目次

  1. 電子印鑑とは
    1. 電子印鑑の法的効力
    2. 電子印鑑と電子署名の違い
  2. 電子印鑑の作り方 無料でもできる方法
  3. PDFへの電子印鑑の捺印方法
  4. 電子印鑑の編集方法
  5. スマホからでも電子印鑑は押せる
  6. 電子印鑑の効力を把握したうえで活用を

 電子印鑑とは、電子文書に押印できるデータ化された印鑑のことです。

 そもそも、経産省の公式サイトによると、印鑑は、契約などで必須条件とはなっていませんが、民訴法第228条第4項は、「私文書は、本人の署名又は押印があるときは、真正に成立したものと推定する」と規定しています。

 裁判となったとき、契約書などに、本人の押印があれば、その私文書は、本人が作成したものであることが推定されると考えられてきました(ただし、押印されたものが実印ではなく、認印である場合は限定的です)。

 従来の印鑑をスキャンして画像化した電子印鑑であれば、無料でも使えます。ただし、上記の通り、法的効力はあまり期待できないため、従来から認印で通用している社内承認など限定した場面で使うことになりそうです。

 もし、一定程度の法的効力が必要であれば、印影データ内に捺印者や捺印日時などの識別情報を保存できる機能(Adobe Acrobat Readerでは有料版で対応)を検討しましょう。

 法務省の公式サイトによると、「電磁的記録(電子文書等)は、本人による一定の電子署名が行われているときは、真正に成立したものと推定する」と説明しています。

 電子印鑑とは違い、電子署名は、以下のような基準を満たすことが必要です。

  1. 電磁記録に記録された情報が、当該措置を行った者の作成に係るものであることを示すためのものである「本人性」
  2. 電磁記録に記録された情報について改変が行われていないかどうかを確認することができる「非改ざん性」

 今回は、無料で使えるAdobe Acrobat Readerを例に電子印鑑の作り方を紹介します。Adobeの公式サイトによると、以下の手順で進めてください。

  1. Adobe Acrobat Readerを起動し「環境設定」を開く
  2. 表示されたメニューから「ユーザー情報」を選び、必要な情報を入力する
PDFのメニュー画面から[環境設定]へ
PDFのメニュー画面から[環境設定]へ

 このほか、普段使っている印鑑から電子印鑑を作る方法もあります。普段使っている印鑑の印影をスマホなどで撮影し、画像ファイルをパソコンに取り込んでPDFに変換してください。

 PDFに変換する方法は、オンライン上の変換サービスや、画像ファイルを右クリックして[印刷]>[Microsoft Print to PDF]を使って変換することができます。

[メニュー]>[ツール]>[スタンプ]>[スタンプパレット]を選択した画面
[メニュー]>[ツール]>[スタンプ]>[スタンプパレット]を選択した画面

 印影をPDFにできたら、別のPDFファイル(なんでもよい)を開き[メニュー]>[ツール]>[スタンプ]>[スタンプパレット]を選択し、参照元で作成した印影のPDFファイルを指定してください。

 すると、印影がPDFに取り込まれます。

 電子印鑑を作成したら、次は捺印方法を紹介します。

  1. 電子印鑑を捺印したいPDFファイルを開き[メニュー]>[ツール]>[スタンプ]へと進んでください([スタンプ]が隠れている場合は”さらに表示”を押す)。
  2. ツールバーに表示された[スタンプ]>[電子印鑑]から、捺印したい形式(姓名や会社名の表示や日付の有無など)を選択する
  3. 電子印鑑が表示されるので、捺印したい場所でクリックする
[環境設定]から[ユーザー情報]へ
[環境設定]から[ユーザー情報]へ
ツールバーに表示された[スタンプ]>[電子印鑑]から、捺印したい形式(姓名や会社名の表示や日付の有無など)を選択する
ツールバーに表示された[スタンプ]>[電子印鑑]から、捺印したい形式(姓名や会社名の表示や日付の有無など)を選択する

 Adobeによると、電子印鑑は後から編集もできます。

  1. Adobe Acrobat Readerで捺印したいPDFファイルの書類を開く
  2. メニューから[ツール]>[スタンプ]を選択
  3. メニューから[スタンプパレット]を選択。ドロップダウンリストから[電子印鑑]を選択
  4. 編集したいスタンプの上で右クリック。[ユーザー情報を編集]をクリック
  5. 編集したい箇所を修正し[完了]
[スタンプパレット]の選択画面
[スタンプパレット]の選択画面

 Adobeの公式サイトによると、モバイルからも電子印鑑を利用できます。「入力と署名」ツールから署名し「画像」を選択することで印影が選択できます。

 電子印鑑は、既存の業務フローをそのままデジタルに移行するうえで活用できるツールです。ただし、法的効力の面でも、承認手続きなどを省力化する面でも限界は存在することを知った上で活用してください。