目次

  1. 証憑書類とは
    1. 証憑書類の重要性
    2. 証憑書類と帳票や証票との違い
  2. 証憑書類の種類
    1. 取引の事実を証明するもの
    2. 価格を証明するもの
    3. 出荷や納品の事実を証明するもの
    4. 入金、出金の事実を証明するもの
    5. 会社としての意思決定を証明するもの
  3. 証憑書類の保存方法
    1. 証憑書類の保存期間
    2. 証憑書類の保存方法
  4. 証憑書類の取扱いで気を付けるべきこと
    1. 仕訳伝票と一緒に保存し、探しやすくする
    2. 証憑書類の証拠力に違いがある
    3. 廃棄するときには形が残らないようにする
  5. 証憑書類の意味を理解して、適切に管理

 証憑書類(しょうひょうしょるい)とは、取引の事実を証明する証拠となる書類をいいます。日常生活ではあまり馴染みがないかもしれませんが、会計の現場では頻繁に使われる言葉です。

 企業で身近な証憑書類としては、契約書や請求書などが挙げられます。

証憑書類とは
証憑書類とは(デザイン:紀井佑輔)

 証憑書類は、取引の内容、日時、金額など、重要な情報の記録を目的として作成されます。経理を行ううえでは欠かせないものであり、社内・社外のどちらの場合もあります。

 たとえば、社内の証憑書類は稟議書や会議の議事録などであり、社外の証憑書類は請求書や領収書などです。

 証憑書類をなくしてしまうと、どんな取引がいつ、誰と行われたのかわからなくなってしまうため、とくに証憑書類のなかでも税法に関わるものは、7年間の保管が義務づけられています。

 もし証憑書類を保管していなかった場合、税務調査のときにその取引はなかったものと判断され、経費が認められず、追徴課税となる可能性があります。また、会計監査においても監査意見を出すことができなくなるかもしれません。

 他にも、対外的に説明する機会がある場合に証憑書類がないと、自社に非常に不利な状況になると考えられます。そのため、適切な保管が求められます。

 証憑書類と似たような用語で、帳票と証票があります。それぞれの意味は以下のとおりです。

書類 内容
帳票 仕訳帳や売上帳のような帳簿と、仕訳伝票などの伝票の総称
証票 証明するための札や書き付けなどのこと。たとえばチケットの紙片など

 帳票とは、会計などの業務を行う際に社内で作成する帳簿や伝票などになります。帳票に記載した取引などの証拠書類として、証憑書類があるという位置付けになるため、2つは別物です。

 一方、証票とは、証憑書類の定義の範囲内に収まるものになります。

 証憑書類の種類には、さまざまなものがあり、何を証明できるのかが異なります。ここでは、主に会計に関する証憑書類について、証明できるものもあわせて紹介します。税務調査や公認会計士の会計監査では、これらの書類を要求されることがよくあります。

書類名 内容
契約書 取引に関して契約を取り交わす際の書類。取引の都度、契約書を締結することもあれば、取引基本契約書のように、取引開始時に取り交わすこともある。細かな条件が書かれていることが多い
注文書 契約書を取り交わすほどでもない取引や、取引基本契約を締結しているときに発行して、注文する書類
発注書 実際に発注する際に取り交わす書類

 契約書、注文書、発注書は、取引の開始時に作成され、取引が行われたことを証明する書類になります。

 細かな取引の条件などが記載されていることも多いため、中身を確認して、自社側に不利になるような条件が付されていないかを確認しましょう。

書類名 内容
見積書 取引開始前に、双方で金額の合意をとるための書類
請求書 取引完了後に、金額を請求するときに発行する書類
契約書 価格が記載されている場合は、取引価格もあわせて証明する書類となる

 取引の際の価格がいくらだったのかは、仕訳をするときに非常に重要な情報です。価格を確認するには、主に見積書、請求書、契約書の証憑書類を用います。

 仕訳をするときの取引金額を証明する証憑書類であり、外部に価格を説明する際にも使われます。

書類名 内容
納品書 物品を納品したときに、納品を受けた側がサインをするなどして、納品したことを確認する書類。請求書と一体化していることも多い
業務完了報告書 物品ではなく、サービスを提供した場合に、発注側が業務が完了したことを確認するために作成する資料
検収書 発注側が物品の検収を行い、受け取ったことを確認する書類。個数や仕様に適合した物品が納品されたかを確認するときに、納品書の代わりに発行される
配送伝票 出荷したときに配送業者から発行される配送伝票。個人への販売などでは、納品書が入手できないことも多く、配送伝票で出荷の事実を確認することがある

 取引の契約が行われても、実際にその取引が契約通りに行われたかどうかは、取引の事実を証明するものだけでは判断がつかないことが多いです。

 その際には、取引が完了したことを確認する証憑書類が必要です。仕訳をするときにも、いつの取引かを確認するときにも、利用します。

書類名 内容
領収書 お金を受け取ったことを証明する書類。受け取った側が発行する
通帳 紙の通帳で記帳すると、確認できる入出金一覧
入出金明細 ネットバンキングなどで入出金を確認する明細
納税証明書 税金を納めたことを証明する書類。税務署に請求をすると発行される
払込書 銀行などの窓口やATMで支払う際に使用する書類。収納済みなどの押印がされる

 売上や仕入は基本的に掛け取引で行われることが一般的です。そのため、請求書や納品書といった取引時点の書類だけでは、実際に取引先から入金されたのか、はたまた取引先に支払ったのかわからずに売掛金、買掛金として残ってしまうことがあります。

 また、入金や出金がなければ、架空の取引と疑われる可能性もあります。そのため、入金や出金の資料も適切に保管しましょう。

書類名 記載内容
稟議書 担当者が起案をして、上長が承認を行う書類。取締役会にかけるほどの取引でなくとも、一定金額以上の場合には稟議書で決めることが多い
取締役会議事録 会社として重要な意思決定をする場合は、取締役会にて決定する。その議案を審議している取締役会議事録が重要な証憑となる

 稟議書や取締役会議事録は、会社として取引を行うことを決定した経緯を証明するものになります。取引によっては、なぜこの取引をしたかの説明を求められることがあります。この2つには、取引を行うことを決定した経緯が示されていることが多く、また社内の意思決定権限者が承認していることから、説明しやすい証憑書類です。

 次に、証憑書類を保存する期間とその方法について紹介します。

 証憑書類の保存期間は、法人と個人によって異なります。どちらも証憑書類を保管しておく必要がありますが、それだけでなく、会計帳簿なども保管しておかなければいけません。そのため、ここでは証憑書類とあわせて会計帳簿などの書類の保存期間も紹介します。

形態 書類名 年数 根拠法
法人 証憑書類 7年※ 法人税法
会計帳簿及び事業に関する重要な書類 10年 会社法
個人 証憑書類 7年 所得税法
会計帳簿 7年 所得税法

 ※青色申告をして欠損金が発生した事業年度、または青色申告をせずに災害損失金額が生じた事業年度の場合は10年間になります。

①法人の場合

 法人の場合、会社法と法人税法の適用を受けます。そのため、2つの法律から最も長い期間に合わせる形を取りましょう。総勘定元帳などの会計帳簿は10年間保存します。

 一方、証憑書類は7年間保存すればよいのですが、欠損金(赤字)だった場合、法人では発生した年から10年間控除することが可能なので、赤字の場合は、いずれの書類も10年間保存しましょう。

②個人事業主の場合

 個人事業主の場合は、所得税の適用を受けます。そのため、会計帳簿及び証憑書類は7年間保存します。また、前々年の事業所得及び不動産所得の所得額が300万円以下の小規模事業者は、5年間保存します。

 証憑書類の保存方法は、大きく分けて2つあります。紙で保存するか、電子で保存するかです。

 紙で保存する場合は、入手した証憑書類をファイルに綴じ込みます。なお、ファイルに綴じ込む時は、すぐに探せるような工夫が大切です。

 一方、電子で保存することもできます。電子で保存をする場合には、e-文書法と電子帳簿保存法があります。e-文書法は証憑書類も含めた広い範囲に対応する法律で、電子帳簿保存法は、国税関係書類に関する法律です。経理では、電子帳簿保存法を意識しましょう。

 電子帳簿保存法では以下の3つの区分があります。

  • 電子取引(メールやインターネットを介した取引)
  • 電子帳簿・電子書類(会計ソフト等のパソコンを使用して作成したもの)
  • スキャナ保存(取引関係書類を画像データ化したもの)

 それぞれの区分について、要件が定められているため、しっかりと把握をして保存をするようにしましょう。

 証憑書類の取扱いで気を付けるべきことについて紹介します。

 証憑書類が必要になるのは、仕訳の内容を確認するときです。そのため、紙であれ電子であれ、仕訳伝票とともに保存をすることがよいでしょう。

 税務調査や会計監査では、仕訳伝票とともに証憑書類を要求されることがあります。そのときに仕訳伝票と一緒に保存しておけば、証憑書類を探す手間が省けます。証憑書類を見つけるのに時間がかかると、監査の心象は非常に悪くなります。

 また、過去の取引の経緯を知りたいと思い、見返すこともあると思います。そのときも一緒に保存しておくことで、探す労力が減ります。

 証憑書類は、さまざまなものがありますが、証拠力に違いがあります。

 自社のみで作成できるものは証拠力が低くなります。一方、取引先などの第三者が作成したり印鑑が押印されているものなどは高い証拠力があります。

 税務調査や会計監査で資料を提出する際に、証拠力が高いものを提出すると追加の資料依頼は少なくなります。

 証憑書類には、保存期限がありますが、その期限をすぎたら廃棄して問題ありません。

 しかし、証憑書類には、個人情報をはじめとした重要な情報が載っています。そのため、燃えるごみや資源ごみとして出さず、形が残らないように溶解サービスを利用したり、シュレッダーをかけた上で廃棄するようにしましょう。証憑書類が流出すれば企業の信用問題に発展します。

 必ず厳重に管理をし、廃棄する際にも細心の注意を払いましょう。

 証憑書類にはさまざまなものがあり、それぞれの意味があります。保管方法や保管期限なども書類によって異なりますが、どの証憑書類も第三者に対して取引の事実を証明する重要なものです。万が一、証憑書類がないとなると自社に不利な状況になりかねません。

 証憑書類の意味を理解して、いざというときにすぐに出せるように適切に管理しましょう。