目次

  1. 営業成績を上げるために見直したいポイント
    1. 営業担当の商品知識は十分か?
    2. 商談で営業担当ばかり話していないか?
    3. 営業担当として信頼性や安心感があるか?
  2. 営業成績を上げる方法①:基本スキルの習得
    1. 商品知識力
    2. 信頼力
    3. ヒアリング力
  3. 営業成績上げる方法②:営業分析
    1. 営業分析とは 
    2. 営業分析の基本ステップ
    3. 営業分析ツール
  4. 営業成績を上げる方法③:心理学的テクニックの活用
    1. ミラーリング効果 
    2. バックトラッキング効果(オウム返し)
    3. ザイオンス効果
    4. ドア・イン・ザ・フェイス効果
  5. 営業担当者が営業成績を上げるコツ
    1. 実行と改善を繰り返す
    2. 顧客コンタクト数を増やす
    3. 上司をうまく利用する
  6. 営業成績向上を目指す際に気をつけたいこと
  7. 成功の秘訣は「積極的」「肯定的」「楽観的」

 営業成績が伸び悩んでいるときに見直したいポイントは、以下の3つです。

  • 営業担当の商品知識は十分か?
  • 商談で営業担当ばかり話していないか?
  • 営業担当として信頼性や安心感があるか?

 それぞれについて解説していきます。

 営業担当として重要なことは、自身が販売する商品やサービスの商品知識を十分に取得していることです。なぜなら、商品やサービスに対する理解度が低い営業担当は、商品の魅力を顧客に十分に伝えられないためです。

 商品知識が浅く、不安を感じる営業担当からは誰も買いたいとは思いません。特に高価な商品やサービスになればなるほど、なおさらその営業担当と永く付き合いたいとは思わないでしょう。営業担当は商品知識を確実に身につけることが重要です。

 顧客の話を聞くことも大切です。顧客が抱える悩みや要望を聞き出すことで、適切な提案ができるようになります。

 経験の浅い営業担当は、商談になると自社商品の話ばかりをしてしまいがちですが、それだと一方的な営業になり、顧客は我慢を強いられてしまいます。

 初めから知っていることをすべて話すのではなく、顧客の話を親身に聞く姿勢を持ちましょう。

 営業担当として求められるのは、顧客に「好印象」を与えることです。新たに商品やサービスを購入する場合、顧客は「いいもの」を「いい営業担当」から買いたいと考えます。

 そのため、営業のときは、常に顧客目線に立ち「いい営業担当」と見てもらえるか自らチェックしましょう。なかでも、服装は基本的なことです。ブランド物や流行の服は要りません。顧客に落ち着いた印象を与えるスーツやジャケット、センスを感じさせるネクタイ、シワの無いワイシャツで清潔感ときちんとした印象を与えることが大切です。

 身なりのほかにも「真面目に取り組んでいるか」「約束をきちんと守れているか」といったように、信用できる営業担当になれているかどうか、客観的に見直してみてください。

営業成績を上げる3つの方法と見直したいポイント
営業成績を上げる3つの方法と見直したいポイント(デザイン:吉澤風香)

 営業成績を上げるためには、以下の基本スキルを身につけることが大切です。

  • 商品知識力
  • 信頼力
  • ヒアリング力

 順番に解説します。

 先述したとおり、営業担当にとって取り扱う商品やサービスの「商品知識」が十分であることが重要です。顧客は営業担当にあらゆる質問をしながら、「やはりこの商品でよさそうだ」と納得したうえで商品を購入します。

 もし質問した際に営業担当の答え方があやふやだと、顧客の購買意欲は下がってしまいます。顧客も事前にインターネットなどで下調べをしてくることが当たり前になっているため、自分より知識のない営業担当から買いたいとは思いません。

 商品のよさを十分に納得してもらうために、営業担当は商品の機能や特徴、他社商品に対する優位性などを確実に説明できるよう知識を身につけておくことが大切です。特に新しい商品を取り扱うことになった場合は、自分で納得がいくまで商品について勉強しておきましょう。 

 商品を購入してもらうためには、顧客に誠実さ・信頼感・安心感を与える力が必要です。

 顧客は「この営業担当から高価な商品を購入しても大丈夫か」「信用できそうか」「約束をきちんと守れそうか」のように、商談のなかで営業担当を評価しています。

 また、多くの顧客は類似商品のなかから2〜3社相見積もりをとり、複数の営業担当と商談をおこないます。法人の顧客の場合は、さらに多く見積もりを取って比較検討するのが当たり前です。つまり、営業担当として他社よりも高く評価してもらう必要があります。

 さらに、営業は商品を売って終わりではありません。営業担当として顧客に気に入ってもらえれば、次も声をかけてもらえたり、見込み顧客を紹介してもらえたりなど、可能性が広がっていきます。

 多くの顧客やオピニオンリーダーを紹介してもらえれば、営業としてこれ以上うれしいことはありません。顧客の購買行動を促すだけでなく、次なるチャンスをつかむためにも、自分は営業担当として顧客にふさわしいかを振り返ることが大事です。

 営業担当にとっては、ヒアリング力も重要です。顧客の話を聞くことで、最適な商品が提案できます。商談に入る前に、「お客さまは、なぜ買い替えようとしているのか」「購入重視点はどこなのか」「どんな使い方をしているのか」「予算感はどれくらいか」など、顧客に聞くことを考えておきましょう。

 そして、事前に考えておいた質問を、タイミングを図りながら投げかけていきます。いきなり自社の商品説明に入ってしまうのではなく、顧客の話をじっくりと聞くことが大切です。

 営業成績を伸ばす方法として、営業結果でなく、営業活動にかかわる活動プロセスを見直す方法があります。ここでは活動プロセスを分析する営業分析方法を紹介します。

 営業分析とは、過去の実績データを使って自社あるいは営業担当自身の営業活動プロセスを客観的に見直すことです。営業活動の改善点を発見することで、さらに効果的な営業活動ができるようになります。

 営業分析によって、不足しているアクションや成功につながりやすいアクション、見込み度の高い顧客層の抽出などの改善点を得ることができます。また、営業プロセスを見直すことは営業ノウハウを積み上げていくうえでも重要です。

 営業分析には、以下3つの基本手法があります。

  • 動向分析:業界トレンドなどの大きな市場動向をつかみます。
  • 要因分析:市場動向の要因を探ります。
  • 検証分析:これまでの分析結果を検証します。

 動向分析~検証分析を順番に進めるのが一般的です。ここでは、各ステップについて解説します。

①動向分析

 動向分析とは、自社が属するマーケットの業界トレンドや売れている商品の傾向などを把握するための分析です。業界に関するデータを、さまざまな切り口から図式化・グラフ化し、可視化することで業界全体を俯瞰的に捉えます。あわせて自社の売り上げデータと競合他社を比較し、自社と他者の販売傾向の現状を把握します。

②要因分析

 要因分析は、最初の動向分析で把握した業界の大きな流れや傾向をもとに、それらの傾向や状況について「おそらくこのような要因があるのではないか」と仮説を立てて分析していく方法です。しかし、この段階では単に仮説の状態であることから、次の検証分析では本当にこの要因で合っているのかを検証していきます。

③検証分析

 検証分析は、先の動向分析や要因分析によって得られた仮説を検証するための分析方法です。いろいろな資料やデータをもとに仮説を検証したり、予算に応じて実際に仮説と同じ方策を実施してみたりすることで分析します。検証分析で得た確かな営業分析結果を、自社の今後の戦略策定や具体的アクションにつなげていきます。

 営業分析には、ツールの活用が効果的です。営業分析ツールを活用することで、参考となるデータや営業スキルの属人化を防止したり、営業プロセスの効率向上につなげられたりするためです。ここでは「SFA」「Excel」の2つのツールを紹介します。

①SFA

 営業支援システムであるSFA(Sales Force Automation:セールス・フォース・オートメーション)は、営業分析に役立つツールの一つです。SFAを導入することで、売り上げの予実管理はもちろん、営業担当の行動管理・案件の進捗管理・顧客の一元管理が可能になります。SFAで蓄積したデータをもとに、より効果的なアクションを明らかにし、営業担当全員に共有していくことで、会社として大きな営業成果につなげられます。

②Excel

 Excelでも営業分析が可能です。多くの企業では予実管理や粗利管理などの営業データ管理をExcelでおこなっているので、馴染み深いでしょう。営業データを時系列やアクションごとにExcelへ入力し、一定期間蓄積された各種データを読み込むことで分析します。そして、分析結果を次のアクションにつなげていくのです。

 営業活動の改善には、心理学的テクニックを活用することも効果的です。ここでは、以下の心理学テクニックを紹介します。

  • ミラーリング効果
  • バックトラッキング効果
  • ザイオンス効果
  • ドア・イン・ザ・フェイス効果

 順番に見ていきましょう。

 ミラーリング効果とは、相手の姿勢やしぐさを、あたかも鏡(ミラー)に映っているかのように意図的にまねすることで、自分の仲間であると認識してもらうテクニックです。

 例えば、初対面の相手が同じ読売ジャイアンツファンであったときに「気が合いますね」となるように、自分と共通点の多い人に対して無意識に親近感を抱いてしまう心理的な効果を利用しています。

 このミラーリング効果を商談で活用することで、顧客に信頼感や安心感を持ってもらえます。商談をしている際に「購買担当者が資料を手に取ったら、自分も資料を手に取ってみる」「コーヒーを注文したら自分もコーヒーを注文する」「購買担当者がコーヒーを飲んだら、自分もコーヒーを飲む」といった具合に、相手と同じ行動を取るのが効果的です。

 ただし、このミラーリングをあからさまにおこなうと、相手からはわざとらしいと見られてしまうことがあります。少し間を置いてからまねすることを意識してみましょう。

 バックトラッキング効果は、相手の言ったことをそのまま口にする「オウム返し」をおこなうことで相手に安心感を与えるテクニックです。

 商談の最中で顧客が話しているとき、身動きもせずに聞いていると、顧客は「自分の話していることを理解してくれているのだろうか」「間違っていると思いながら聞いているのではないだろうか」と不安感を抱きます。話し手は聞き手が無反応であると次第に心配になってくるのです。

 バックトラッキング効果を活用すれば「私はちゃんとあなたの言うことを理解していますよ」「あなたを受け入れていますよ」と明確なメッセージを「話し手」に伝えられます。すると、顧客には「この営業はわかる人だ」と感じてもらえます。

 会話のなかで、顧客の話のポイントとなる言葉やキーワードを繰り返していくことが、バックトラッキング効果を活用するコツです。

 ザイオンス効果とは、同じ人に何度も会うことで、次第に「好感度」が上がっていく心理的効果です。初対面のときには「どうも自分とは合わないようだ」と思っていた人であっても、会う回数を重ねていくことで好感度は徐々に上がっていきます。

 例えば、新規営業開拓をしている会社の取引担当者と良好な関係を築きたいときや、旧担当者から顧客を引き継いだ際は、何度も訪問・面談するとよいでしょう。すると、相手は無意識に自分のことを覚えてくれるようになり、自分に対する好感度も上がっていきます。ただし、相手を訪問するときは事前にアポイントを取るようにしましょう。

 ドア・イン・ザ・フェイス効果とは、一度断った後に再度提案されると断りづらくなるという心理を利用して、提案を受け入れてもらいやすくするテクニックです。

 営業では本当の提案を相手に伝える前に、わざと断られるであろうレベルの高い提案を伝えて、一度断らせます。その後、本来の提案を提示すると、相手は続けて断ることを躊躇(ちゅうちょ)するため、提案を受け入れてもらえる可能性が高まるのです。

 例えば、新車の商談の際に、本当は10万円まで値引きが可能であっても、まずは「8万円が精一杯です」と顧客に伝えて反応を見ます。顧客が物足りないような顔をして「その程度か、もっとなんとかならない?」と返すのを待って、「お客さま、これで本当に本当に目一杯です。顧客だけ特別に10万円お値引きさせていただきます!」と本来の値引き限度額を提示するのが効果的です。前もって本来の値引き額よりも少なめの額を提示することで、次に提示する本来の限度額が受け入れられやすくなり、成約率が高まります。

 スキルを身につける以外にも、次のコツを意識することで営業成績を高められます。

  • 実行と改善を繰り返す
  • 顧客コンタクト数を増やす
  • 上司をうまく利用する

 順番に解説します。

 営業成績を上げるためには、PDCAを回すことが大切です。PDCAとは、次の4つのステップを繰り返すことで業務を改善し、生産性を向上させていく方法です。

  • Plan:計画作成
  • Do:実行
  • Check:進捗状況の評価
  • Act:評価をふまえて改善実施

 計画作成の際、最初に目的を明確にします。チームで取り組む場合はチーム全員で目的を共有しましょう。次に、目的にそった目標を決定し、チームメンバー全員で共有します。目標のレベルは、高すぎても低すぎても適当ではありません。最後までモチベーションが途切れない程度のレベルに設定することが大切です。結果的に約50%のメンバーが目標達成できるくらいのレベルがよいといわれています。

 また、計画は迅速に作成するようにしましょう。計画づくりに時間をかけ過ぎると、肝心のマーケットが変化してしまったり、競合他社に出し抜かれてしまったりしかねません。

 次に、実行に移します。計画は実行されないと意味がありません。実行していくなかで進捗状況を確認し、計画に無理があると判断した場合は途中で軌道修正することも大切です。モチベーションが下がったままで継続しても、時間の無駄になります。

 評価では、計画どおりに進捗しない原因を明らかにすることが必須です。原因を特定した後、改善に向けた具体的アクションを実行します。こうしてPDCAを回し、実行と改善を繰り返すことで、営業成績の向上が目指せます。

 顧客コンタクトの数を増やしましょう。その際、商品の買い替え時期に当たる顧客、つまり近いうちに買い替え行動をすると思われる「見込み客」を選別し、コンタクトしていくことが重要です。

 どんな商品でも使用していれば陳腐化し、顧客は買い替えるという購買行動を取るようになります。こうして買い替え時期を迎えた顧客へ積極的にコンタクトを取り、効率よく営業活動を進めましょう。

 例えば、新商品展示会に来場した顧客は基本的に見込み客とみなします。来場アンケートなどによって顧客の使用年数が把握できれば、さらに買い替え見込み度の高い顧客を絞り込むことが可能です。そのほか、SNSなどのターゲットマーケティング実施後、返信メールを送った顧客や問い合わせをしてきた顧客も、買い替え見込み度が高いといえます。

 これら見込み客をリスト化し、個別にコンタクトしていくことで短期間のうちに買い替えを真剣に考えている顧客を明確にできます。見込み度の高い顧客に絞ってコンタクト率を増やしていけば、営業成績の向上が可能です。

 営業成績を上げるには、上司を上手く使うことも効果的な方法です。なぜなら、自分一人では成約が難しそうな案件も、上司のテクニックやノウハウが加わることで成約率を高められるためです。上司は営業メンバー全員の成績が自分の業績評価につながることから、営業担当をサポートしてチームの営業成績を向上させたいと考えています。よって、必要に応じて積極的に力を借りるとよいでしょう。

 例えば、上司に見込み度の高い顧客を同行訪問してもらいます。上司に同行してもらうメリットは、成約の可能性が高まることとノウハウが学べることです。上司と一営業担当とでは、値引き条件の許容度が異なります。また、上司が一緒にいることで、顧客は「今日は決めるか」という心理になるのです。さらに、上司の商談時の言い回しやクロージングを直接学べるため、営業担当は自身の営業活動の改善に生かせます。

 上司に同行をお願いするのは、自分の能力の低さを自ら認めるようで気が進まないと感じるかもしれません。しかし上司は部下から同行を求められるほど「頑張ろうとしているのだな」と考えます。何としても営業成績を上げたいという熱意を持ってお願いすれば、必ず同行してサポートしてくれます。営業成績を上げるためには貪欲になることも必要です。勇気を持って上司にお願いしましょう。

 会社によっては、各営業担当者の成績の張り出しや公表をおこなうところがあります。張り出しや公表の目的は、個々の営業担当に目標との乖離(かいり)を見える化し、自分の目標を達成するようプレッシャーをかけることです。営業成績の張り出しは、営業担当のモチベーションが高いときには発奮材料の一つになり得ます。しかし営業担当がスランプに陥っているときなどは、さらに落ち込んでしまい消極的になってしまう恐れがあります。

 営業成績の張り出しや公開には、メリットとデメリットの両面があることを十分理解したうえで、実施するかどうかを判断していくことが必要です。

 今回ご紹介した方法やスキルを実践することで、さらなる営業成績の向上が期待できます。ひたすら実践してください。

 一方で、営業は手法やスキルだけではありません。「気持ちの持ち方」も大切です。具体的には、常に「積極的であること」「肯定的であること」「楽観的であること」です。これら3つのスタンスを身につけられれば、営業成績を高められるだけでなく、「人間的魅力」も備わります。顧客からも末永くお付き合いをしたいと思われ、新規の顧客も紹介をとおして増えていくでしょう。