目次

  1. 就職活動を取り巻く現状と課題
    1. 就職活動の早期化・長期化
    2. 就職活動におけるハラスメント
  2. 2026年度卒業・修了予定者等就職・採用活動日程ルール
  3. ハラスメント防止に向けた政府の具体的な要請
    1. セクシュアルハラスメント・パワーハラスメントの防止の徹底
    2. 具体的な禁止行為の周知
    3. 相談体制の整備と適切な対応
    4. 学生の職業選択の自由を妨げる行為(オワハラ)の防止の徹底
  4. ハラスメント防止以外の要請事項

 学生が学業に専念できる環境を整えたうえで、安心して就職活動に臨めるのが理想ですが、近年の就職活動は、以下のような課題が顕在化しています。

 広報活動の開始日や採用選考活動の開始日よりも前に活動が行われる傾向が見られます。リクルートの就職みらい研究所が学生調査モニターの大学生・大学院生を対象にアンケートを実施したところ、就活解禁日にすでに48.4%の学生が内定、内々定を得ていると回答しており就活ルールが形骸化していることがわかります。

 こうした就職活動の早期化により、学生の就職活動期間が長期化し、勉強時間の確保が困難になるなどの影響が出ています。

 正式な採用選考活動の開始日よりも前に、選考につながるような活動が行われることは、学生に不公平感を与え、混乱を招く要因にもなります。

 就職活動を行う学生に対し、企業や関係者からのセクシュアルハラスメントやパワーハラスメントといったハラスメント行為が発生していることが指摘されています。
 最近では、学生の職業選択の自由を妨げる「オワハラ」も問題となっています。

 内閣官房の公式サイトによると、政府は経済団体や業界団体に対し、以下の就職・採用活動日程ルールを示しました。

広報活動開始:2026年3月1日以降
採用選考活動開始:2026年6月1日以降
正式な内定日:2026年10月1日以降

 広報活動の開始期日より前に行う活動は、広報活動のスケジュールを事前に公表することを含め、不特定多数に向けた一般的なものにとどめ、学生の個人情報の取得や個人情報を活用した広報・採用選考活動は行わないよう求めています。

 さらに広報活動の実施にあたっては、その後の採用選考活動に影響を与えるものではないことを十分に周知するよう呼び掛けています。

 ただし、専門活用型インターンシップ(2週間以上)で春休み以降に実施されるものを通じて高い専門的知識や能力を有すると判断された学生については、そのことに着目し、3月から行われる広報活動の周知期間を短縮して、6月より以前のタイミングから採用選考プロセスに移行できるとしています。

 政府が取りまとめた「2026(令和8)年度卒業・修了予定者等の就職・採用活動に関する要請事項」では、ハラスメント防止に関して以下の点が特に強調されています。

 採用選考活動、OB・OG訪問への対応、インターンシップの実施など、あらゆる場面において、学生に対するセクシュアルハラスメントやパワーハラスメントを防止するための措置を徹底するよう求めています。

 性的な冗談やからかいの発言、身体への接触といったセクシュアルハラスメントや、面接時に人格を否定するような暴言を吐くといったパワーハラスメントを行ってはならない旨を、企業の社員に対して明確に周知することを要請しています。

 学生からハラスメントに関する相談があった場合には、適切に対応できる体制を整備すること、また、セクシュアルハラスメントやパワーハラスメントの防止のための対応を徹底することを求めています。

 就職活動終盤において、企業が学生に対し、内定と引き換えに他社への就職活動を辞退するよう強要する、いわゆる「オワハラ」は、学生の職業選択の自由を侵害する行為だとして防止を呼び掛けています。

 具体的な禁止行為の例は以下の通りです。

  • 自社の内(々)定と引換えに、他社への就職活動を取りやめるよう強要すること
  • 他社の就職活動が物理的にできないよう、研修等への参加を求めること
  • 自由応募型の採用選考において、内(々)定と引換えに、大学等又は大学教員等からの推薦状の提出を求めること
  • 内定承諾書等の早期提出を強要することや、内定辞退の防止を目的として、内定を承諾することについて、保護者の同意を強要すること(いわゆる「オヤカク」)
  • 内(々)定辞退を申し出たにもかかわらず、引き留めるために、何度も話し合いを求めること
  • 内(々)定期間中に行われた業務性が強い研修について、内定辞退の防止を目的として、内(々)定を辞退した場合に研修費用の返還を求めること又は事前にその誓約書を要求すること

 学生と企業のマッチング機能を担う職業紹介事業者に対しても、「オワハラ」を行わないよう要請しています。

 ハラスメント防止と並んで、政府は学生が学業に専念できる環境の確保や、多様な人材の活躍促進を目指し、就職・採用活動全般に関して以下のような要請を行っています。

  • 就職・採用活動日程の遵守: 広報活動開始時期、採用選考活動開始時期、正式な内定日を守ること
  • 学事日程等への配慮: 面接や試験の実施に際して、土日・祝日や平日の夕方以降の時間帯、長期休暇期間等を活用するとともに、学生の授業や試験等の時間と重ならないよう配慮すること
  • インターンシップの適切な実施: 産学協議会の整理に基づいたインターンシップを推進しつつ、広報活動又は採用選考活動の開始日より前に行うインターンシップ等については、広報活動や採用選考活動と異なるものであることを明確にすること
  • 卒業・修了後3年以内の既卒者の取扱い: 卒業・修了後少なくとも3年以内の既卒者に対し、新規卒業・修了予定者の採用枠への応募機会を提供すること
  • 日本人海外留学者や外国人留学生などに対する多様な採用選考機会の提供: 通年採用や海外・国内でのジョブフェアへの参加など、多様な選考機会を設け、その旨を積極的に周知すること。
  • 障害のある学生の採用選考: 大学等と連携して求人情報を提供するなど、募集及び採用に関する情報の公表を積極的に行うとともに、障害の特性に配慮した必要な措置を講じること。
  • オンラインの活用: オンラインによる企業説明会や面接・試験を実施する場合には、その旨を積極的に情報発信し、遠隔地の学生に配慮すること。また、大学等の所在地により、学生の就職活動に不利が生じないよう、配慮することが求められる。
  • 成績証明等の一層の活用: 採用選考活動において、学生の学業に対する取組状況を適切に評価するため、大学等における成績証明等を活用すること。