研修費の勘定科目は?仕訳方法や税務上の注意点を具体例を交えて解説
研修に関して使用する勘定科目は、研修費が一般的です。しかし、注意をしないと自社及び従業員などに不利な処理をしないといけない場合があります。今回の記事では仕訳で使用する科目を紹介し、さらに不利にならないためには、どのように資料を保管すべきかについても解説します。
研修に関して使用する勘定科目は、研修費が一般的です。しかし、注意をしないと自社及び従業員などに不利な処理をしないといけない場合があります。今回の記事では仕訳で使用する科目を紹介し、さらに不利にならないためには、どのように資料を保管すべきかについても解説します。
従業員など(従業員や役員、内定者)が研修を受けたときに発生した費用に用いる主な勘定科目は、研修費、福利厚生費、給与、新聞図書費、雑費です。
基本的には研修費が使用されますが、研修の内容によっては研修費で計上できないときがあります。
どのような場合に研修費として計上できるか、それ以外の場合はどのような勘定科目を用いる必要があるのかを紹介します。
そもそも研修とは、従業員や役員、内定者が業務を行ううえで、知識や技術を向上させていくために受講するものです。そのため、下記の3点に該当する研修であれば、研修費として計上することが可能です。
例えば、工場勤務の従業員に新技術に関する講座を受講してもらう、経理部員に簿記3級を取得のための講座を受講してもらう、といったときに発生した費用は研修費として計上できます。新入社員に対してビジネスマナー研修を受講してもらうときの費用も可能です。
【例】新入社員の研修費用200,000円を現金で支払った
借方 | 貸方 | ||
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研修費 | 200,000円 | 現金 | 200,000円 |
最近は、ビジネスパーソン向けの教育サービスが充実してきており、英会話や経営学、マーケティングなどのビジネススキルを身につけられるオンライン講座も増えてきています。
それにあわせて、従業員に対し、これらのサービスを受ける際に補助を出すという企業もあるでしょう。
これらの研修の特徴は、業務には直接関係はしないものの、従業員がビジネスパーソンとして持ち合わせる教養となる点です。このような研修に対して補助を出す際、以下の条件を満たすと、福利厚生費として計上することが可能です(これらの条件を満たしていない場合は給与と認定されます)。
【例】従業員がいつでも受けられるようにオンライン講座300,000円の支払いを現金で行った
借方 | 貸方 | ||
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福利厚生費 | 300,000円 | 現金 | 300,000円 |
研修のなかには、業務のためだけでなく、従業員などが自分自身の能力向上のために受けるものもあります。
こうした研修は、ここまで紹介した研修費や福利厚生費の要件を満たしていないとみなされることがほとんどです。本来は従業員が自分の給与のなかから受講すべきものという考えから、勘定科目は給与を用いるのが一般的となっています。
また、税理士・公認会計士・社会保険労務士など、独立自営可能で個人に属する資格に関する研修の場合も、研修費や福利厚生費とすることはできずに、受講した従業員の給与などになります。
なお、従業員の給与となる場合、企業は源泉徴収を行う必要があります。一方、従業員も実際に金銭は受領していないものの、所得税や住民税が発生します。さらに役員の場合は、賞与として認定されることになります。役員賞与を経費にする場合には一定の制限がかかるため、注意が必要です。
【例】人事部所属社員が社会保険労務士資格を受験するための予備校費用50,000円を現金で支払った。なお、源泉徴収は5,000円である
借方 | 貸方 | ||
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給与 | 55,000円 | 現金 | 50,000円 |
預り金 | 5,000円 |
研修を従業員などの知識や能力の底上げと捉え、その一環として講義を受けさせるだけではなく、書籍を購入して社内の本棚に置いておき、従業員などがいつでも読むことができる状況にする企業もあるでしょう。
その場合は、新聞図書費とすることが考えられます。新聞図書費を勘定科目として使用していない場合は消耗品費でもよいでしょう。
【例】自社の技術に関する専門書10,000円を購入し、本棚に格納した
借方 | 貸方 | ||
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新聞図書費 | 10,000円 | 現金 | 10,000円 |
従業員が少ないなどで、研修費がほとんど発生しない企業もあるでしょう。その場合は、金額が少額となることから、重要性がほとんどないため、雑費として計上してしまって問題ありません。
ただし、従業員が増えてきて年間の総額が増加し、発生頻度も高くなれば、研修費として計上するようにしましょう。
【例】従業員が受講した業務に関する研修5,000円を現金で支払った
借方 | 貸方 | ||
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雑費 | 5,000円 | 現金 | 5,000円 |
研修を行う際に、付随的に費用が発生することがあります。それらの費用はどの勘定科目を使うことができるかについて解説します。
研修会場までいくときにかかった交通費は、研修費または旅費交通費として計上することができます。研修費として請求されるなかに交通費が含まれているなら、研修費として計上し、従業員などが通勤などの通常の交通費と同様に精算をする場合は、旅費交通費として計上するとよいでしょう。
1日を通して開催される研修の場合は、昼食で弁当が出されることがあります。研修中の昼食は研修費として計上することが可能です。
ただし、これらの弁当代は、一般的に常識の範囲内での金額である必要があります。過度に高いものだと交際費となり、場合によっては損金に算入できなくなってしまうので注意しましょう。
また、研修後の懇親会に関しては研修費にはなりません。あくまで研修時間内である必要があります。
遠方で開催され、複数日にわたる研修の場合は、宿泊が発生することが想定されます。その場合は、研修費または旅費交通費として計上することができます。
研修費として請求されるなかに宿泊費も含まれていたら、研修費として計上し、自身でホテルを選択して宿泊する場合は旅費交通費として計上すると管理がしやすいでしょう。
研修受講の際に、テキストや書籍を購入する必要がある場合は、研修費として計上することができます。研修で必要な書籍などの場合は、研修終了後に会社の本棚にて保管されるようなものではなく受講者の手元に残ることから、新聞図書費ではなく研修費が適切です。
自社で研修を開催し、講師を招いたときに支払った講師への謝礼金は研修費として計上することが可能です。
また、1日研修の場合で昼食の弁当を出す場合も、食事代と同様に研修費に含めることができます。ただし、別室で役員等と弁当を食べる際には、会議費にすることも考えられます。研修終了後に懇親会の場を設ける場合は、通常の交際費に該当します。
なお、講師が個人事業主の場合、支払った謝礼金には基本的に源泉徴収が発生します。忘れないようにしましょう。
内定者に対して、業務上必要な研修を行う場合は、研修費として計上することができ、本人の給与とならないことはすでに説明しました。その場合、1日あたりの日当を払う企業もあるでしょう。
この日当も使用人との関係を踏まえて適切なバランスが保たれている基準により計算されている場合は、研修費に含めて計上することができ、内定者は給与として課税されずに済みます。ただし、この場合は、日当規程を定めて日当受領書を内定者から入手するなどの対応が必要です。
ここでは研修費を仕訳をするときの注意点を紹介します。
研修のなかには、1日では終わらず、数カ月から1年といった長期間に渡って開催されるものもあります。
その場合、受講料は前払いで払うことが一般的です。支払時は、研修費としても決算のタイミングで期間に応じて、まだ未受講分となっている分は前払費用にします。そのため、長い研修を受講させている企業の場合は、期間の管理が必要です。
研修費は、税務調査が入った際に注目される勘定科目です。使用する勘定科目のところでも記載した通り、研修の性質によって勘定科目が変わるからです。
研修費として計上していた場合、企業側は源泉徴収をしていないのが普通のため、もし税務調査で研修費ではなく給与として認定されてしまうと、源泉徴収義務違反と言われてしまいます。また、従業員側も所得が発生して所得税や住民税が増加してしまいます。
こうしたリスク対策のため、研修がどのような内容であったかを外部に説明できるように資料を残しておく必要があります。
資料の残し方としては、受講してもらった従業員に研修内容を報告してもらうということが考えられます。そうすると、従業員が出席したという事実も確認できますし、内容もわかることから、業務に必要であるという説明もできます。ただ、この方法は従業員側から「手間だ」「面倒だ」と反発を受けることも多いので、採用するときは十分な説明が必要です。
ほかにも、研修で使用されたテキストを残すということも考えられるでしょう。
冒頭にも書いたとおり、研修費は基本的には、従業員など、自社に勤めたりこれから勤める予定の人に対して支出するものです。しかし、取引先の社員も交えて研修を行うこともあります。
この場合は、交際費に該当する可能性も出てきます。そのため、研修の参加者は常に把握できるようにする必要があります。
個人事業主も自身の業務に必要な研修を受けることはあります。業務に必要な研修であれば、経費にできますが、自身の業務に必要でない研修は当然ながら経費にすることはできません。
個人事業主の場合は、業務との関係性に関する説明資料の保管について、より注意を払う必要があります。
研修費は意外と注意すべき項目が多いことが特徴です。また、説明資料として保管すべき資料もテキストや出席簿など、種類が他の経費と比較して多いことも特徴と言えるでしょう。
しかしながら、研修費は企業の品質向上のためには惜しんではいけない費目です。適切に資料を残せる管理体制を整えながら、研修体制を充実できるとよいのではないでしょうか。
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