フィードバックとは?ビジネスでの効果的な実践方法やコツを紹介
部下の成長を支援する効果的なフィードバックとはどのようなものでしょうか。フィードバックは、個人の能力を伸ばし、仕事の成果が向上する可能性があります。この記事では、キャリア支援の専門家が、ビジネスにおける効果的なフィードバックの実践方法やコツをお伝えします。
部下の成長を支援する効果的なフィードバックとはどのようなものでしょうか。フィードバックは、個人の能力を伸ばし、仕事の成果が向上する可能性があります。この記事では、キャリア支援の専門家が、ビジネスにおける効果的なフィードバックの実践方法やコツをお伝えします。
目次
フィードバックとは、ある物事の結果やそこに至るまでのプロセスについての評価を共有し、次に活かすことです。ビジネスにおいては、上司が部下のパフォーマンスやモチベーションを上げるための手段としてよく用いられます。
ここでいうパフォーマンスとは、仕事に対する姿勢と成果のことです。
部下にとって厳しい内容の指摘であっても、さまざまな方法で適切にフィードバックを行えば、その後の行動計画に活かし、成果につなげることができます。
ビジネスは、組織内の一人ひとりのパフォーマンスが集まって成立しています。そのなかで、とくにリーダーや上司の役割は、部下やメンバーが業務を通して成長し、仕事の成果を向上させることです。
そのため、日々の業務に対するフィードバックはとても重要です。
「令和元年版 労働経済の分析」によれば、「自己効力感や仕事を通じた成長実感の向上といった観点からは、日常業務に対する上司からのフィードバックが実施され、その頻度が相対的に高いこと、その上で、手法としては、働く方の具体的な行動について、行動した内容の重要性や意義について説明しながら、行動した直後に誉めることが肝要であることが示唆された」とあります(引用:令和元年版 労働経済の分析 p.236丨厚生労働省)。
いいかえると、上司からのフィードバックの質(頻度の高さ、内容、タイミング)が、部下の自己効力感や、本人の成長実感の向上に影響を及ぼすということです。
したがって、フィードバックは、組織全体のパフォーマンスにも影響するため、決して軽視していいものではありません。
フィードバックには、主に以下の3つの効果が考えられます。
部下の業務上の言動に対してフィードバックを行えば、仕事への姿勢や成果の向上が期待できます。
自分ではなかなか気づけない行動習慣や曖昧なまま進めていた業務など、客観的な指摘を得ることで、改善する点が明確になります。そうすると、次に業務にとりかかるときに意識でき、またその業務終了後にもフィードバックを得ることで、改善を継続できます。
パフォーマンスの向上は、上司のフィードバックの質と部下の受け止め方の2つの要素が影響します。そのため、上司と部下の両方にスキルが求められるといえます。
フィードバックは、上司から部下への存在認証として大きな意味を持ちます。
部下は、フィードバックによって上司が自分の存在を気にかけているのを感じ、さらに認めてもらおうと仕事に対するモチベーションが向上します。
また、適切なフィードバックをもらうことで、部下は仕事に関する理解が深まり、自分の役割と重要性を認識することができます。
その結果、部下の業務に対する当事者意識が高まり、仕事へのモチベーションが向上するでしょう。
上司が部下にフィードバックをすることは、実は部下だけではなく上司の成長を促す効果もあります。
フィードバックを繰り返し実践することで、それぞれの部下にあわせたフィードバックの仕方や、タイミング、頻度などが経験として蓄積されます。おのずとマネジメントのスキルが磨かれ、部下との信頼関係が深まるでしょう。
上司から部下へのフィードバックは、双方が成長する機会といえます。
フィードバックには、主に2種類の方向性があります。
ポジティブフィードバックとは、部下の行動の良い点をフィードバックする方法です。部下は自分の行動や判断が正しかったと感じ、自信を持つでしょう。
自信がない部下でも、ポジティブフィードバックによって、自己効力感が高まることがあります。
ポジティブフィードバックを上手く使うことで、部下のモチベーションを保ちつつ必要な行動の変化につなげることができます。
ネガティブフィードバックは、部下の行動の問題点を指摘して、改善を促すフィードバック方法です。
ネガティブフィードバックの場合、上司のフィードバックスキルが低いと部下が指摘を素直に受け入れられず、改善の行動に取り組むどころか反発を招く恐れがあるため、注意が必要です。
ネガティブフィードバックを部下が受け入れられる姿勢を持つためには、上司として日頃から部下との信頼関係を作っておくことが重要です。
効果的なフィードバックを行うための実践方法を3つ紹介します。
ネガティブなフィードバックを受け入れやすくするために、サンドイッチのようにネガティブな情報をポジティブな情報で挟んで(褒める→改善点を指摘する→褒める)ネガティブなインパクトを和らげて伝える方法です。
実践例 |
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先日の客先での報告書、簡潔にまとめられていてとても良くできていました。部長もわかりやすいと評判がよかったので安心しました。 ただ、報告書の作成にかなり時間をかけたことで、他の仕事がずいぶん遅れているようですね。できれば、今後は他の仕事とのバランスにも配慮して準備してください。 報告書は本当に完璧といっていいほどよくできていたので、次回の報告書も、ぜひその調子で頑張ってほしいです。 |
この方法の注意点としては、ネガティブなインパクトを和らげようとするあまり、褒める部分を強調しすぎると、本来一番伝えるべき「改善点の指摘」を軽く感じさせてしまい、改善の必然性や重要性が伝わらない恐れがあることです。
シンプルで実践しやすい方法ですが、効果を半減させないよう、褒める部分のさじ加減に注意が必要です。
SBI法はフィードバックをする際に、「Situation: 状況」「Behavior: 行動」「Impact:影響」の順にわかりやすくフィードバックするという方法です。
この方法を用いるときは、できるだけ客観的な数字に基づいて話し、主観や評価をできるだけ入れないようにすることが大切です。そうすることで、相手も感情的にならずに、受け入れることができます。
本人が納得できれば、指摘された内容をもとに、解決策を自分で考えるように促すことができます。
実践例 |
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(S)先月のイベントの報告書ですが、提出期限を1週間過ぎています。他のメンバーは全員提出済みなので、あなたの報告書だけを待っている状態です。 (B)提出が遅れるとの連絡も受けていません。 (I)今日中に部長に提出しないと、チーム全体の評価にマイナスの影響が出てしまう恐れがあり、心配しています。 |
この内容を口頭でフィードバックする際は、相手の人格に対する否定や攻撃をしていると誤解されないよう、語気や顔の表情などに注意し、厳しい指摘であっても相手への人としてのリスペクトを忘れないことが非常に重要です。
ペンドルトンルールは、上司が部下に対して一方的にフィードバックを行うのではなく、部下が自分で改善のためのアクションプランを考えるように促すというフィードバック方法です。
この方法は、上司と部下の対話を促すことにより、課題に対する部下の主体的な取り組みを引き出すことが特徴です。
実践例 |
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上司「先週X社に対して行ったプレゼンについて、振り返ってみてください。良かった点や上手くいったと思った点はどうですか?」 部下「はい、時間配分については予定通りでうまくいったと思います」 上司「そうですね、リハーサルの成果があったと思います。ちょうど良いペースで進行していました」 部下「次は、もう少し内容にメリハリをつけたプレゼンができるようにしたいです」 上司「それは良いですね。それに加えて、プレゼン中にスライドの方ばかりを見ていたように感じたのですが、どうですか」 部下「緊張していたので、自分ではクライアントのほうにも視線を送っていたつもりなのですが、次回はプレゼンの練習の時から視線を向ける場所にも注意を向けて練習しようと思います」 上司「いいですね。では、プレゼンの練習を動画に撮って、一度自分の視線の向け方を確認してみるのはどうですか」 部下「自分のプレゼンを見るのは恥ずかしい気もしますが、それをすれば改善点がはっきりわかるので、やってみたいと思います」 |
ペンドルトンルールの場合、部下が自ら改善点を修正するためのアクションプランを考えて行動することがポイントです。そのため、上司はそれをサポートする提案に留めておき、改善方法を強制しないように注意が必要です。
フィードバックを行ううえで心得ておくべき点を3つ紹介します。
フィードバックは、その内容がネガティブな指摘であることが多くなりがちですが、部下に伝える際は、それまでの部下の言動や状態を良く観察しておくことが大切です。
部下と上司という関係は、あくまでも仕事上の役割であり、まず人と人との関係です。
年齢や性別、仕事上のパフォーマンスの優劣に関わらず、まずは人として相手への尊敬の気持ちを忘れずに、信頼関係を構築しておくことが、フィードバックを効果的に実践するうえでの大前提です。
フィードバックを行う際は、それまでの観察と事実に基づいた客観的なデータや情報をもとに伝えることが重要です。
部下にとって、上司からのフィードバックは、ポジティブなフィードバックよりもネガティブなフィードバックが多いと感じるのが一般的です。
フィードバックが、客観性のない偏見や先入観からきていると部下が感じると、肯定的に受け取るのが難しくなるでしょう。
フィードバックを伝えるときは、部下が納得しやすい情報を添えて、具体的に改善すべき点が分かるように伝えることがポイントです。
フィードバックは、その指摘が客観的な事実に基づいたものであっても、ネガティブなものばかりが続けば、聞き続けるのは難しくなります。
フィードバックを効果的に活用するには、ポジティブなフィードバックとネガティブなフィードバックを上手く組み合わせて、伝えるようにするのがおすすめです。
これは、1回のフィードバックにサンドイッチ話法を使うという意味ではありません。フィードバックがネガティブな内容ばかり続かないように心がけ、部下の心理面に配慮することが大切です。
上司から部下へのフィードバックは、内容はポジティブでも、立場上、威圧的に伝わりやすいものです。
しかし、部下の前向きな行動の改善を促すには、部下に対する人としての尊敬が欠かせません。
とくに、人事評価のあとのフィードバックでは、部下の成果だけに焦点をあてたフィードバックに終始しないように、配慮が必要です。
本人の人柄も含め、尊敬の気持ちを持ってフィードバックすることが重要であり、効果的なフィードバックを実践して、組織全体の成長につなげていきましょう。
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