フォローアップ研修とは 重要な理由と実施の手順とポイントを紹介
社員の研修計画を立てるときは、フォローアップ研修も組み込むことが重要となります。それによって、社員のモチベーションやスキルの向上につながるからです。フォローアップ研修の重要性や導入の手順を、組織コンサルティングを専門としている中小企業診断士がわかりやすくご紹介します。
社員の研修計画を立てるときは、フォローアップ研修も組み込むことが重要となります。それによって、社員のモチベーションやスキルの向上につながるからです。フォローアップ研修の重要性や導入の手順を、組織コンサルティングを専門としている中小企業診断士がわかりやすくご紹介します。
目次
フォローアップ研修とは、ある研修が終わってから一定の期間が経った後、その学習効果をさらに高めるための研修です。研修内容の理解をより深めてもらったり、フォローアップ研修で新たな目標を設定し、研修での学習と現場での実践というPDCAサイクルを通してスキルアップを促したりするために行われます。
研修で学んだことを実践して、業務に活かして何らかの成果につなげてこそ、研修の効果があったといえます。ただ、職場を離れて集合教育を受けるため、受講者全体の能力を向上させることはできても、個人個人のレベルがどれだけ向上したかはわかりにくいものです。研修を実施しただけでは、実践の場と研修で学習したことの違いや理論と実践の違いを理解し、現場でどれだけ学んだ知識やスキルを生かせているのか、本当の効果が見えにくい点が課題として残ります。
フォローアップ研修は、習得状況の把握、実践での疑問点の解決により、先の研修での不安を解消し、社員のさらなる学びを促すことが可能です。また、フォローアップ研修が実施されることが事前に決まっていると、社員のなかで「学んだことを実践しなければ」という気持ちが働いて研修をやり過ごすことがなくなり、よい緊張感の醸成にも役立ちます。
加えてフォローアップ研修は、新人社員をサポートするものとしても重視されています。新人は、新人ゆえに初めての業務に不安や戸惑いを当然ながら感じるものです。人によっては人間関係もうまく掴めず、余計にネガティブな気持ちを抱きます。
これらの困難な状況を乗り越えてもらうためには、研修を通して単に業務のノウハウを教えるだけでなく、研修後に新人の「できそう・やれそう」という自己効力感と「自身のありのままを理解し認める」という自己肯定感の両方を損ねないようにケアすることが大切です。自己効力感が低いと「私にはできそうにない」とチャレンジを恐れてしまいますし、自己肯定感が低いと「なぜ私は同期と同じようにできないんだ」と現状を理解できず混乱しやすくなります。この2つの感覚を高めるためにも、フォローアップ研修は有効なのです。
フォローアップ研修の4つのステップを紹介します。
フォローアップ研修は、前回の研修で学習したことをさらに定着させるために実施することが多いですが、どの点に軸足を置くのかを、決めて実施したほうが効果が高まります。
それを軸にどのような課題があるかを考え、テーマを組み合わせることで、フォローアップ研修のカリキュラムも決めやすくなります。以下は、課題やテーマの一例です。
実施タイミングは画一的に決められているわけではありません。目的に応じて、3カ月後、半年後、1年後などと決めている組織が多いです。
3カ月後に実施するフォローアップ研修は、復習や知識定着が大きな目的になります。前回の研修で学習したことをどのように現場で活かしたのかを確認し、不安や悩みなど躓いている部分を解消します。
半年後に実施するフォローアップ研修は、前回の研修で学習したことを活かして、成果や課題が明確になってきている時期です。研修の中で、良かった点・改善点を振り返り、次の目標設定につなげます。慣れから生じる中だるみの防止にも効果的です。
1年後に実施するフォローアップ研修は、1年全体を通しての総合的な振り返りの場となります。この1年の成長を実感しモチベーションの向上を図るとともに、自身の成長の方向性を見出し、中期的なキャリアプランのイメージを持ってもらいます。
目的とタイミングが明確になったら、カリキュラムを決めます。フォローアップ研修の中で、振り返りを実施してもよいですが、事前課題を出しておいて当日持参してもらうことで、より研修受講の重要性を理解させることも可能になります。
事前課題の内容は、以下のようなパターンが考えられます。
フォローアップ研修のカリキュラムは、以下の内容を組み合わせて実施することが可能です。すべてを実施するわけではなく、必要に応じて組み合わせることが大切です。
前回の学習を定着化させたり、不安を解消したりするためにも、一方的な講義ではなく、個人ワーク、グループディスカッション、プレゼンテーションなどを組み合わせて実施すると効果的です。
研修は、自社で実施する場合と、研修サービスを提供している専門の会社や講師に依頼するパターンが考えられます。
自社で実施する場合、コストが抑えられる点と講師が受講者の事情を理解しやすい点がメリットとなります。ただし、講師と受講者の精神的な距離が近いため、客観的な視点に立ちにくくなるというデメリットもあります。
研修会社を利用する場合、汎用的なスキルや理論を利用できる点、客観的な視点での課題解決が可能になるという点はメリットです。ただし、当然ながらコストは自社で実施するよりも必要になります。
フォローアップ研修を効果的に実施するためには、失敗例とその解決策を知っておくとよいでしょう。以下にいくつかの例を示します。
職場の育成手法には、OJT(職場内教育〈On the Job Training〉)、Off-JT(研修などの職場外教育〈Off-the-Job Training〉)、自己啓発の3種類があります。フォローアップ研修は、研修の効果を高めるメリットがありますが、それを実施するだけでは人は勝手に育ちません。
むしろ、この3つの育成手法を組み合わせるからこそ、研修もフォローアップ研修も効果が高まります。組み合わせで効果を高められるようにするとよいでしょう。
OJT | Off-JT | 自己啓発 |
---|---|---|
・OJTは個人個人のレベルアップが目的である ・職場内で仕事に直結して実践的に教育できる ・どのような能力をどこまで期待しているかを個別に指導できる ・上司の熱意と能力で成果が左右される |
・Off-JTは教育体系に基づいて実施される ・職場を離れた集合教育で個別指導ではない ・全体のレベルアップが目的 ・上司や先輩の関与は少ない |
・自己の意思で自己能力の向上と人間性の形成をはかる ・強烈な目的意識と将来のあるべき姿、目標を明確にする必要がある |
上記のように、研修のサポートをフォローアップ研修だけに任せるのもよくありませんが、研修にしろフォローアップ研修にしろ、学習した内容の活用を個人に任せるのも効果を下げてしまうため注意が必要です。人間は、注目されれば頑張りますが、注目が低ければさぼったり、やらなくなったりと楽なほうに流れていきます。
また、職場のメンバーがフォローアップ研修をしても内容の重要度を理解できず、研修は研修、現場は現場と分けて考えてしまうようでは、研修の意味がありません。研修は、体系的に幅広い知識やスキルを短期的に学習できるというだけでなく、職場を離れることで視野を広げるという効果が重要です。フォローアップ研修で学習した内容を現場で活かしてもらえるよう、学習内容を職場で共有したり、OJT計画書を作成して職場ぐるみで育成に取り組むとよいでしょう。
フォローアップ研修は、いわゆるPDCAサイクルを回す手段です。
研修で学習したことを現場で実行し、現場で振り返りをするとともに、フォローアップ研修を挟む。そこで現場での学びに意味づけを行うことで、「なるほど、こういうことだったのか」という腹落ち感を社員に与える。それによって、社員の仕事に向き合う姿勢を高め、次のアクションへの結びつけを促すのがフォローアップ研修の意義です。
「研修している暇があったら現場で働いて欲しい」とは思わず、この1日が、今後の成果につながると信じて実施してほしいと思います。
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