、各固定資産の減価償却累計額を見れば、使用期間も把握でき、更新の際の目安にすることも可能です。減価償却をし終えている固定資産は故障したりしやすくなったり、使えなくなったりする可能性が高まりますが、そうしたリスクも把握できます。
一方、減価償却累計額は、その特徴から、固定資産を購入したときから廃棄や売却するときまで付き合うことになります。長期間にわたって管理をすることになりますので、気を引き締めて管理しなければならない勘定科目です。
減価償却累計額の使用例を、よく用いられるケースに分けてご紹介します。取り上げるシーンは次の3つです。
順番に説明します。
固定資産への減価償却の反映方法は、直接法と間接法の2種類があり、減価償却累計額が貸借対照表に記載される方法を間接法と言います。
例えば、100,000,000円の建物を50年の定額法で減価償却したとします。定額法のため、減価償却費は2,000,000(100,000,000÷50=2,000,000)円です。このとき、間接法を用いる場合は、次のように仕訳を行います。
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
減価償却費 | 2,000,000円 | 減価償却累計額 | 2,000,000円 |
減価償却累計額を用いたら、その金額を固定資産台帳にもしっかりと反映させましょう。
なお、対象となる固定資産を直接減額する直接法の場合、仕訳は次のようになり、減価償却累計額を用いません。
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
減価償却費 | 2,000,000円 | 建物 | 2,000,000円 |
固定資産を売却したときにも減価償却累計額がしばしば用いられます。
以下は、車両(取得原価3,000,000円、減価償却累計額2,000,000円)を1,500,000円で売却し、現金を受け取った場合の使用例です。
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
減価償却累計額 | 2,000,000円 | 車両 | 3,000,000円 |
現金 | 1,500,000円 | 固定資産売却益 | 500,000円 |
固定資産を売却をした場合は、取得原価から、減価償却累計額を差し引いた現在の価値に対して、いくらで売れたかを確認して損益を判定します。損益は当期純利益にも関係するため、減価償却累計額を適切に把握することは非常に重要です。
固定資産を廃棄などで除却をした場合も、減価償却累計額が使われます。
例えば、車両(取得原価3,000,000円、減価償却累計額2,000,000円)を除却したときは、次のように用いられます。
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
減価償却累計額 | 2,000,000円 | 車両 | 3,000,000円 |
固定資産除却損 | 1,000,000円 |
固定資産を廃棄等で除却をした場合も、取得原価に減価償却累計額を差引いた現在の価値を固定資産除却損として計上します。除却の際も、今まで計上していた減価償却累計額を把握している必要があります。
減価償却累計額は、適切に理解・管理をしていないと決算のときや固定資産を売却・除却しようとするときに困ることがあります。用いるうえでおさえておきたポイントをご紹介します。
減価償却累計額は無形固定資産には使わず、有形固定資産のみに使用するように会計のルールで決められています。有形固定資産とは、名前の通り形が有る固定資産で、建物や機械などが該当します。無形固定資産とは、形が無い固定資産で、一般的なのはソフトウェアです。
有形固定資産は、買い替えや機能アップとなる資本的支出を行い、更新をすることがあります。そのため、間接法を用いて取得原価も明らかにし、将来発生する可能性のある再投資の規模もわかるようにしたほうがよいとされています(直接法を用いることも可能です)。
一方、無形固定資産は、同じものに買い替えることはほとんどないことから、直接法を用いることとなっています。
減価償却累計額は、貸借対照表では「資産」の部に計上されます。
仕訳を起票する際に、貸方に計上するため「負債」として計上すると思っている人もいるかもしれません。
しかし、減価償却累計額は、固定資産を取得価格に対してマイナスをする資産の評価勘定として扱われます(資産の評価勘定は、ほかに貸倒引当金が挙げられます)。そのため、貸借対照表を作成する場合は、負債側に減価償却累計額を記載しないように気をつけましょう。
減価償却累計額は「資産」と書いたように、貸借対照表に記載されます。
減価償却累計額は、固定資産を購入してから積み上げてきた減価償却費の累計額を記載し、固定資産の現在の価値を表します。そのため、貸借対照表に固定資産の取得価額とあわせて記載することになります。
一方、減価償却費は、1年間分の費用を記載する科目のため、1年間の経営成績を記載する損益計算書に記載されます。減価償却費を計上しても利益が出ているのかを確認するのが目的です。
会計を行ううえでは、どの固定資産に減価償却累計額がいくら蓄積されているかを把握していないといけません。固定資産を売却するときや除却するとき、税務申告書を作成するとき、などさまざまなシーンで減価償却累計額が必要になるからです。
固定資産は、通常、会計ソフトなどに機能として付いている固定資産台帳にて管理をします。そういったソフトを採用していれば、どの資産にいくらの減価償却累計額があるかの把握は簡単にできます。
しかし、エクセルなどで管理をしている場合は、間違いが生じたときに過去にさかのぼらないといけなくなり、原因追求が大変になります。固定資産の購入当初から管理ができるようにルール決めをしましょう。
減価償却累計額には、直接法と間接法の2つのやり方があると上で説明しました。株式市場に上場している会社では、直接法3:間接法7くらいの割合で間接法が多いです。
また、一定規模の会社は、直接法を採用しても注記表に減価償却累計額を記載する必要があります。そのため、迷われたら間接法を採用するとよいでしょう。
減価償却累計額は、基本的な事項さえ抑えてしまえば、それほど難しい科目ではありません。
しかしながら、減価償却累計額は、毎年毎年継ぎ足しをしていく科目です。どの固定資産に対していくら発生しているのかを把握することが重要になっていきます。1回間違えてしまうと、数年から数十年という長期間にわたって間違い続けることになり、原因の把握が困難になります。
減価償却累計額の管理は、最初が肝心ですので、ぜひ今回の記事を参考にしていただき、適切に管理をしてください。
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