目次

  1. 多様な食習慣のインバウンド需要への対応
  2. 事業の目的
  3. 申請できる団体
  4. 採択後の取り組みと伴走支援
  5. 対象となる経費と上限額
  6. 評価の観点と加点項目
  7. 申請方法と提出期間
  8. 申請資料・公募要領・問い合わせ先

 観光庁は、多様な食習慣をもつ旅行者の受け入れ環境整備に取り組んでおり、2024年には「ベジタリアン・ヴィーガン/ムスリム旅行者おもてなしガイド」を作っています。2024年度からは「地域一体となったインクルーシブツーリズム促進事業」として、専門家派遣などの支援も進めてきました。

ベジタリアン・ヴィーガン/ムスリム旅行者おもてなしガイド
ベジタリアン・ヴィーガン/ムスリム旅行者おもてなしガイド(観光庁の公式サイトから https://www.mlit.go.jp/kankocho/seisaku_seido/kihonkeikaku/inbound_kaifuku/ukeire/kankochi/shukyo.html)

 おもてなしガイドは、多様な食習慣への対応を進める上で、それぞれの旅行者が「共通して食べられる部分に着目してメニューを工夫・提供する」という考え方を推奨しています。

 これにより手間やコストを抑えながら対応が可能になると述べられています。また、海外旅行時に食事制限の基準を緩める旅行者も一定数いるという調査結果も示されています。

 具体的な対応として、ベジタリアン・ヴィーガンへは、肉や魚介類だけでなく、卵、乳製品、蜂蜜、ゼラチン、動物性由来の出汁、加工食品に含まれる動物性由来成分にも注意が必要であること、代替食材として豆腐やシイタケなどが活用できることなどが解説されています。

 ムスリムへは、イスラムの教えで禁じられている豚・豚由来品、アルコール(調味料を含む場合もある)、適切にと畜されていない動物性食材(ハラール認証のない食肉)を避ける必要があること、また食事以外にも1日5回の礼拝習慣や異性との接触、犬との接触、聖典の取扱いなど、生活習慣への配慮が必要であることなどが説明されています。

 ただし、受入環境整備は、完璧を目指すのではなく「できることから始める」ことが推奨されており、対応内容を店頭やSNS、口コミサイトなどでポリシーとして積極的に明示することが重要であるとされています。特に外国人利用者が多く参考にするとされるGoogle Mapsや口コミサイト(HappyCow等)での情報発信が効果的であると言及されています。

 2025年度の事業は、地方公共団体やDMO(観光地域づくり法人)が中心となり、複数の観光関連事業者が連携して多様な食習慣・文化的習慣に対応した受け入れ環境整備に取り組む「優良モデル」を構築することを目的としています。

 実証事業開始前の地域の特徴として、これまでに飲食・宿泊・観光施設等のいずれかの分野でベジタリアン・ヴィーガン、ムスリム等の受け入れ環境整備に取り組んだ経験があり、今後、地方公共団体やDMOが中心となってさらなる環境整備、誘客に向けた旅行商品の造成、情報発信、プロモーションに取り組む意向がある地域が想定されています。

 実証事業終了時の地域のイメージとしては、以下のような状態が目指されます。

• 複数業種(飲食・宿泊・観光施設等)にわたるベジタリアン・ヴィーガン、ムスリム等の受け入れ環境が整備されている。
• 地域内で、多様な旅行者が安心して周遊できるよう、食や文化的習慣を提供できる受け入れ環境が整備された複数業種(飲食、宿泊、観光施設等)が存在する。
• 複数事業者や周辺地域を組み込んだ形で、地域滞在型の旅行商品が造成・販売されている。
• 地方公共団体・DMO等のウェブサイトやSNS、専門メディア等を用いて、地域の関係者が一体となった受け入れ環境について、訪日外国人旅行者向けの情報発信を実施している。
• 多様な旅行者の積極的な受け入れに関し、旅行商品の造成・販売、情報発信等が次年度以降も継続できるよう、自走化に向けた体制構築・計画策定が行われている。

 申請対象団体は、以下のいずれかに該当する団体です。

  1. 地方公共団体
  2. DMOまたはその他の観光関連団体

 複数市区町村の連携による申請も可能であり、また、市区町村内の一部地域を対象として申請することも可能です。ただし、実施主体や連携体制には、反社会的勢力と関係する者が含まれていないことが条件となります。

 採択された地域は、原則として以下の4つの取り組みに主体的に取り組むことになります。

  1. オンラインセミナーⅠへの参加(2025年7月ごろ): 事務局が開催するオンラインセミナーに参加し、ベジタリアン・ヴィーガン、ムスリム対応に関する基礎的な知識を習得します。また、申請の動機や今後の目標などを、採択された他の地域と共有します。
  2. モデル実証事業の実施(2025年7月~2026年1月末ごろ): 提出した実証事業計画書を、事務局の伴走支援を受けながらさらに磨き上げ、観光庁の承認を得た上で、計画に記載された事業内容を実施します。実証事業の進捗管理は代表団体が実施し、事務局が側面支援を行います。実施期間中は、適宜、進捗状況を事務局に報告します。
  3. 実証事業の実施報告書の作成(2026年1月~2月ごろ): 実証事業終了後、実施内容、成果、課題、今後の展開などをまとめた報告書を作成します。報告書の詳細については、事務局と協議して決定します。
  4. オンラインセミナーⅡへの参加(2026年2月ごろ): 事務局が開催するオンラインセミナーに参加し、実証事業の結果や成果、課題、工夫点などを発表します。このセミナーには、採択された団体以外の参加者が含まれる可能性がある点に留意が必要です。発表内容は事務局と協議の上で最終決定します。

 実証事業において対象となる経費は、人件費、謝金及び宿泊交通費、会場の借料・損料及び使用料、アンケート調査委託費など事業の趣旨に沿って適切かつ効率的に計上され、事務局の確認が取れた経費です。

 申請時における1地域あたりの実証事業経費上限額は、税込400万円です。この金額は、選定件数や申請内容、採択地域と専門家との協議結果などを踏まえ、最終的に観光庁が決定します。上限金額を超える経費については、各地域が自己負担で対応することは認められています。

 提出された資料や必要に応じて6月中に個別ヒアリングし、観光庁で審査・選定する予定です。

 審査にあたっては、主に以下の3つの観点から評価します。

  1. 事業趣旨との合致性: 申請された取り組み内容が、ベジタリアン・ヴィーガン・ムスリム等の訪日外国人旅行者の誘客に相当程度資するものであるか。
  2. 地域一体の推進体制: 地方公共団体が組み込まれているか、申請者以外の地域のステークホルダー(宿泊事業者、飲食事業者、商工会等)が組み込まれているか。
  3. 事業計画の確実性: 適切な目標設定が行われているか、目標達成に必要な事業内容が盛り込まれているか、実証事業経費の観点から実現可能な範囲か、スケジュールは実現可能か。

 また、提出資料に以下の観点が含まれており、具体的かつ実現可能性が高いと観光庁が判断した場合、審査・選定において加点対象となります。

• 対象エリアの観光計画等に、多様な食習慣や文化的習慣を有する多様な旅行者の誘客に向けた記載がある。
• 地方公共団体が主体的に取り組むことが読み取れる(取り組み内容や会議参加など)。
• 複数業種(飲食、宿泊、観光施設等)での受け入れ環境整備に取り組む内容になっている。
• 地域における受け入れ環境整備や整備状況(メニュー提供店舗、礼拝スペース設置場所など)に関する訪日外国人旅行者向けの情報発信に係る取り組み内容が含まれている。
• 申請段階において、次年度以降の取り組みの発展・深化に関する構想(例:事業者数の拡大)が盛り込まれている。
• 申請段階において、本事業終了後の自走化に向けた具体的な取り組みに関する記載がある。

 選定結果は、公募期間終了後、7月上旬を目途に決定され、採択・不採択に関わらず電子メールにて通知されます。

 申請書類の提出期間は、2025年5月9日(金)から2025年6月9日(月)17:00(必着)です。

 申請資料や公募要領、問い合わせ先は観光庁の公式サイトへ。申請前にはかならず、公募要領をチェックしてください。