内発的動機づけとは?外発的動機づけとの違いを具体例を交えて解説
内発的動機づけは、企業の人材育成に欠かせない要素となっています。いかに自分からモチベーションを高めて行動してもらえるのか、そのコツを知って上手に人を育てたいものです。この記事では、人材育成研修の専門家が、内発的動機づけの意味や高め方について、わかりやすく紹介します。
内発的動機づけは、企業の人材育成に欠かせない要素となっています。いかに自分からモチベーションを高めて行動してもらえるのか、そのコツを知って上手に人を育てたいものです。この記事では、人材育成研修の専門家が、内発的動機づけの意味や高め方について、わかりやすく紹介します。
目次
内発的動機づけとは、自分の内面から沸き起こった興味・関心に動機づけられることをいいます。なぜかわからないけれど、すごく興味があって行動意欲が湧いてくる。そんな経験をしたことがある人もいるのではないでしょうか。
社会心理学者のデシは「内発的動機づけは『有能性』 『自律性』 『関係性』の三つの欲求が影響している」と提唱しています。仕事における、具体的な内発的動機付けの例をいくつか紹介しましょう。
内発的動機づけの例 |
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仕事における技術を向上させたい(有能性) 自分が楽しいと思う仕事に没頭する(自律性) ボランティア活動でみんなを喜ばせたい(関係性) 成長した自分を実感したい、認めてもらいたい(有能性、関係性) |
いずれも「自分からやりたいと思う」「自分で目的、目標を見出す」ことが共通していえます。このように、内発的動機づけには、外からの報酬や評価は関係ありません。そのため、自発的に継続して行動するのが特徴です。
今、企業が成長していくためにも、いかにして「内発的動機づけ」を促すかが注目されています。
外発的動機づけとは、外部からの報酬や賛辞などを受けたくて行動意欲を湧かせる動機づけのことです。
仕事においては、次のようなことが外発的動機づけにあたります。
外発的動機づけの例 |
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昇給したいので仕事の技術を向上させる 上司や先輩、取引先から良い評価をもらいたいので仕事に没頭する ボランティア活動で周りから良い印象を持たれたい 成長した自分を見せることでライバルに勝ちたい |
このように、外発的動機づけは「周りから与えられるもの」により影響されることが特徴としてあげられます。
外発的動機づけは、目標達成の即効性が高い一方で、そのぶん周りが動機づけを与えなければならないため、手間がかかったり、慣れて効果が薄まったりするのが難点でもあります。
内発的動機づけと外発的動機づけの違いを一覧にしました。
内発的動機づけ | 外発的動機づけ | |
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起因 | 自律性:自分の行動は自分で決めていると感じたい 有能感:自分には能力があり、社会に役に立っていると感じたい 関係性:他社と尊重し合う精神的な関係を築きたい |
評価:成功すると報酬が得られる、昇格できる 罰則回避:叱責など不快なことを避けたい 義務:これをしなければならない |
目標 | 自分で決める ゴールを決めることが難しい |
外から与えられる ゴールが明確で即効性が高い |
形成難度 | 本人の意志により形成されるため、外部の意図通りに形成するのは難しい | ゴールが設定しやすく、外部の意図で決めることができる |
持続性 | 長期的に継続する 目標を達成したら次の目標を求める |
短期的な効果は見込めるが、目標を達成するとすぐにしぼむ |
そもそも、どうして企業の成長のために「内発的動機づけ」が必要なのでしょうか。その理由をお伝えします。
みなさんも「よし、やろう!」と思ったときは作業がぐんぐん進んだという経験があるのではないでしょうか。これは、自ら行動しようという意識が高いため、行動スピードも早くなるからです。
さらに、自分から問題点や課題を見つけようという意欲が高くなり、さらに効率を上げるための改善に対する意識が向上します。その結果、一人ひとりの行動量が増えて、さらなる生産性向上が期待されます。
人は、自分の行動は自分でコントロールしたくなるものです。指示命令で言われたことだけをこなすのではなく、自分からすすんで仕事を見つけ出すことで、成果を出そうという意欲が高まります。
また、自らアイデアを出すことも多くなり、独創的なものを生み出してくれる可能性も高まります。
内発的動機づけで行動するメンバーが多くなると、組織に対して良い影響を与え、モチベーションの高い雰囲気を出すことができます。また、連帯感も高まり、お互いに協力して目標達成をやり遂げようという意欲も向上します。
良い雰囲気の職場は居心地も良く、「このメンバーで一緒に働きたい」という意欲も高まるものです。その結果、離職率の低下も期待されます。
内発的動機づけは一見すると、全てに良いように見えますがデメリットも存在します。ここでは内発的動機づけのメリット・デメリットをまとめてみましょう。
内発的動機づけのメリットには、以下のようなものがあります。
内発的動機づけのメリット |
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仕事の質が向上する 自己成長につなげられる 自分の存在価値を見出すことができる 目標を達成したときの満足感や幸福感を得やすい 長期的に継続した行動を促すことができる |
内発的動機づけは自分の内から湧いてくる衝動による行動のため、外部からの影響を受けにくく、継続的な行動を得られやすいのが特徴です。そのため、会社側としても特別なことを行うことなく社員の成長を促すことができるのが大きなメリットといえるでしょう。
内発的動機づけのデメリットには、以下のようなものがあります。
内発的動機づけのデメリット |
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動機づけされるまでに時間がかかる 動機づけの要因が個人でバラバラのため、共通的手法がとりにくい 動機づけ要因に興味がなくなると、一気にモチベーションが下がる |
これらのデメリットを理解せずに、安易に内発的動機づけを促そうとすると「やらされている」感が高まってしまい、会社に対して嫌気が差す危険性もあります。会社側は各々が何を内発的動機づけとして欲しているのかを理解して、それを支援することが必要です。
経営者(上司)が従業員(部下)の内発的動機づけを高めるには、どうしたらよいのでしょうか。具体的には、次のような方法があります。
内発的動機づけを高める五つの方法 |
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少しレベルの高い目標を自分で設定させる 定期的にフィードバックをおこなう 短期的ゴールを設定して成功体験を積ませる 仕事の目的を必ず伝える チャレンジの機会を与える |
以下で詳しく解説します。
仕事などにおける目標を設定するときに、今の自分のレベルより少し高いものを自分で設定させるとよいでしょう。
そうすることで、目標達成に向けての意欲も高まるうえに、達成したときの喜びも大きく感じられ、さらに次の少しレベルの高い目標を自ら設定してくれるようになります。
せっかく自分でやろうと思っても、周りの誰もそのことを知らない、認めてくれないと意欲は低減してしまいます。定期的に良かった点を認めつつ、さらに成長させるための助言を伝えることで、満足感が高まり内発的動機づけも高まるものです。
ここでの注意点としては、フィードバックは必ず事実に基づいたものを伝えること、良かった点を先に伝えることです。
高い目標を掲げるのはよいのですが、達成するまでに時間がかかったり挫折を繰り返したりすると、モチベーションは下がってしまいます。これを防ぐために、短期間で達成できるミニゴールを設定し、それをクリアする成功体験を積ませることが大切です。
小さな成功体験の積み重ねが、内発的動機づけを高めてくれます。
そもそも何のために今の仕事に取り組むのか。その目的が理解でき共感できるものであれば、人はやる気を起こすことができます。どんなに小さな仕事にも目的はあるものです。それを最初にきちんと伝えることで、内発的動機づけを高められます。
相手のレベルに合わせて、仕事に対してのチャレンジの機会を与えてみましょう。例えば、プロジェクトのリーダーを任せてみたり、本人がやりたいと思っている仕事をやらせてみたりすることが考えられます。
こうすることで「期待に応えるぞ!」という意欲が高まり、張り切って行動を起こしてくれるようになるでしょう。
内発的動機づけは、人としての成長を促すだけでなく、組織の成長発展に欠かせないものになっています。けれど、残念ながらどうしても即効性の高い外発的動機づけに目を向けがちになってしまいます。これでは上司も部下も、疲弊してしまうでしょう。
これからのあり方として、組織全体で内発的動機づけを促せるような仕組みや制度を整えていくことが大切です。居心地の良い職場環境づくりのためにも、内発的動機づけを高めることにも意識を向けて人を育てていきましょう。
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