目次

  1. 裁量労働制とは 残業代の発生に注意
    1. 専門業務型裁量労働制とは 20職種一覧
    2. 企画業務型裁量労働制とは
  2. 2024年4月改正による裁量労働制の変更点
    1. 本人同意を得る・同意の撤回の手続きを定める
    2. 労使委員会に賃金・評価制度を説明する
    3. 労使委員会は制度の実施状況の把握と運用改善を行う
    4. 労使委員会は6ヵ月以内ごとに1回開催する
  3. 健康・福祉確保措置も対応が必要
  4. 裁量労働制の相談窓口

 厚労省の公式サイトなどによると、裁量労働制とは、働いた時間にかかわらず、仕事の成果・実績などで評価を決める制度のことです。事業主は、業務の遂行の手段や時間の配分などに関して、具体的な指示を行ないません。

 そのほかの注意点として、法定労働時間を超過するみなし労働時間を設定する場合「36協定の締結及び届出が必要」かつ「時間外割増賃金の支払いが必要」となります。また、 裁量労働制を適用しても、深夜労働をすると割増賃金が支払われます。

 裁量労働制には、専⾨業務型と企画業務型の2種類があります。

 専門業務型裁量労働制とは、仕事の性質上、働き方を労働者の裁量に任せる必要があるため、対象となる業務などを労使協定で定め、労働者を実際にその業務に就かせた場合、労使協定であらかじめ定めた時間労働したものとみなす制度です。

 具体的には、以下の20業務が対象です。

  1. 新商品もしくは新技術の研究開発、または人文科学もしくは自然科学に関する研究の業務
  2. 情報処理システムの分析または設計の業務
  3. 新聞もしくは出版の事業における記事の取材若しくは編集の業務又は放送法に規定する放送番組の制作のための取材もしくは編集の業務
  4. 衣服、室内装飾、工業製品、広告等の新たなデザインの考案の業務
  5. 放送番組、映画等の制作の事業におけるプロデューサーまたはディレクターの業務
  6. コピーライターの業務
  7. システムコンサルタントの業務
  8. インテリアコーディネーターの業務
  9. ゲーム用ソフトウェアの創作の業務
  10. 証券アナリストの業務
  11. 金融工学などの知識を用いて行う金融商品の開発の業務
  12. 大学における教授研究の業務(主として研究に従事するもの)
  13. M&Aアドバイザーの業務
  14. 公認会計士の業務
  15. 弁護士の業務
  16. 建築士(一級建築士、二級建築士及び木造建築士)の業務
  17. 不動産鑑定士の業務
  18. 弁理士の業務
  19. 税理士の業務
  20. 中小企業診断士の業務

 このうち、M&Aアドバイザーは2024年4月の改正で追加されました。

 企画業務型裁量労働制とは、事業の運営に関する企画、立案、調査および分析の業務で、大幅に労働者の裁量に任せる必要があるため、使用者が具体的な指示をしないこととする業務などについて労使委員会で決議し、労働基準監督署長に決議の届出を行い、労働者を実際にその業務に就かせた場合、労使委員会の決議であらかじめ定めた時間労働したものとみなす制度です。

 労働基準法の施行規則などが改正となり、2024年4月1日以降、裁量労働制を導入、または継続するためには、すべての事業場で以下の対応が必要です。

 専門業務型裁量労働制では、労使協定に下記の1.を追加し、裁量労働制を導入・適用するまでに労働基準監督署に協定届・決議届の届出を行う必要があります。

 企画業務型裁量労働制では、、労使委員会の運営規程に下記2.3.4.を追加後、決議に下記1.2.を追加し、裁量労働制を導入・適用するまでに労働基準監督署に協定届・決議届の届出を行う必要があります。

  1. 本人同意を得る・同意の撤回の手続きを定める
  2. 労使委員会に賃金・評価制度を説明する
  3. 労使委員会は制度の実施状況の把握と運用改善を行う
  4. 労使委員会は6ヵ月以内ごとに1回開催する

 専門業務型では、あらたに本人同意を得ることや、同意をしなかった場合に不利益取り扱いをしないことを労使協定に定める必要があります。企画業務型では、すでに義務づけられています。

 専門業務型も企画業務型も同意の撤回の手続きと、同意とその撤回に関する記録を保存することを労使協定・労使委員会の決議に定める必要があります。企画業務型では、同意に関する記録を保存することを労使委員会の決議に定めることがすでに義務づけられています。

 企画業務型では、対象労働者に適用される賃金・評価制度の内容についての使用者から労使委員会に対する説明に関する事項を労使委員会の運営規程に定める必要があります。

 さらに、対象労働者に適用される賃金・評価制度を変更する場合に、労使委員会に変更内容の説明を行うことを労使委員会の決議に定める必要があります。

 企画業務型では、制度の趣旨に沿った適正な運用の確保に関する事項(制度の実施状況の把握の頻度や方法など)を労使委員会の運営規程に定める必要があります。

 企画業務型では、労使委員会の開催頻度を6ヵ月以内ごとに1回とすることを労使委員会の運営規程に定める必要があります。

 このほか、企画業務型では、定期報告の頻度が変わることにも注意が必要です。具体的には、定期報告の頻度について、労使委員会の決議の有効期間の始期から起算して初回は6ヵ月以内に1回、その後1年以内ごとに1回になります。

 このほか、今回の改正で様々な留意事項を追加しており、健康・福祉確保措置にも注意が必要です。

 具体的には、事業場の対象労働者全員を対象とする措置として以下の3つが追加されました。

  • 勤務間インターバルの確保
  • 深夜労働の回数制限
  • 労働時間の上限措置(一定の労働時間を超えた場合の制度の適用解除)

 さらに、個々の対象労働者の状況に応じて講ずる措置として、一定の労働時間を超える対象労働者への医師の面接指導も追加されました。

 裁量労働制は、対象業務の狭さなどから導入が広がっているとは言えない状況です。

 そこで、労働基準監督署では、時間外労働の上限規制や年次有給休暇などの法令に関する知識や労務管理体制についての相談に、窓口・電話で対応・支援しています。

 また、働き方改革推進支援センターでは、働き方改革関連法に関する相談、労働時間管理のノウハウや賃金制度などの見直し、助成金の活用など、労務管理に関する課題について、社会保険労務士等の専門家が相談に応じます。