新規性喪失の例外とは 特許・意匠の例外規定の手続き・事例・注意点を紹介
特許法30条や意匠法4条によると、新規性喪失の例外とは、発明などが公表された後でも、特定の条件の下で特許出願した場合には、先の公開によってその発明の新規性が喪失しないものとして取り扱うことを指します。特許や意匠の登録前にSNSやクラウドファンディングで公開済というケースが増えているので、例外規定の手続きや注意点を簡単に紹介します。
特許法30条や意匠法4条によると、新規性喪失の例外とは、発明などが公表された後でも、特定の条件の下で特許出願した場合には、先の公開によってその発明の新規性が喪失しないものとして取り扱うことを指します。特許や意匠の登録前にSNSやクラウドファンディングで公開済というケースが増えているので、例外規定の手続きや注意点を簡単に紹介します。
目次
特許庁の公式サイトによると、出願より前に公開された発明について原則として特許や意匠の新規性が認められません。
しかし、論文発表などで公開した後の特許出願を一切認めないという対応は発明者にも産業発展に不利益となります。
そこで、特許法30条や意匠法4条で、新規性喪失の例外規定が設けられています。新規性喪失の例外とは、特定の条件の下で発明を公開した後に特許出願した場合には、先の公開によってその発明の新規性が喪失しないものとして取り扱うことを指します。
特許庁によると、2020年の特許・意匠出願における新規喪失の例外証明書提出件数及び全特許/意匠出願件数に占める割合は以下の通りです。
特許:4128件(約1.3%)
意匠:2594件(約8.2%)
新規性喪失の例外規定の手続きは次の手順で進めてください。
まず、出願と同時に、その旨を記載した書面(例外適用書面。願書記載により省略可)を提出してください。
つぎに、出願から30日以内に、同規定の適用を受けることができることを証明する書面(例外適用証明書)を特許庁長官に提出してください。
「不正競争防止法等の一部を改正する法律」が2024年1月1日に施行されました。
日本特許情報機構の公式「Japio YEAR BOOK」によると、デザイン開発は、一つのコンセプトから、形や模様、色などたくさんのバリエーションの意匠がつくられるため、すべてについて意匠の新規性喪失の例外規定の手続きをしようとすると大変な手間となっていました。
こうしたなか、意匠の新規性喪失の例外規定の適用を受けるための手続きが緩和されます。1月1日以後の出願は、例外適用証明書は自己の行為により公開された同一または類似する意匠のうち最先の公開の日の行為によるものを提出することで足りるようになりました。
また、最先の公開の日に複数の公開が行われた場合は、先後関係は問わず、いずれか一つを証明すれば足りることになりました。
加えて、新規性喪失の例外規定の適用を受けることができることを証明する書面をPDFのような電子書面で提出できるようになりました。
金属加工を手掛けるステンレスジョイント(兵庫県尼崎市)2代目社長の平岡雄策さんは、試作した菜箸立て「hazure」の動画をツイッター(現X)に投稿後に意匠権を取得しようと、意匠の新規性喪失の例外規定の適用を受けるための手続きをとって、認められました。
新規性喪失の例外規定の手続きを進めるうえで「新規性の喪失の例外証明書提出書」と「意匠の新規性喪失の例外規定の適用を受けるための証明書」という2つの書類が必要となりました。
平岡さんによると「書類作成そのものよりも、同様あるいは類似の事例を探したり、特許庁が公開している手続きの方法やQ&Aを読み込んだりするのに半日くらいかかりました」といいます。
ただし、類似事例を探しても、同様の事例が掲載されていなかったので、そもそも手続きは正しいのか、このケースで本当に意匠権が取得できるのかについては不安はあったといいます。
自分なりに解釈、工夫をするなかで手続きを進め、結果的に認められました。
平岡さんは、新規性喪失の例外規定について「中小企業に限らず有用性が高いと思います」と話します。
市場の反応を見ながら、マーケティングやフィジカルな微調整ができ、試作数を増やせることは中小企業が取れる有用な施策の1つになると考えているからです。
ただし、安易に例外規定に頼ってしまうことにも危機感を感じています。
国内外を問わず、悪意のある人にも露出が増えるため「沈黙を守る重要性は変わらないと思います」と話しています。
平岡さんが感じているように新規性喪失の例外規定は、あくまで「例外規定」です。
たとえば、意匠の場合、審査で新規性喪失を理由に拒絶された出願のうちの2割弱が、自己の1年以内の公開意匠(内外公報除く)により拒絶理由が通知され、そのうちの約3割は、出願の際に例外適用書面及び例外適用証明書を提出していたにもかかわらず、証明が網羅的にできていなかったといいます。
また、出願に係る意匠と類似する意匠が出願前に公開された場合にも、新規性を喪失してしまうことにも注意が必要です。事前に発表されたものを参考に類似品を出願する人が出てくるリスクも見極めながら対応することをおすすめします。
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