目次

  1. 官報とは 2023年に電子的な発行を法律化
  2. 「官報の発行に関する法律」による発行方法
  3. 官報の新しい要点 プライバシーの確保への配慮

 官報の発行主体である内閣府の公式サイトによると、官報は、明治16年(1883年)7月2日に創刊されて以来、国の法令や公示事項を掲載し国民に周知してきた国の公報です。

 官報の電子化は2022年、経済界から「官報の原本が紙媒体とされており、書面廃止やデータ再利用ができない」という要望があったことがきっかけだといいます。

 商業登記法等で公告をしたことを証する書面として紙の官報を提出させている規定が12法律のほか政省令等に存在しており、会社等の登記申請の際は年間約1万3500件から1万4500件程度、紙の官報が提出されているといいます。

 こうした状況を受け、内閣府で「官報電子化検討会議」が開催され、2023年12月には「官報の発行に関する法律」が成立・公布され、官報を電子的に発行することなどが法定化されました。この官報の発行に関する法律が2025年4月1日に施行されます。

 法改正により、電子官報が紙の官報と同等の法的効力を持つ正本として明確に位置づけられました。

 2025年4月1日からは、官報は官報発行サイトに掲載されることで発行となり、このサイトに掲載される電子データが官報の正本となります。

 行政機関の休日を除き、毎日午前8時30分に発行されます。緊急時に発行される「特別号外」は、日時を問わず発行されます。

 災害・通信障害等の事情が生じた場合には、「書面官報」(官報掲載事項を記載した書面)を掲示することで官報を発行します。

 法令の公布の時点(国民の知り得る状態に置かれた時点)は、法令を掲載した官報がウェブサイトにアップロードされた時点と明確化されます。

 「官報の発行に関する法律」のポイントは、プライバシーへの配慮です。国立印刷局の官報情報検索サービスによると、法律に伴うシステム変更の準備のため、2025年3月15日サービスの提供内容等を変更します。

 プライバシー配慮が必要な記事とは、以下のような情報です。

  • 国家試験の試験委員の公告
  • プライバシー等に配慮すべき告示(帰化、国宝・重要文化財の指定等)等
  • 公示送達
  • 個人に対する懲戒処分(職員、弁護士等)
  • 押収物還付
  • 無縁墳墓等改葬
  • 行旅死亡人
  • 営業保証金取戻し公告
  • 配当公告
  • 相続、公示催告、失踪、破産、再生、免責等

 こうしたプライバシー配慮が必要な記事については、PDFデータからのテキスト取得不可としたり、テキストデータ提供を制限したり、記事検索の対象から除外したりする対応を取ります。

 このほか、内閣府によると、プライバシー配慮が必要な記事は公開期間を90日に限定するといいます。90日経過後は、プライバシーへの配慮が必要な一部の記事は閲覧・ダウンロードできなくなりますが、組織変更、合併、解散、決算などの会社等が掲載する公告など、それ以外の記事は閲覧できます。

 東京商工リサーチは「官報が歴史的な転換期を迎える。破産歴などを官報で効率的かつ網羅的にチェックできないことは、金融機関やリース会社、事業企業の与信部門への影響が大きい。これまでの業務の見直しは避けて通れないだろう」と指摘しています。