アトツギが語るアワード受賞後の変化と事業承継の本音 「タキビコ」フェス

老舗企業のアトツギとスタートアップが交流し、共創することを目指すコミュニティ「タキビコ」。2025年2月、タキビコは東京ミッドタウン八重洲にて「TAKIBI&Co. Fes Tokyo(タキビコフェストーキョー)」を開催しました。この記事では、当日行われたセッションの様子を振り返ります。
老舗企業のアトツギとスタートアップが交流し、共創することを目指すコミュニティ「タキビコ」。2025年2月、タキビコは東京ミッドタウン八重洲にて「TAKIBI&Co. Fes Tokyo(タキビコフェストーキョー)」を開催しました。この記事では、当日行われたセッションの様子を振り返ります。
「TAKIBI&Co. Fes Tokyo(タキビコフェストーキョー)」のオープニングセッションでは、アトツギ経営者とスタートアップ企業の若手経営者が登壇し、両者がどのように出会い、交流していくべきかについて考えを語り合いました(前編参照)。
当日はオープニングセッション以外にも、13のセッションが開催されました。
「アトツギアワード」「Forbes Japan SMALL GIANTS」「アトツギ甲子園」受賞者と、その運営を担う企業が集ったセッションでは、それぞれの立場から、アワード受賞や運営の裏側について語りました。
「ここ数年、アトツギ企業を対象としたアワードが増えているように感じます。このことについてどう思われますか?」と話を切り出したのは、Forbes JAPAN 編集長でありリンクタイズ取締役を務める藤吉雅春さん。
これに対して、アトツギ甲子園の運営に第1回から携わっている一般社団法人ベンチャー型事業承継代表理事の山野千枝さんは、「同じ中小企業ということで、IPOを目指しているようなスタートアップが同じ土俵に上がることがあります。しかし、東京のスタートアップと地域のアトツギ企業では、進みたい方向が少し違う。例えば『アトツギ甲子園』は、後者の企業にスポットライトを当てたいと思い始まりました」と話します。
「第1回を開催するにあたって、アワードの名前に『甲子園』という言葉を入れたかったんです。ふるさとや地元の高校が甲子園に出場していたら、無条件に応援しますよね。アトツギ甲子園も高校野球のように、地域の企業が地元の人々から応援されるようになったらいいなと思いました」(山野さん)
第5回アトツギ甲子園で経済産業大臣賞を受賞したあしだで取締役を務める芦田拓弘さんは、同じ質問に対し「こうしていろいろなアワードが出てくると、アトツギ企業はそこを目標に事業を進めることができる。ありがたいことだなと思います」とコメントしました。
また、Forbes Japan SMALL GIANTSグランプリを受賞したミツフジ代表取締役社長の三寺歩さんは、「受賞を経て変わったことはあるか」という質問に対し、「社外からの評価を得やすくなりました」と答えました。
「新しい事業を始めようとしても、外部の人間がその事業を適切に評価することは難しいですよね。受賞によって、事業への取り組みやプロセスを伝えやすくなったと思います」(三寺さん)
また、芦田さんは同じ質問に対し「受賞後にすぐ行政から連絡があり、林業のサプライチェーンにITを導入する新規事業を、一緒に取り組んでいくことになりました。やはり受賞が後押しになったと思います」と、受賞後すぐに変化があったことを語りました。
地方に特化した人材採用・育成を支援するXLOCAL取締役の藤原俊介さんは、「アトツギ経営者は組織の中で1人で頑張っていることが多いです。アワードの受賞をきっかけに、他のアトツギとつながるなど、視野を広げられるのではないでしょうか」と話しました。
また、会場から上がった「地域への貢献を考えているが、地域の定義をどう捉えているか」という質問に対し、藤原さんは「東京23区以外は全て地域(地方)だと思います」と答えました。
「東京の中心で世界を目指そうとするとGAFAなどと勝負することになり大変ですが、地方のアトツギ企業が持っているオンリーワンの技術が、海外の国家の戦略に欠かせない存在になっている事例をよく目にします。地域(地方)の企業だからと、範囲を狭めて考える必要はないのかもしれません」(藤原さん)
セッションでは、アワード受賞が新規事業への後押しとなり、新たな共創事例を生み出すきっかけとなることが示されました。
13のセッションの一つ「他では聞けない事業承継深堀りトーク」では、経営者たちが体験談を交えながら、事業承継にまつわる課題や成功事例などを語りました。
IXホールディングス代表取締役社長の浜田𠮷司さんは「企業にはポジティブな構成要素とネガティブな構成要素があります。前者は名声や良い資産など、後者はあまり芳しくない企業風土や不良資産などです。事業を承継するということは、その“総体”を引き継がねばならないということなのです」と、話を切り出しました。
「企業にはハードパワーとソフトパワーがあることも、承継にあたってよく考慮しないといけません。ハードパワーとは『この人の言うことを聞かないといけなくさせる力』のことで、株式です。ソフトパワーとは『この人の話を聞きたいと思わせる力』のことで、言わばリーダーシップです。この二つにねじれが生じると、厄介なことになります」(浜田さん)
これに対して、AGSコンサルティング代表取締役社長の廣渡嘉秀さんも「事業を承継する際、自身が先代を凌駕するようなソフトパワーを醸し出す必要がありますよね」と賛同しました。
ミヨオーガニック代表取締役の山本美代さんは、事業承継に関わる親と子の話し合いがスムーズにいかないとき、「間に入ってくれる社員がいるとうまくいくかもしれません」とコメント。
これについて、浜田さんも「ファミリービジネスが安定して続いていくためには、親が伝えきれないことを代わりに教えてくれる『良き番頭』のような存在に恵まれると、意思疎通がスムーズにいきやすいと思います」と賛同しました。
NTPホールディングス取締役の小栗龍之助さんは、「事業承継はやはり、会社の株式や資産だけを継ぐだけではありません。社員やお客さまに恩返しをするためにも、長いスパンで事業を考え、社員も自分の子どもに入社を勧めるような会社にしていきたいと思います」と話し、「思いを承継していくこと」の重要性を語りました。
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